魔法の華~転移した魔女は勘違いされていても気づかないわよ?~

マカロン

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六章 豪華客船、カジノとディーラー

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食事を終え、私たちはカジノへと向かう。

人生で一度は、行ってみたかったのだ。前世では行けなかったけれど、まさかこっちでマカオ?ラスベガス?みたいな設備のあるところに行けるなんて。


仮面をつけ、カジノへと足を踏み入れれば、煌びやかな世界が広がった。

「なにからがいいだろうか。狙いはあるか?特になければ…あれなんか、いいと思うが。」

そう言ってファルークさんはひとつのテーブルを指差す。
行けば、テーブルを囲んでいた他のプレイヤーがあっ、と声を上げた。

「て、転校生くん…?」
「は⁉なぜあなたがここに……⁉」

大人っぽい、金持のどら息子のような格好をした男性たちが困惑と驚愕の表情をみせる。

「……知り合いだろうか。見たところ、貴族のようだが。」
「その……。」

学園へいったときに出会った生徒会長さんと会計さんだと言えば、眉を寄せた。
あちらもファルークさんに首をかしげているので、商人のファルークさんです、と紹介すれば息を飲み、マジかよと言われた。
反応を見るに、なかなか有名な商人さんらしい。

「ダニエル殿と甘殿から、協会の手の者だと聞いているが。」

警戒しているらしい。
どうやら、協会にいい思いはないようだ。
私も命を狙われてるそうなので、協会にいい思いはない。

そういえば、学園の時は私を殺す余裕なんてなかったようだけど、学園の外で再開してしまった場合は普通に殺しにくるのかしら。
それとも、そもそも私を狙って……?

「協会には女神殿の殺害使令がでていると聞いたが……さて、御前たちは愚かにも忠実な使徒なのか聞かせてはくれないか?」

私の心を代弁し睨みを効かせてくれるファルークさんに怖じ気づいたのか、彼らは半歩下がった。
が、少し震えた声で誤解だ、と言う。

「これは完全に別件だ!」
「お客様、邪魔なのですが…。」
「すまねぇ!!」

そういえばテーブルを占領しながら話していた。
少しテーブルから離れた場所で、話し合う。どうやら、レンブラントさんからここの招待状をもらったらしい。

以前雲嵐さんと乗った際に、違和感があったそうで、その違和感がただの気のせいなのかそうでないのかを確かめるため派遣したそう。

学園をいつのまにか休学にされ何事かと驚いていれば、使令を告げられたと。

肝心のレンブラントさんは仕事で忙しく、仕事ついでに旅行を楽しもうとして計画して手に入れた招待状を、泣く泣く彼らに渡してきたそうだ。

「その顔といったらもう……呪い殺されるんじゃないかって思ったよね。またはこの招待状は冥途への片道切符かと。」
「ああ……。だが、ご覧の通り楽しませてもらっている。」

そう言って生徒会長さんが出したのは、大量のチップ。

大分儲けたらしい。
そして、いま目を付けているのは、さきほどのテーブルのゲームのようだ。

そこは、ディーラーがコップ?のような黒い筒のなかでサイコロを降り、サイコロの目の合計に近い数字を、ディーラーとプレイヤーで予想し、近い方が勝つというゲームだそう。

「こういうゲームは大体ディーラーの癖に影響されるから、別のプレイヤーとの対決を様子見をしていたんだが……。」
「ずっとディーラーがなかなか近い数当てて勝ってて、客も俺たちのもひとっつも予想当たんないんだよねぇ…。たまーにぴったり当てる人いるけど、僅差だし……。
それで、タネがわからないからそろそろ別のテーブルに移動しようかなって思ってたところに、君たちが来たってわけ⭐あ、そうだ、一枚だけかけてやってみる?当たらなすぎて面白いよ~?」

そういって生徒会長さんのコインを勝手に手に取り渡してくる会計さん。

「か、会計さん…でも、生徒会長さんのですし……。」
「……はぁ、こいつの物盗り癖は慣れたもんだぜ。だけどよ、夜の魔女、あなたはもう学園の生徒ではないだろ?名前で呼んでくれて構わねぇ。こちらも、名前で呼ぶのは……夫君が許さねぇだろうから、夜の魔女って呼ばせてもらうぜ。」

オットギミ、とはなにかしら。聞きなれない言葉に首をかしげている間にも、彼らの目線はなぜかファルークさんに注がれる。ファルークさんは怪しげに笑うばかりだ。

「それじゃあ……憂炎くんと、類衣くん?」
「ああ。そんで、やるか?」

チップを流れるように渡されたので、つい受け取ってしまう。それを肯定と取ったのか、テーブルの前へと連れていかれた。

「お客様。【挑戦】されますか?」
「ああ。彼女が挑戦するそうだ。」

先程より機嫌のよさそうな声でファルークさんがディーラーさんにそう答える。

私たちと同じように仮面を付けたディーラーさんは頷き、サイコロに黒い筒を被せる。

二つのサイコロの当たる音が聞こえ、しばらくしたら止まる。

「お客様から、どうぞ。」
(いやわかんないわよ!?)

まわりは面白そうにこちらに注目していて、どうやらこのテーブルのゲームは当たらないことで有名なゲームのテーブルだと今さら気がついた。
差しのべられた手のひらが見える。そこには2、と、ペンで書かれたような文字が書かれている。二度見した。罠かしらこれ。

もう女の勘に頼って答えようかと思ったが、なぜかこっちを答えてみようと思い、2、と言えば、ディーラーさんは微笑み、7、と言った。そして、筒をテーブルから離す。

「⁉」

ディーラーさんは息を飲んだ。
私も飲んだわ。まさか、本当に当たるなんて。いやどんな親切なカジノよ。
私が女性だから、当てられた振りをしてくれているのかもしれないわ。

さすがに申し訳ないので、もう1ゲームお願いし、情けは入らないと武士のように声をかけといた。首をかしげてわからない振りをしてくれた。

「も、もう一度ですね……。それでは、いざ!」

カラカラ、と筒のなかから音がする。どうぞ、と言われたので数字を考える。手のひらにはもう数字がない。いつ拭き取ったのかしら。
ちらり、と顔を上げれば

「えっ。」
「いかがしましたか?」
「いや、えっ??」

ディーラーさんの仮面の形が変わっている。そう、まるで……数字の8のよう。
もっとかっこいい仮面してたわよね貴方⁉
他の人たちは仮面を見ていなかったのか、特に不思議がる様子がない。もしや、と思いつつ8、と告げれば、またもや当たった。

これはおかしい。
しかも様子を見るに、ディーラーさんの親切によるものではないようだ。ディーラーさん仮面とる素振りも、手袋を変えたり文字を拭き取ったりする素振りなかったし。

「すげぇな……おい、もう1ゲームだ!」

じゃら、と今度は少し多めの掛け金を憂炎くんがテーブルにおいてしまった。ディーラーさんは困惑しながらも受け取ってしまったので、私はもう、あとに引けない。

ふら、と簡単な目眩がおき、近くの給仕係の人から赤いワインをもらい飲む。側面には5と書かれていた。まだサイコロをふってもないのに。

私は死んだ目で、振られるサイコロを眺める。目を聞かれたので5、と答えればやはり当たり、掛け金は倍となった。





夜。夕食を食べ終え、部屋にて、ファルークさんがそのことをアーシラさんとダニエルさん、ジェイさんそして和久くんに話し始める。憂炎くんと類衣くんの登場に、彼らは驚いていた。(ジェイさんとアーシラさんには学園で出会ったひとだと伝えた。やっぱり協会関係者だからか、いい顔はされなかった。)

ダニエルさんは、戻ったときは幾つかこぶがあったが、数時間たった今は、もう治ってきているようだ。ファルークさんがカジノで私が勝ち続けた話をすれば、反応は各人各様だった。

「すごいですわね!!さすが魔女さんですわっ!!予知ですかしら!それともサイコロを操っていていらっしゃるの!?」

アーシラさんは種を不思議がり。

「くうっ……!カジノ、ワタシ得意なので教えようと思ったのデスガ……。」

ダニエルさんは、私が意外とカジノに強いと思いいじけ。

「それならばこの私も強いはずですよ?ふふふ、彼女に教えようと思っていたのは私だけではなかったようですね。」
「私もなかなか強いと自負しているのだが?」
「ご冗談を。私には勝てませんよ。」

ジェイさんはダニエルさんとファルークさんの言葉をにこやかに笑い飛ばし反論し。

「俺、も強く…なれるかな……。」
「まだ早いわ…!お願い、ギャンブル狂いにはなっちゃダメよ…!」

賭けに憧れる危うき青少年が一人。

「いや、でも……ディーラーさんが教えてくれたんですよ。」
「……なるほど、心を読んだのか。イカサマに気がつくなんて、さすが女神殿だ。」
「いえ、そうではなくて…!手袋や仮面やワイングラスを見てわかったんです!」
「なるほど、物を介してか。そのほうが魔法を使ってることがばれにくい、と言うことだろうか?」

真実を話してもだめなようだ。他の誰かが魔法で教えてくれたかも、といえば、

「いまのところジェイさんしか他に魔法使える人イナイシ、その時喧嘩両成敗してましたカラ、出来るはずないのニ、そんな冗談いうなんて、魔女サンはお茶目デスネ⭐」

とウィンクされた。だめだわこれ。

もう遅いし、寝ましょう、というジェイさんの言葉で、私たちは布団にもぐる。モヤモヤとした気持ちを抱え、頭から布団を被せる。

また明日も、今度はみんなでカジノへ行くようだが、またあんなミラクルが起きるのかしら。

「……違和感ですか。」

小さく呟かれたそのことば。

憂炎さんと、類衣さんの言葉が引っ掛かっているような声色。

そんな声を発したジェイさんは、そのあとはなにもいわず静かに布団へと潜り込んだ。
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