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春の訪れ
四話【神様の悪戯】
しおりを挟む私と色雲は新しく入学してくる後輩の話やヒロインちゃんと主人公くんのこれからの話をしながら通学路を歩いた。
梦蘭学院に近づくになるにつれ同じ制服を着ている人が多くなってきた。相変わらず色雲は可愛い女の子がいると口説き始めるし、そんな男と一緒に歩いている私まで注目をされてしまい、やっぱりコイツと登校しなければよかったっと私は溜息を吐いた。口説いている間も待機している身にもなってほしい、私は遅刻して不真面目生徒にはなりたくないんだよ。
今色雲は校門の前で恐らくこれから入学式が待っているだろう女の子に話しかけていた。いや入学初日で口説かれる女の子が本当に可哀想である。後輩になると思うのだが、助けるか、助けないか…、うん、面倒ごとに巻き込まれたくない。ごめんね、後輩ちゃん多分色雲のこと好きになっちゃうと思うけどそれは色雲にターゲットにされた自分を恨んでね。
色雲が私の元にトコトコと爽やかな笑顔で帰ってきた。
「どう?口説き落とせたの?」
「うん、バッチリ連絡先も交換した」
「どうせ最初だけ連絡して飽きたら未読スルーするんでしょ」
「バレた?」
「女の敵だね」
「一度は夢を見させるんだから、女の子の味方でしょ」
「そういう所が本当にクソだよ」
「酷いな~」
「思ってない癖によく言うよ」
どうやらこれから後輩になる女の子も色雲に落とされてしまったらしい。本当に可哀想、だって色雲は飽きたらもう二度と相手はしてくれないから。少女漫画のキャラなのに、性格が中々終わっていると私は思う。現実にいたらこんな風なんだね。色雲はいつもチャラチャラして、表面上のことしか言わない、色雲の本音なんて聞ける日は来るのだろうか。
色雲と学院に入っていく、周りを見渡してもヒロインちゃんと主人公くんは見当たらなかったからまだ来ていないようだ。色雲が先程口説いた女の子が超可愛かっただの惚気話が続く。私はそれをうん、そう、と聞いている振りをして聞いていなかった。
「クラス表あっちにあるね」
「ね、涼梨ちゃんと同じクラスがいいな」
「私は杏と同じクラスがいいかな」
「え?俺は?」
「どちらでも」
人が集まっている場所に大々的にクラス表が貼ってあった。私と色雲は人混みの間をすり抜けながら前の方に進んでいく。
仲良しな子と一緒のクラスになれて喜んでいる子がいる中、仲がいい友達と一緒のクラスになれなくて落ち込んでいる子もいた。クラス替えってワクワクするけど仲良しな子や好きな人とクラスが違ったら泣きたくなるよね、これで一年過ごすのかーって、でもそのクラスで過ごしていくうちに案外当たりかも?なんて思うのが定番なんだよね。結局、仲良しな子と同じクラスになれなくても新しい友達を作ればいいんだよ。私も前世、そんな感じで乗り切っていたしね。
私は羽井涼梨で、は行だから下の方から探していく。今年の二年生は八組まであるようだ、多いね。これはヒロインちゃんと同じクラスになれる確率は少ないかな。
一組から探していき案外私の名前は直ぐに見つかった。
「あった……二組ね、」
「あ、俺も二組」
「え」
「よかった涼梨ちゃんと一緒で」
「……マジか」
私は二組に名前があったけれど、まさかの色雲も二組であった。あーこのクズ男と同じクラスか…、色雲はどうせ一年生からの友達と同じクラスになれてよかったと思ってるだけだと思うけど、私は色雲と初めて喋ったのは今日だ、てかさっきだ。だから、色雲的には仲のいい友達なんどろうけど、私的にはほぼ初対面の人って感じなんだよね…、まぁ前世から色雲のプロフィールをストーカー並に知ってるけどさ。よしっポーカーフェイス頑張ろうか。
「杏の名前は……ない」
「華月の名前もないな」
「はぁ、杏とクラス離れてしまった…」
「まぁまぁ俺がいるし?」
「クズ男は黙ってて」
「今日辛辣すぎない?」
どうやらヒロインちゃんと主人公くんとクラスが離れてしまったようだ。私はこれからのヒロインちゃんと主人公くんの話を一番近くで見たかったのに…、無念。仕方ない、この一年はクズ男と過ごすか。いや新しく友達を作ればいいのでは?、うんそうだよ、まだ私たちは二年生だ、これから友達を作っても遅くはないはず。今日は二年生の教科書の配布と新しくやってきた先生たちの説明だけだし、明日から友達を作ろう。
私と色雲は二年二組の教室に入り、黒板に大々的に貼っている座席表から自分の席を探し着席した。スクールバッグを机の横に掛ける。周りを見渡したら、大体の人はもう既に座席に座っているようであった。
そして私は思ったことがある…、
『【丘華】のメインキャラクターこのクラスに固まりすぎない!?』
私は生粋のポーカーフェイスで保っていたが、前世がなかったら恐らく発狂している。だって明らかにおかしいのだよ、【丘華】のメインキャラクターが多すぎる。どんだけ二年二組に集まっているんだ、なんだ私が知らないだけで【丘華】の続編でも出ていたのか。
いや勿論、ヒロインちゃんと主人公くんは別のクラスなのだけれど……、他のキャラがここに集まりすぎだと私は思う。どうしてだろう…、もしかしてこれは神様の悪戯なのだろうか??神様の悪戯にしては中々に凝っているけれど。いや神様はこんな手際は良くないと私は思う、だからこれは偶然だよね、多分。
色雲がいるのは百歩譲ってとりあえずいいとして、何故ここにバレー三銃士が集まっている??
バレー三銃士というのは【丘華】の中で登場したキャラクターだよ、三銃士ということで三人いるのだが、この三人は全員バレー部だ。バレー部でイケメンでかっこよくて女子に人気がある三人のことを【丘華】ではバレー三銃士と呼んでいる。三人は一年生の頃はクラスが違ったけれど、バレー部という仲だったからか、よく三人でいるのを見かけていたっと私の前の羽井涼梨ちゃんの記憶はそう言っている。そうここ肝心、三人は“クラスが違う”であったのに、二年生になった今、二組にバレー三銃士がいるのだ……。三人を一緒のクラスにした犯人がいるのだろうか。分からないな、あまり深く考えないよにしよう。
そしてバレー三銃士がここにいるのも百歩譲ってとりあえずいいとして、何故ここに関西双子がいる??
双子って同じクラスにしていいものなのか??分からない、前世教員ではなかった私には分からないことだ。関西双子とは、ポジティブな兄とネガティブな弟で構成されている、そして二人は関西弁だ。設定が詰め込みすぎなのは少女漫画あるあるなのでスルーするよ。双子って同じクラスにしてよかったんだね、前世と今世合わせて初めて知ったよ。
他にも脇役だったけど笑顔が似合う女の子や天然財閥の息子とその執事もいるよ、更にはご令嬢とギャルまでいるし。本当に二組に集結してるんだね、私心臓が口から飛び出るかもしれなかったよ。危ない、危ない。逆にここにいないヒロインちゃんと主人公くん凄いね、お二人だけの空間が出来てよかったね、誰も邪魔する人はいないよ。
私がこれから一緒に一年を共にする人達を紹介しているうちにチャイムが鳴っていたようだ。ずっと周りをキョロキョロしていたら、おかしな人になるからそろそろやめようか。
チャイムが鳴るまではザワザワと生徒たちの話声が聞こえていたけれど、チャイムが鳴るとシーンと静まり返っていた。誰一人と喋らない教室は生徒たちの呼吸をする音だけが響く。そこにガラガラと教室の前の方の扉が開いた。
私は二年二組の担任になる人が来るのか、優しい先生がいいな、と呑気に思っていた。
──────またもや【丘華】のメインキャラクターだとも知らずに
羽井涼梨(はねいすずり)
色雲は本当に女の敵だと思っている。ヒロインちゃんと同じクラスがよかったけれど、クラスは離れてしまった。二年二組に【丘華】のメインキャラクターが集結しすぎて真面目に吃驚した人。そしてまさかの担任も【丘華】のメインキャラクターでこの後椅子から転げ落ちます。
色雲柚斗(いろくもゆずと)
女の子みんな大好き。可愛い子や美人な子がいると直ぐに口説き始めます、でも飽きたら相手してくれなくなるので注意です。こんなクズ男はやめましょう。羽井涼梨ちゃんと一緒のクラスになれてニッコリ、ヒロインちゃんと主人公くんとクラスが離れてションボリ。
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