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六章 豪華客船、カジノとディーラー
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「小説、なるほど…たしかに、隠れている、な?」
「なるほど……。」
小説の頭を持つ人形の化物が、角からこちらをうかがっている。
ちらちら、と時おり頭を出す姿は、まるで恋する乙女のようだ。
ジェイ殿と行動し、化け者共をなんとか巻いた。
なんとか彼女のもとへ戻ろうと、まずは小説を探しにいこうとした矢先、背後に気配を感じ振り返ってみれば、そこには人のような体をしながら、頭は小説の化物が。
ファルークは呆気に取られた。
「ひとつめ…はあれでいいのか?」
「いいのでは?ほら、題名《緋色の研究》ですし。」
「ふむ……。」
題名を知っているのだから、敵との因縁は確実だが、追求するのはいまではないだろう。
そう考え、特になにを言うでもなく、進む。
背後の化物が襲ってくることもなく、ただついてくるだけだが……頭が本だというのに視線を感じなんだか居心地悪さがある。
「ふぅむ……。シリーズものだと推測しているのだが、どれほどあるのだろうな?」
「恐らく九ほどかと。私が知っている範囲で、ならですが。」
隠そうともせずさらりと言うジェイ。こちらが言及しないと理解しているのだろう。
「ちなみに、あれは確保すべきだろうか?」
「別にほっといていいのでは?特に危害は加えられませんし、ついてきますし。実質一冊めを見つけたと同然ですよ。」
「そうか……。」
ちらり、と振り替えると、目があった(?)とたん怪物は両こぶしを顎に添えた。
キャッ(*≧д≦)とでも聞こえてきそうだ。
そうこうしながら廊下を歩くが、特に目ぼしいものはない。
「………やはり客室を一つ一つ回ったり、そもそももう一度すべてを見て回る方がいいのだろうか。」
「手間ですが、それしかないでしょうね。彼らのことです、どうせ見えにくくめんどくさい場所に置くような姑息な真似をしてるでしょう。彼は衛生面は壊れていませんし、自著をトイレに置くような真似はしないと思いますが……。」
「………。」
こちらが言及しないと確信しすぎではないか?
さすがにここまで、やつらと関係があるとあからさまにいわれると、突っ込みたくなってしまう。しかも自著なのか……あの仮面の道化師は実は本業作家なのだろうか。
国に帰ったら、世界中の作家を調べてみようと考えていたとき、不自然に明るい場所へたどり着いた。
躊躇している暇もないので中にはいってみれば、そこにはずらりと本がおいてある。
書店のようだ。
「ここには本屋まであったのか……この数では骨がおれそうだな。次の本の題名はなんだ?」
「それは……。」
「そう言い渋るものでもないだろう?」
しかし、一向にジェイ殿は口を開かず、不審に思って見つめれば、おずおずと口を開いた。
「分かりません。
……記憶が、ないのです。」
顔をしかめ首をふる様子に、嘘をいっている気配はない。そもそも、そんな下らない嘘をつくような人物ではないと知っている。
思ってもいなかった返答に、困惑しながら問う。
「どういうことだ?」
「きっかけさえあれば思い出すのです。先ほども、あの異形の頭の題名を見たら、ピンときました。
しかし……ところどころ、ぼんやりとして、ですが。
欠片のようにふと一部分だけ頭に浮かび、懐かしい感覚に陥っている……。
この船にきてから、ずっと、です。明確にいえば、あの船員……シャーロックを、見てから、ずっと……知らぬはずの気配に郷愁を感じ、友情と共に心苦しい感覚が呼び覚まされる。」
「……それは。」
己の身ならば、狂ってしまいそうだ。そう思ったのがわかったのか、ジェイ殿は眉を寄せ吐き捨てるようにいった。
「ええ、頭がおかしくなりそうです!
気のせいだと思っていました、ドイルを見るまでは……!なぜ、彼はここに……っ!彼らは、この世界の人間ではないというのに……っ!!」
「っ!?ジェイ殿っ!!」
頭を抱え、よろめき棚を倒した彼は、膝から崩れ落ちた。ひどく呼吸が荒い。
「……いぎりす。ろんどん?執事、セイフの殺し屋、切り裂きジャック、ベーカー街221B、蔦の魔女、怪しい新聞記者、役者の招待状……朝の訪問者、彼は敵に?シャーロックは、なぜ人間の姿を?まさか、そんな、嘘でしょう、彼女とは昔……。」
うつろな目で、関連性のない言葉を垂れ流しているジェイ殿が、彼らとの記憶が原因で、錯乱しているのは明白だった。無理矢理にでも、思い出そうとしたのかもしれない。
このままでは、まずい。
彼が手札をもっているだろう人物だというのに、このままではだれひとりとして無事に帰れない。
「ジェイ殿、しっかりしろ!まずは小説を探さないとだろう!彼女を助けなくていいのか、彼女に見放されてもいいのか!?」
顔を上げたジェイ殿は、目があった瞬間目を見開く。
「っ、う………次の題名は、四つの、署名……その、次は、」
「無理をするな…っ、彼女にお前の死体を見せる気はない……!」
「っく、ファルーク、肩を貸してくれませんか……。」
肩を貸しゆっくりと体を起こさせると、少しずつ呼吸が安定しているのを見てとれた。
自分を取り戻したようだ。
ジェイ殿を壁のあるところを背に座らせ、立ち上がる。
「ここで休んでいろ。四つの署名、だな?私は探してくる。」
「………っ、頼みます……。」
「ああ、任せてくれ。」
くるり、と振り返り、ぎっしりと本のつまった棚たちを見る。千はありそうだ。
息を吐き、また吸う。
(みせてくれる、王としての書類の速読経験で培った能力を!!)
真の王は、なにかを言いたいとき、声には出さないが、心で叫ぶのだ。
「なるほど……。」
小説の頭を持つ人形の化物が、角からこちらをうかがっている。
ちらちら、と時おり頭を出す姿は、まるで恋する乙女のようだ。
ジェイ殿と行動し、化け者共をなんとか巻いた。
なんとか彼女のもとへ戻ろうと、まずは小説を探しにいこうとした矢先、背後に気配を感じ振り返ってみれば、そこには人のような体をしながら、頭は小説の化物が。
ファルークは呆気に取られた。
「ひとつめ…はあれでいいのか?」
「いいのでは?ほら、題名《緋色の研究》ですし。」
「ふむ……。」
題名を知っているのだから、敵との因縁は確実だが、追求するのはいまではないだろう。
そう考え、特になにを言うでもなく、進む。
背後の化物が襲ってくることもなく、ただついてくるだけだが……頭が本だというのに視線を感じなんだか居心地悪さがある。
「ふぅむ……。シリーズものだと推測しているのだが、どれほどあるのだろうな?」
「恐らく九ほどかと。私が知っている範囲で、ならですが。」
隠そうともせずさらりと言うジェイ。こちらが言及しないと理解しているのだろう。
「ちなみに、あれは確保すべきだろうか?」
「別にほっといていいのでは?特に危害は加えられませんし、ついてきますし。実質一冊めを見つけたと同然ですよ。」
「そうか……。」
ちらり、と振り替えると、目があった(?)とたん怪物は両こぶしを顎に添えた。
キャッ(*≧д≦)とでも聞こえてきそうだ。
そうこうしながら廊下を歩くが、特に目ぼしいものはない。
「………やはり客室を一つ一つ回ったり、そもそももう一度すべてを見て回る方がいいのだろうか。」
「手間ですが、それしかないでしょうね。彼らのことです、どうせ見えにくくめんどくさい場所に置くような姑息な真似をしてるでしょう。彼は衛生面は壊れていませんし、自著をトイレに置くような真似はしないと思いますが……。」
「………。」
こちらが言及しないと確信しすぎではないか?
さすがにここまで、やつらと関係があるとあからさまにいわれると、突っ込みたくなってしまう。しかも自著なのか……あの仮面の道化師は実は本業作家なのだろうか。
国に帰ったら、世界中の作家を調べてみようと考えていたとき、不自然に明るい場所へたどり着いた。
躊躇している暇もないので中にはいってみれば、そこにはずらりと本がおいてある。
書店のようだ。
「ここには本屋まであったのか……この数では骨がおれそうだな。次の本の題名はなんだ?」
「それは……。」
「そう言い渋るものでもないだろう?」
しかし、一向にジェイ殿は口を開かず、不審に思って見つめれば、おずおずと口を開いた。
「分かりません。
……記憶が、ないのです。」
顔をしかめ首をふる様子に、嘘をいっている気配はない。そもそも、そんな下らない嘘をつくような人物ではないと知っている。
思ってもいなかった返答に、困惑しながら問う。
「どういうことだ?」
「きっかけさえあれば思い出すのです。先ほども、あの異形の頭の題名を見たら、ピンときました。
しかし……ところどころ、ぼんやりとして、ですが。
欠片のようにふと一部分だけ頭に浮かび、懐かしい感覚に陥っている……。
この船にきてから、ずっと、です。明確にいえば、あの船員……シャーロックを、見てから、ずっと……知らぬはずの気配に郷愁を感じ、友情と共に心苦しい感覚が呼び覚まされる。」
「……それは。」
己の身ならば、狂ってしまいそうだ。そう思ったのがわかったのか、ジェイ殿は眉を寄せ吐き捨てるようにいった。
「ええ、頭がおかしくなりそうです!
気のせいだと思っていました、ドイルを見るまでは……!なぜ、彼はここに……っ!彼らは、この世界の人間ではないというのに……っ!!」
「っ!?ジェイ殿っ!!」
頭を抱え、よろめき棚を倒した彼は、膝から崩れ落ちた。ひどく呼吸が荒い。
「……いぎりす。ろんどん?執事、セイフの殺し屋、切り裂きジャック、ベーカー街221B、蔦の魔女、怪しい新聞記者、役者の招待状……朝の訪問者、彼は敵に?シャーロックは、なぜ人間の姿を?まさか、そんな、嘘でしょう、彼女とは昔……。」
うつろな目で、関連性のない言葉を垂れ流しているジェイ殿が、彼らとの記憶が原因で、錯乱しているのは明白だった。無理矢理にでも、思い出そうとしたのかもしれない。
このままでは、まずい。
彼が手札をもっているだろう人物だというのに、このままではだれひとりとして無事に帰れない。
「ジェイ殿、しっかりしろ!まずは小説を探さないとだろう!彼女を助けなくていいのか、彼女に見放されてもいいのか!?」
顔を上げたジェイ殿は、目があった瞬間目を見開く。
「っ、う………次の題名は、四つの、署名……その、次は、」
「無理をするな…っ、彼女にお前の死体を見せる気はない……!」
「っく、ファルーク、肩を貸してくれませんか……。」
肩を貸しゆっくりと体を起こさせると、少しずつ呼吸が安定しているのを見てとれた。
自分を取り戻したようだ。
ジェイ殿を壁のあるところを背に座らせ、立ち上がる。
「ここで休んでいろ。四つの署名、だな?私は探してくる。」
「………っ、頼みます……。」
「ああ、任せてくれ。」
くるり、と振り返り、ぎっしりと本のつまった棚たちを見る。千はありそうだ。
息を吐き、また吸う。
(みせてくれる、王としての書類の速読経験で培った能力を!!)
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