魔法の華~転移した魔女は勘違いされていても気づかないわよ?~

マカロン

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四章 天女を我が物に 『嫉妬』

十五輪の蓮

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「……!まさかここで合流するとは……。」

水浸しの廊下を、ファントムとシアンに助けられた俺は進んでいた。とある部屋の前に来たとき、後ろから足音がして振り替えれば、別の道があったようで、濡れてない廊下を歩くアーサー、ヴィンス、イスハークがいた。

「シアン!ファントム、虎もいたんだね。無事でよかっ……え、虎、水浸しだけどどうした?」
「ちょっと鮫に襲われててね。」
「は?てめぇ屋内でなにいってんだ?」
「本当だ、イスハーク。」

シアンが部屋な話をした。

「でもシアンとファントム濡れてねぇじゃん。」
「あらかじめ魔法の膜で体を覆っとったから濡れへんかったんや。そっちの道はどうやった?」
「ジェイ殿が出たり猛毒の蛇が出たりしたが、イスハークが笛で寝かしつけてくれた。あとは……うっ、思い出したくないので言えないが、最悪なものをみたとだけ伝えておこう。」
「あっ、そっかぁ、ガドル国は俺たちの民族の子孫だもんね。でもその方法この時代まで伝わってるんだぁ~。」

ちなみに当たり前に俺も出きる。笛で生き物を操る方法ならば、シルトの民が独自に開発した方法だ。ちなみにラーム族は、歌に精神力を与える不思議な秘法で生き物を操れる。それには決まった歌詞はないらしい。ひたすら精神力を込めることが大切だそうだと生前聞いたことがあり、だからこそラーム族は強力なのだと聞いたことがある。

「なんや、そっちはジェイの部屋だったんか。ならこの部屋で出るんはファルークやろな。」
「……ってことは、ダニエルだったの?そっち。」
「顔は見えへんかったけど、あんな格好すんのはダニエル以外おらん。」
「そんな個人が特定できる格好してたの?気になるなぁ……。」

アーサーがへらへらと笑いながら、ドアの取っ手に手を掛けた。

「オールメンバーかよ……。」

げんなりと呟いたのはイスハークだった。
そう、扉の先にいたのは蓮式の服を着たジェイ、さきほどとは違うこちらも蓮式の服のダニエル、そしてニヤリと笑うファルークの三人だったのだ。

「あの程度でワタシが倒れるとデモ?笑止デス!」
「普通の人間なら骨折は免れないとおもっとったんやけどなぁ。」
「骨折くらいなんてことアリマセン!薬で治セマス!治らなきゃ根性デス!」

えっへん、と胸を張るダニエルの裾から見える腕や足は、所々アザがあった。

「……おいアーサー、お前の幼なじみは人間じゃないのか?」
「人間だよシアン……ちょっとこう、頭がかなりイカれてる耐久性のあるマッドサイエンティストなだけで……。」
「ちなみに私はダメージ食らってないのでここにいます。」
「まぁたしかにダニエルがいるならジェイ殿もいるだろうが……これはまた……厄介だな。」

臨機体勢に入り、俺たちは彼らを睨む。良くみれば、ダニエルとジェイの瞳が紫になってることに気がついた。目の色が変わるのは、操られているという証拠なのだろうか。

(……え、でも目の色、ファルーク変わってないよ?)

ファルークを見つめれば、彼は視線に気づいたのか俺をみて、ふっ、といつも通り余裕そうに笑った。

(え、まさか……。)

「今日は誰で 遊ぼうか?」

歌い出したとたん、ジェイとダニエルががくん、と床に膝をついた。

「な……体が、勝手に……っ!!?」
「どういう、コトデス……!?」

ダニエルとジェイが、悔しげな顔で地面をみている。

「そう、能ある鷹は 爪を隠しているのが吉」

歌が長引くに連れ、ジェイとダニエルは、冷や汗をかき必死に気絶しないように保っていたが精神をじりじりと削られていく。まさか、精霊たちにまで効くとは。強力だと言われるわけだ。

「従順な操られたふりで 情報はつかめた 楽しく 厄介な お遊びだったが
 しばらく  大人しくしていてくれ」

その歌詞を最後に、ふたりはバタン、と地に伏した。

「な、なにあれ……っえ、仲間割れ!?なんで倒れたの!?魔法使いだったのファルークも!!?」

焦った様子でイスハークを揺さぶるアーサー。それに、イスハークはポカンとしたまま答えた。

「僕の国の、次期王となるものにしか教育指導されない生き物を操る秘法だ……僕は次期王としての能力が兄上より劣っていたから、教えられなかったけど……精霊に効くんだなあれ……。しかもあんな強力なのかよ……。」
「混乱させてすまないな。もっと早くに会えればよかったんだが、いかんせんジェイ殿とダニエル殿とともに操られそうになってな。敵を知るために操られたふりをし潜入していた。」

そういいながら蓮式の服をばっと音を立てて剥ぐと、中に着ていたんだろう、密偵のような格好をしていた。いつのまにか、口にはベールのマスクをつけている。

「やはりあの格好は動きづらくてしかたない。このほうが私にはあっているな。」
「え、まってまって、でもなんで操られてないの?」
「ああ……まだそれは話してなかったか。この腕輪は、彼女に仕えている蝶から渡されたのだが……これにより、操られそうになったが精神を守ってくれたようでなんともなかったんだ。
どうやら、模様をみるに守られる度に線が一本消えていくようでな。三度まで私を守ってくれるようだ。もう二回使ったから、あと一回だな。」
「二回?使ったの一回じゃないの?」
「ヴィンス殿に操られそうになったときにこれを使ったんだ。あと……ん?虎のときも使ったな。なら、もう三度目は終わってるのか?」

それに気がついたことに腕輪が理解したかのように、腕輪はパキンと音を立てて壊れてしまった。さらさらと砂のような欠片へと変化したそれは、跡形もなく消え去る。

「……その節はまことに申し訳なかった。」
「ごめんねぇ……。」
「はは、気にしないでくれ。結果的に円満解決しただろう、結果よければすべてよし、だ。腕輪がなくなってしまったのは残念だが……あとで、今度は私から彼女へ送るとしよう。
さて……彼女たちを追いかけようではないか。」

(追いかける?)

きょとんとみんなして首をかしげていれば、どうやら苦労してここまで着たが、先ほど彼女は、誘拐犯とともに窓から出ていったらしい。

「でも、場所わかってるんか?おかしなことに、この蓮王府にきてから、彼女の位置がいまいち掴めないんや。」
「少し盗み聞きした。だが、誰かに見つかったりしくじれば死ぬかもしれん。」
「え……なんか忍び込むっていう言い方じゃねぇ……?」
「……その通りだ、イスハーク。やつらはこういっていた。皇帝が後宮で転んだ、と。おそらくいくのは後宮だ。」

後宮っ!!?と裏返った声が出た。後宮とは、たくさんの女性がいる、と聞いたことがあるが……正直俺はヘタレだから、誘惑されたら情報ポロっと……。いや、まず世界一美しい魔女ちゃんみちゃったらだれも綺麗って思わないかも……。

「あれ、でもなんで皇帝が転んだからって後宮いくの?」
「誘拐犯が蓮雲嵐皇太子とレンブラント・ヴァレンタイン大臣だからだ。皇帝に関する情報はすぐさま確認せねばならないからな。万が一崩御となった場合のためにも。」
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