二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ

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カイルの国【 1 】

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 私はルーカスとクラウスと一緒に、カイルの母国を訪れていた。

 エイデンは夫たちの中で一人、留守番役として残ってもらっている。

 転移門から外に出ると、体に感じる気温や吹きつける風が変わったことを肌で感じる。前方を見ると、数人迎えに来てくれているようだ。その中に、私は会いたかった人を見つけた。


「カイル!! 迎えに来てくれたの?」
 嬉しくて笑顔で駆け寄ると、カイルはいつものように優しい笑顔を向けてくれた。でも少し落ち込んでいるみたいだ。

「すぐに帰れなくて心配をかけてしまったんだよね。本当にごめんね」
 私の手を握りしめ、沈痛な表情で謝ってくれているカイルを見ていると、不安になって急に来てしまった私の方が、なんだか申し訳なくなってしまう。

 積もる話は座ってからしようということで、そのまま王宮に案内された。豪華な部屋で座っていると、カイルの家族である皇族たちが部屋に入ってきた。

 おぉ……皆さん麗しい……ロイヤルファミリーだ。

 夫の身内の人たちに会うなんて初だったので、心臓がバクバクだったが、終始和やかに談笑出来た。聖女ということはカイルのご家族はもう知っているので、多少気を使ってくれたのかもしれないが。
  

 実は私はこの世界に来てから、女性と話すこともほぼ無かったため、カイルの母親の皇妃様と話すのはすごく緊張した。

 異世界に私がくる前に、宮殿に私の侍女候補として令嬢が数名いたらしいのだが、女性同士のいがみ合いや宮殿にいる男性陣に秋波を送り、自分の夫にしようとした令嬢がいたことから、神殿側が頭を悩ませて令嬢たち全員と、令嬢と関係を持ってしまった男性も数名全てそれぞれの国に帰ってもらった経緯があり、いま私が暮らしている宮殿には女性がいない。

 前にこの世界の女性についてリリーに聞いたら、控えめな性格や穏やかな性格の女性も稀にいるけれど、大体が周りの男性陣が溺愛や心配から囲い込んで、出てこない。たいてい自分から出て来るのは大多数の肉食で自己主張が強い女たち。との話だったので、カイルのお母様である皇妃様は、カイルの話からすると穏やかな性格の方だったので会えるのを楽しみにしていた。
 なんでも、幼少の頃から皇太子の婚約者で、カイルのお父様である今の皇帝が、ずっと囲い込んでいたらしい。その話を前に聞いて、カイルに思わず「カイルはしなかったの? 」って聞いてしまったら、カイルは「私の周りは積極的な女性しか居なくてね……でもそのおかげでユリアーナに会えて幸せだよ」そう言ってくれた。

 皇妃様は穏やかに話をしてくださり、私は嬉しかった。だけどカイルと今日の式典の前に少し話をしたかったため、そこまで長い時間は話せなかった。



 カイルと部屋に二人にしてもらい、ルーカスとクラウスには別室で待っていてもらっている。


「ユリアーナごめんね……すぐに帰れなかったから心配かけちゃったよね……」

 いつも堂々としているカイルが、すごく落ち込んでいる様子を見て、私は慌てて言った。

「いや! カイルはいつまでにって明確に言っていなかったし! 私が勝手に心配で来ちゃったの……ごめんなさい」

「そんなことないよ。来てくれて嬉しかったし、私の家族にユリアーナを紹介出来るのはまだ少し先だと思っていたから、むしろ嬉しいよ」
 そう言って抱きしめてくれるカイル。

 その後、カイルの口から説明された状況はリリーが教えてくれた内容と同じだった。式典への招待状が勘違いされたこと。式典は数日間催されるため、早めに来た国内の貴族令嬢には説明をしていったが、納得しない、もしくは皇太子から外れるなら婿に……と言われてしまい、それぞれに丁寧に断りを入れていたこと。式典自体も、皇太子を降りる自分は準備だけして、一度宮殿に戻るつもりでいた。降りる立場なので最後の日に転移門の移動で顔を出せば良いと思い、出発の際の言葉だったのが、遅くなり心配をかけてしまい本当に申し訳ないと謝られた。


「そんなに謝らないで」

「でも……ユリアーナは私のことを外交の面で頼りになると思って選んでくれたんだ。それなのに、この程度のことを軽くこなせないなんて……ガッカリさせてしまったよね」

 カイルの言葉を聞いて、私は自分の行動を思い返してみた。


 たしかに、最初はカイルのそういう面を頼りにしていた。今も、頼りにしているのは変わりがないけれど、真摯に私のことをいつも考えてくれて、気遣ってくれる優しい夫であるカイルを、私は好きになっていた。
 他の夫たちもそうだ、気持ちの表し方や、伝えてくれる言葉はそれぞれでも、みんな私のことを好きと態度で示してくれている。

 そんな夫たちに対して、私は何の意思表示もしていないことに気が付いた。
 もちろん、気持ちを言われた時や、優しくされた時はありがとうや嬉しいとは伝えたが、それだけだ。

 姿形はユリアーナとなり、異世界での生活に慣れてはきていたが、私は未だに自分に自信が無かった。
 おそらくその自分の自信の無さが、自分から積極的に気持ちを伝えられずにいるのだろうけれど……こんなに夫を不安な気持ちにさせていたなんて……


「カイル、私はあなたが言うように、最初はあなたのその能力や性格目当てだったわ。でも、プロポーズしてくれて、定期的に二人で過ごすようになって、あなた自身を好きになったの。私が言葉で伝えてこなかったから、不安にさせてしまったみたいだけど……でも、今回のことであなたにガッカリするとかは絶対に無いから! 」

 私の言葉を聞いたカイルは、半ば呆然となってしまった。そして数秒固まり、考え込んでいたと思ったら質問してきた。

「え……今なんて……」

 こんなカイルは初めて見る。

「カイルのことが好きって言ったの」
 私が微笑んで言うと、カイルは涙を一筋流した後、私を急に抱きしめてきた。

「初めて好きって言ってもらえたね。本当に嬉しいよ……どこかいつも不安だったんだ。強引に押し切ってしまった自覚もあるから、ユリアーナが後になって婚姻を後悔して、最悪離縁されることもあるかなって……」

 私を抱きしめているカイルの腕は、微かに震えている。いつも堂々としていて、頼りになるカイルのこんな様子は初めてだ。

「不安にさせてしまってごめんね」
 私はそう言って抱きしめ返した。


 しばらく抱き合っていたら、カイルが顔を上げた。

「本当はユリアーナの気持ちが知れた記念に、もっと二人で甘い時間を過ごしたいのだけれど、ルーカスやクラウスが別室で待っていてくれているんだよね」

「そうね。それから夕方の式典に私も出るから準備しないと」

「きっとユリアーナが一番美人だよ。ユリアーナをエスコートさせる栄誉を与えてくれますか? 」
 そう言って手を差し出してくるカイル。

「甘い時間は夜にね」
 囁いてくるカイルは、いつもの余裕ある感じが戻ってきている。珍しいカイルの様子が新鮮だったので残念だけれども、たしかに夕方の式典までに準備や確認することもあるから今から大忙しだ。

 式典にはカイルを婿にと言いだして、まだ納得していない貴族令嬢も来ると聞いているので、私も頑張らねば! と一人気合いを入れているユリアーナだった。
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