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第4話 炎の冒険者と新たな技
しおりを挟むエールと出会ってから一週間。
丁寧な看病もあってか、俺の怪我は歩けるぐらいに回復する。
そして俺たちはパーティを組むために必要な人材を集めることにした。
久しぶりの外の風が気持ちがいい。何気なくそんなことを思いながらエールは分析する。
いつ見てもエールがマドカの妹なんて信じられない。
……駄目だ。今は気にするな。
「うーん……やっぱり攻撃の要が必要だな」
「とは言ってもそんなに簡単に見つかるのか?」
「それは運と根気だぜ!」
ハキハキと元気よくエールは俺にこう言ってくる。
今の俺にとってこいつは眩しすぎる。
汚れも何も知らない純粋な笑顔。ひたむきに目的のために突き進む。
男勝りで元気がいい。
だけど、出来立てホヤホヤの俺たちの即席パーティに入ってくれる物好きな奴。
それに、ただ入るだけでは駄目だ。
エールが言うように攻撃の核となる人物。
本当にそんな奴いるのか。
エールは目を輝かせながら言っているがどうにも見つかるとは。
「いいから金を出せよ! 持ってんだろ?」
「やめてください……」
「ハジメ! あれ!」
「恐喝か!?」
こんな街の真ん中で何をやってやがる。
二人の冒険者が一人の男を脅している。
金目のものがないかと言っている。
エールは真剣な眼差しでその光景を見ている。
俺もわなわなと拳を握りしめながら俺は今にも駆け出そうとしている。
「誰のおかげでお前は冒険者になれたと思っているんだ?」
「そうそう! 俺らがパーティにいれてやったんだから」
「でも、僕は……」
「お前は俺たちが利用してやっていることにいい加減に気が付く」
くそ! 駆け出そうとしても怪我が痛んでくる。
さらに隣にいるエールも俺のことを止めている。
「あたしがいく」
「で、でも……」
「大丈夫、あたしにかかればあんなやつ」
エールが俺に向かってウインクした時。
――なんだこれ!? 強烈な炎がこの場を支配する。
一瞬にしてそれは炎の渦となり二人を取り囲む。
周りも騒然として人だかりが出来る。
脅していた二人の男は青ざめた表情となり、悲鳴を上げる。
「あ、あれって……」
「すげぇ……」
俺とエールは驚きと初めて見る強烈な炎による攻撃に見惚れていた。
しばらくして分断された二人の男と脅されていた男の炎の渦は消える。
男たちは恐れたのかその場から逃げ出してしまう。
そしてこの炎を発動させた張本人が姿を現した。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます」
トゲトゲ頭の茶髪に細い目。そして冒険者の服装。そして誰が見たってイケメンという容姿にその威圧感。
ただ、その炎の冒険者は優しく脅された男の手を取って助ける。
男はお礼を言ってその場から去って行った。
すごいしかっこいい。その炎の冒険者は何も見返りを求めることなく助けた。
周りの民衆も拍手をしてその男のことを称賛する。
「なぁ! ハジメ! あいつなら……あたしたちのパーティの要となる」
「ああ、でも、あれだけの力を持っている奴が入ってくれるかどうか」
「関係ないさ! 断られたらそれだけのこと! ほら、言うじゃない! 当たって壊れろって!」
それ砕けろの間違いだ。しかし俺の忠告を無視してエールはその炎の男の元へ向かう。
「なぁなぁ! お前すっげーな! うちらさ、パーティ組んでいるんだけどあたしらのところに来ない?」
エールは威勢よくその男に近付いて行く。
だが、炎の男はエールに向かってこんなことを言い放つ。
「悪いな! 俺は強いところにいきたいんだ」
「な、なぁ……確かにあたしらはまだ出来たばかりで弱いけどさ、これから強くなっていくんだよ! あんたと一緒に」
「いや、こんなこと言うのもなんだがお前らからは強さが伝わってこない、じゃあな」
エールのお願いを完膚なきまでに叩き壊す。
悔しいけど確かにそうだ。今の俺たちじゃお前の言う通り。
だけど、なんだろうこの気持ち。すっげ……悔しい。
「待てよ! まだ何も見ていないのに強いも弱いもないだろ」
「何だお前は」
「ハジメ……」
今度は俺がその炎の冒険者に歩み寄る。
そんなこと言われて引き下がる訳にはいかない。
俺はツンツン頭の男に近付いて説得する。
だが言葉での説得は無理だ。
こいつが俺たちのパーティに入ってくれるには……やっぱり実力でなんとかするしかない。
俺は何かを考え付く。そうか、ただ攻撃を防ぐことしか出来ないこの俺も。
少しは役に立つときが来た。俺は覚悟を決めて男にこう宣言した。
「じゃあこうするか? お前のあの強烈な炎による攻撃を防げたら……俺たちの仲間になってくれるか」
「ちょ、ちょっと! 何言ってんだよ! ハジメもあんたまだ怪我も治ってないのに」
「いいんだ、それにどちらにしろ、今ここでこいつを引き入れないと手遅れになる!」
「ふ、そういうのは嫌いじゃない、なるほど……よし、そうと決まれば場所を移動しよう」
のってくれたな。俺は心の中で感謝してその男のこと見つめる。
その目を見る限り、俺の怪我なんて気にもしていない。
全力でぶつかってくるだろう。だけどそれでいい。
ここで力尽きようともうそんなのどうでもいい。
俺はこいつの攻撃を防いでせめて助けてくれたエールに少しでも恩返しをする。
「こっちだ、俺も時間がない……さっさと終わらせよう」
こうして俺たちは場所を移動していった。
◆◆◆◆◆◆◆
俺たちは人がいない路地裏へと向かう。
ある程度の広さがありここなら勝負の場として申し分ない。
エールが遠くから見つめる中。俺と炎の冒険者の勝負が始まる。
「勝負はお前が一度でも俺の攻撃を防いだらお前の勝ち」
「……分かった」
「ただそんなことはあり得ないと思うけどな」
ニヤッと笑い、男は俺のことをなめている。
あれだけの炎の攻撃を近くで見た後の勝負。
不安や怖さはあるが俺は絶対に防いで見せる。
「それじゃあいくぞ! 『ヘルファイア』!」
「頑張って、ハジメ!」
ヘルファイアと叫ばれ、この場に巨大な炎の玉が作られる。
それは俺に向かって放たれ、熱さがひしひしと伝わってくる。
そんなぁ……一瞬でこんなものを作り出せるなんて。
ただ、俺も負けていられない。
鉄の盾を俺も取り出し、ありったけの魔力を伝える。
巨大な火の玉は俺の鉄の盾に命中する。
盾越しでも分かってしまう。熱さと攻撃の威力。
段々と押されて俺は地面に後ずさりする。
体中に有り余る魔力を伝えても全く防げる気配がない。
気が付けば魔力は底をつき、鉄の盾はただの脆く弱いものとなる。
そして俺は威力は弱まったがヘルファイアをまともに受けてしまう。
「ハジメ!?」
「これで分かっただろ? 俺はお前たちと遊んでる時間はないんだ」
鉄の盾は黒焦げになり、体中が熱さと痛みに襲われる。
またか。また……愛想をつかれてしまうのか。
あの時みたいに。立ち去る炎の男を見ることもなく俺は諦めようとした。
だけど何だろうな。この勝負絶対に……。
負けたくねぇ!
「なに!?」
「ハジメ……駄目! もぉ、いいからさ!」
「まだだ! まだ……俺はやれる!」
ボロボロになりながらも立ち上がる。既に限界を迎えているはずなのに。
エールは俺を止めるように叫んでいる。
だけど俺はもう一度炎の男にうの攻撃をしてくるよう挑発する。
「案外、大したことないな、お前の攻撃!」
「……そうか、お前が望むなら俺もそれに応えてやる」
すると炎の男はもう一度先ほどの炎の玉を作りだす。
ヘルファイアは先ほどよりも大きく強いもの。
巨大な火の玉は俺の目の前まで迫ってくる。
もう盾はない。だけど、俺はしっかりとヘルファイアを見つめ続ける。
……そうか。俺自身が盾を作り出せばいいのか。
自分の力で。俺は自分の胸の辺りが熱くなっていることに気が付く。
例え、どんなに脆く、弱いものでも。
絶対に防げるという気持ちがあれば防げるはずだ!
迫るヘルファイアに両手を突き出す。
すると俺の目の前に黄金の盾があらわれる。
「ハジメ、なにこれ!?」
「俺のヘルファイアが……こんなに完全に防がれるなんて」
黄金の盾はヘルファイアを完全に打ち消す。
魔力と俺の強い気持ちの融合。それは今までのものとは桁違いの頑丈さを誇った。
やっと……やっと俺にも強力な技が使えた。
これが俺の守りの要『ハートブロック』。
俺は地面に倒れこむ。だけどあの時とは違ってとても清々しかった。
「まさか、こんな奴がいるなんてな……約束だ、入ってやるよ、お前らのパーティに」
それだけ聞いて俺は気を失った。
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