魔法の華~転移した魔女は勘違いされていても気づかないわよ?~

マカロン

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五章 王道学園にてマリモ在中『怠惰』

三時限目

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「……さっきは、ごめん……初めまして、俺は生徒会…書記…の……甘、和久……です……よろしく……お願いします……。」
「このタイミングで自己紹介かいなっ!?大物やな……。あと、謝っても許さへん。お前に罰を与えるファントムや。心して覚えときぃ。」

気にしないでとフォローし、私も名前を告げる。

「……可愛い、名前……貴方に似合ってる……。どう、呼んでいい……?転校生、って呼んだ方が、いい?」
「名前で大丈夫よ……」
「だめや、転校生って呼びぃ。このこの名前を呼ぶんは俺だけでいいんや。他のやつら曰く魔女やら女神やら言っとるけど、ここじゃ呼べへんしな。」
「ほん、とに……魔女……女神さまなんだ……。うん、転校生って、呼ぶ……。ごめ、ん……。俺のことは、なんとでも言って……。」

ファントムさんに遮られ、断られた。和久くんは、女神や魔女という言葉に目を輝かせたあと、さっきのお風呂事件を思いだし顔を赤くした後シュンとした。わんちゃんみたい……。和久くん、と呼べばまたもや顔を真っ赤にした。

「俺……彼女といたら死んじゃう……」
「じゃあ別の部屋いきぃ。」
「やだ……。」

和久くんは、ノーを言える男の子でした。なんだかかわいくて頭を撫でると、キャパオーバーだったのか、彼は気絶してしまった。やだ、本日生徒会役員気絶しすぎじゃない……?ファントムさんはため息を吐いた。

「……まぁ、この耐性のなさなら、襲うなんてこと出来んやろ。」

この部屋では身の危険を感じる必要はないみたいだ。





次の日、彼らに朝の挨拶をする。もちろん、桂とメガネ込みだ。昨日は、もうみられてるし、お風呂上がりだったので桂やメガネはしてなかった。なので、和久くんは首をかしげている。

「だ、れ……?」

ひとまずメガネを取ると、彼は顔を真っ赤にした。

「あ、なた……転校生、だったんだ……おは、よう……おねがい、眼鏡、かけて……。」

言われた通り眼鏡をかけると、ほっとされた。

「変だけど必要やろ?」
「うん……ファントムお義兄さん、てん、さい……。」
「おーおー?お前の兄になった覚えないんやけどぉ?それにニュアンスなんかちゃうかったなぁ??」
「いつ…か…、俺……偉く……なって…たくさんのお花、用意する……から……待ってて…。」
「許さんで。」
「責任、とる……。」
「許さんで。」

よくわからないが、お花屋さんにでもなりたいのだろうか。常連客の勧誘?ファントムさんが黒い笑みなのがとっても気になるが、とりあえず前世で培った料理スキルにより朝御飯を用意する。卵焼きと味噌汁、ご飯という簡単な料理だけども。最初は魔法で用意しようと思ったが、寮生活な以上、どこでばれるかわからない。なので手料理だ。

「これ……あなた、が……?」
「うん、そうなの。要らなかったら残していいからね?」
「食べるっ!」
「はぁ!?いや全部俺が食べたるっ!!
……これ、夜ごはんも用意してくれる感じか?」

頷くと、二人にガッツポーズを取られた。



途中、レンブラントさんに出会いともに教室に向かうことになった。同室者が甘さんならば大丈夫だろうと、なかなかレンブラントさんも和久くんを評価しているようだ。

「ええ、甘さんならば度胸ないヘタレですからね。」

なかなかのいいようだった。

「それじゃ……俺たち、こっち、だから……。」
「たちってなんや?」
「ファントムお義兄さんと、俺、三年生…。この子、一年生、だから……。」

予想外と言うように珍しくファントムさんが口をあんぐりと開けた。そして、嫌やぁ!!と叫んだがレンブラントさんに私は教室へ手を繋いで連れられ、無慈悲に扉を閉められた。

「よぉ、遅かったなァ、レンブラントセンセ?」

教師らしからぬ色気溢れた男性が教卓にいた。どうやら担任の先生らしい。レンブラントさんは彼が嫌いらしく、小さく舌打ちをしていた。

「おおー、そいつが転校生か。……ダッセェな。俺は担任の一宮 玲(いちのみや れい)。よろしくなァ。」

笑う度に肉食獣のような八重歯がみえる。そんな彼は私に近づき、顎をくいっとあげた。

「……ん?おまえ、輪郭綺麗じゃねぇか。案外眼鏡取ったら……。」

そこまでいいかけたホスト教師は、ゴン、と鈍い音を立てレンブラントさんにアッパーされていた。レンブラントさんの綺麗な顔が歪む。

「れ、レンブラント先生!わた……僕は大丈夫ですからっ!」
「あなたに軽々しく触るなど、なんてうらや……こほん、屑な……。近すぎます。」
「いってて……お前こいつの保護者かよ……。」
「甥です!」
「そうなの!?」
(そうなの!?)

ホスト教師の声と心の声がハモった。そんな設定、私は知らない。しかし彼は誇らしげに胸を張っていた。

後程聞けば、どうやらファントムさんとの兄妹設定が羨ましかったらしく、ついそう言ってしまったらしい。

時はすぎお昼。授業中出入りするイケメン教師たちに生徒がキャーキャー言ったりしていたが、無事午前が終わった。しかしそのとき、キャーとまたもや聞こえた。誰がきたのかみてみると、狼狽えながらこちらを覗く和久くんが。

「あっ……転校生っ…!食堂、いこ…?」
「会いに来たでぇ~?お腹空いたなぁ?」


どうやら食堂があるらしく行くこととなった。初めての友達との食堂体験だ。内心とても嬉しい。

彼らについていき食堂へいくと、扉を開けたとたん叫び声が沸いた。そして色々な人からじろじろとみられる。理由はわかりきっている、イケメンが二人、しかも片方は生徒会役員だからだ。その二人がモジャモジャとともにいる。アンバランスすぎて私もついみちゃうかもしれない。ちなみに叫び声は通常らしい。

こそこそとなにか言われているが、耳のいい二人からは気にしなくていいと言われたので気にしないことにしてオムライスを注文する。ファントムさんは麻婆豆腐を、和久くんはカツ丼を頼んでいた。あとは、席で待ってれば持って来てくれるらしい。

「なぜあの夢のマリモが……現実だったのですね……運命ではっ!?」
「いや、まずその横のあの顔面強い怪しいやつだれだよ。」
「胡散臭いよねぇ。甘くん大丈夫~?なんか脅されてる~?」

主にヒソヒソ話しているのは顔のいい男性方だった。彼らをみて、和久くんは少し柔らかい表情となる。どうやら、仲間の生徒会役員らしい。ファントムさんはヒソヒソ話を聞き、青筋が立っている。なにを言われてるのかしら……。少し不安が起きてしまった。

俺様のような雰囲気を醸し出している男性が、私達に近づいてくる。

「……転校生とやらの顔を拝みに来たんだが……こんなのがお前の好みか?目を疑うな。」
「あなたとは違って、転校生さんには可愛らしさがありますからね。」
「あるか?」

ないと思います、小柄なだけで。しかし、私の代わりに怒ってくれた人がいた。ファントムさんと和久くんだった。

「謝っ、て……会長……!」
「そうやっ!可愛いこの子に可愛くないって言ったことをあやまれやぁ!!」

そもそも可愛くみえないように変装していることをお忘れかしら……?どうもお忘れらしく、二人はキレている。

しかしそんな二人をみて不愉快になるどころかその男性はニヤリと笑った。

「もう一人は知らねぇが……和久、お前がそんな反応するなんて珍しいな。おもしれぇ。なぁ……こうしたらもっと面白くなると思わねぇ?」

彼が素早く私の腰と後頭部をつかむ。
最近雲嵐さんにも似たようなことをされた覚えがあるので、すぐさまわかった。この人は、私にキスをするつもりなのだと。

「ありがたく思えよ?会長さまの口づけだ。」

ハッ、と嘲笑うように彼は顔を近づける。この距離では、ファントムさんたちは妨害できないだろう。そこまで計算済みなのだろうか、この男性は。

「はいはーいっ!!ご注文のッ、お品ですぅーー!!!」

噂をすればなんとやら。雲嵐さんがなぜか、料理人のような格好をしてそこにいた。そして手に持っていた麻婆豆腐を会長さんの顔面に吹っ掛けた。

「っっ!!?あっづ!あっづ!!?」
「えっ、あっ、大丈夫ですかっ!?」
「桃ひ……転校生くん、会長さんは自業自得だから心配しなくていいんだよー?あ、はいどうぞ、オムライス!……みんなが心配で来ちゃった♥」

最後は小声だったが、はっきりと聞き取れた。同時に思ったのは、行動力がすごいということだった。ファントムさんは会長さんを踏みつけながら麻婆豆腐がなくなったと文句をいい、和久くんはナイス……と親指を立てていた。

「会長、彼に……なにを……?」
「わかってんだろっ、俺様のキスだよ!いてっ、なんだこいつ、もう一人の転校生か⁉おいっ、踏むなっ!!」
「うるせぇ!変態は自然に帰れやっ!!」

副会長さんもファントムさんとともに会長さんを蹴り始める。止めようと思ったが、にっこにこの雲嵐さんがスプーンでオムライスを掬い、あーんして口に突っ込んでくるためなにも言えない。もはや私に彼らを止めさせない勢いだ。しかし、もう一人の生徒会役員……和久くん曰く、会計さんがそろそろ許してあげてと懇願してくれていた。

「ほ、ほら男の本能じゃん!?本番はしてないわけだし……!」
「下半身野郎にはわからないでしょうねぇ、この初恋の尊さが!!」
「なっ、副会長だってよくチワワちゃんたち連れ込んで……!」
「彼の前でそう言うこと言わないでもらえます?貴方も蹴られたいのですか?」
「……会長は差し出すからそれはやめて。」

もう会計さんに援護するきはないようだ。それにしても、チワワちゃんたちを連れ込むなんて、副会長さんよほどの犬好きなのかしら。そう思うと、門で口づけしようとしてきた彼を微笑ましく思えてきた。
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