追憶の空

忠犬

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春の訪れ

六話【あの子には華がある】

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翌日になり、私は今日から始まる授業に胸を膨らませていた。前世の頃は高校生活を無駄にしていたから、今世は思いっきり楽しみんだ、まぁ勉強を楽しむのは難しいかもしれないけどね。私は大人になっても勉強を好きにはなれなかったかな。別に嫌いなわけじゃないんだよ、好きでも嫌いでもない、それが大半の人が思っていることだと私は考えているよ。

今日は電車の中で色雲には遭遇しなかった。そりゃそうだよ、電車には車両が沢山あるからね、待ち合わせでもしない限り電車で遭遇することは難しい。だから昨日は本当に偶然だったんだね、と私は一時間目の国語の授業でノートの隅に落書きを描きながらぼんやりと思った。

 
昨日家に帰宅したら、ヒロインちゃんと通話をしたんだ。クラスが離れたことにヒロインちゃんはかなり落ち込んでいたから、私は慰めるのが大変だったよ。また来年があるよって百回は言った気がするね。次はヒロインちゃんと主人公くんの惚気話を聞かされた。別に今は前の羽井涼梨ちゃんじゃないから主人公くんとの惚気話を聞いても、【丘華】尊いね、ぐらいしか思わないかな。ヒロインちゃんと主人公くんは上手くやれているらしいよ、これから人生のゴールを二人で突破していくんだよね、結婚のスピーチをするのが楽しみになってきたかな。




私が昨日のことについて考えているとあっという間に四時間目の授業は終わりを迎えていた。初日の授業は楽しかったけど、今はこの純粋で初々しい心が半年経つころには無くなっているんだよね、時が経つことは怖いことだ。

昼休みになると、教室で友達と固まってお弁当を食べる人や購買で昼食を買いに行くため教室から出ていく人もいる。私はお弁当を母親に愛情込めて作られているから、そのお弁当を食べる。あと購買に買いに行くのはお弁当が足りなかった時だね。

前の羽井涼梨ちゃんはいつもヒロインちゃんと一緒に居たからか、あまり友達が出来てないみたいだった。もうヒロインちゃんとはクラスが離れているし、結果的にはこのクラスに友達がいない、私は一人悲しくボッチ飯をしないといけないのか……。

そう心の中で切なくなりながら、私は机の上にお弁当箱を出した。

「はぁ……ボッチ飯…」

そう呟きながらお弁当箱の蓋を開けると、私の机に知らないお弁当箱が置かれた。え?誰の?と驚き動揺したが、直ぐにこのお弁当箱の主に予想がついた、私は少し溜息を吐きながら俯いていた視線を上にあげた。

「色雲…」

「涼梨ちゃんからボッチ飯って聞こえたから、可哀想だなって思って」

「余計なお世話と言いたいところだけど、ボッチ飯は流石に嫌だから 一緒に食べてあげる」

「なんで上から目線??」

私の机にお弁当箱を置いた犯人は色雲柚斗であった。私がついボッチ飯と呟いてしまったから、憐れんでくれたのだろう。何故前の私は友達を作らなかったのか、友達は大事だろ、社会人になっても直直連絡する仲になるほど友達は大事なんだよ。仕方ない…、この一年は沢山友達を作るようにするよ。私の新たな目標だね。

「色雲は一緒に食べる友達とかいないの?」

「女の子なら沢山いるかな」

「一回女の子に刺されたらどう?」

「頭を刺されそうになったことはあるな」

「頭大丈夫??」

「凄い煽りに聞こえる」

「私は頭の外側も中身も両方心配してるんだよ」

「純粋な心配はタチが悪くない?」

色雲は友達もいるし、女の子も沢山いるらしい。本当に人間のクズさが集まったみたいな人間だね。色雲はいつか刺されそうだな、なんて思って問いかけてみたら、まさかのもう体験していたとは。流石に頭の外側も中身も心配になった。私は心配性なんだよ、昨日に引き続き色雲を心配している私はもしかして聖母マリア??まぁそれは置いといて、色雲と二人で昼食をとっても少し華がないよね。やっぱり私は女の子の友達が欲しいかな、出来れば知り合いぐらいで喋ったことがある子がいいよね……。

あ、いるじゃん。私は早速教室を見渡して目的の女の子を探した。けれど、その子は教室にはいなかった。購買にでも行ってるのかな、まぁ昼休みはまだ長いしその子が教室に帰ってきたら誘おうか。

「キョロキョロしてどうした?」

「今私たち二人じゃ華がないでしょ?」

「そうなんだ」

「そうなの、だから一緒にご飯を食べてくれる女の子を探してたんだけど、その子教室にいなくて」

「誰?名前は?」

「園山美亜ちゃん」

「え?園山ちゃん……?なんでこの子?」

「知り合いで昨日喋ったし、それに園山ちゃんには華がある、華があるんだよ」

「華があることは分かったけど……」

私がキョロキョロと周りを見渡していたからか、色雲にどうしたのかと訊ねられた。私が華が必要だから園山美亜ちゃんが欲しいと言うと色雲は目を見開いて驚いていた。色雲が驚く姿は新鮮だ、いつも飄々として余裕をかましているからね、今の顔写真に収めておけばよかったかな。私は園山ちゃんには華があることを熱弁した、色雲の意見は聞かないけれど、園山ちゃんじゃないといけない理由はしっかりと理解してもらわないとね。

「色雲が心配している理由は分かるよ、でも大丈夫、私は別に園山ちゃんが嫌いなわけじゃないし、恨んでもいない」

「親友に酷いことをした人でも涼梨ちゃんは友達になれるの?」

「確かに酷いことはしたよ、でもね昨日園山ちゃんと少し喋ったんだ、園山ちゃんは私の顔を見ただけで顔が青ざめていたんだよ、園山ちゃんはちゃんと自分が何をしたか分かっている、それに」

「それに?」

「園山ちゃんは本当は根はいい子なんだ、そんな子が一つの過ちを犯してしまっただけで、高校生活を棒に振るなんて、私はそれを見過ごせないよ」

「そう、涼梨ちゃんの気持ちが聞けて良かった、俺も園山ちゃんには笑っていてほしいし、今の園山ちゃんは見てられないからな」

「……ありがとうね」

「いいよ、これくらい あと園山ちゃんはお弁当だった気がするんだけど、教室では食べてないみたいだな」

「教室以外で食べる場所ってどこ?」

「まだ昼休みは長いし、探してみる?」

「うん、そうしよう」

私は色雲の心配していることが分かっていた、だから私はハッキリ言ったんだんだよ、大丈夫って。それに色雲は親友が酷いことをされたのに?っと問いかけてきた、確かに園山ちゃんは酷いことをした、でもあんなにあの子はやったことを後悔しているんだ。そもそも私は前の羽井涼梨ちゃんじゃない、前の羽井涼梨ちゃんだったら許さなかったかもしれないけど、前の私はもういないのだ。だから私がやりたいようにやる、ただそれだけなんだよ。

私は最初から色雲がなんと言おうと園山ちゃんを誘うことを諦めることはしなかったと思うけれど、色雲は私の意見を聞いたあと、少し笑ってから賛成してくれた。色雲が園山ちゃんのことをちゃんと見ていたことには驚いたし、今の園山ちゃんは見てられないっと言った色雲のその表情は暗かった。案外周りのことを見ているんだと、私は色雲のことを少し見直した。

そうして園山ちゃん探しが始まった。



私と色雲は二手に別れることにした。私は上階で色雲が階下、もしかしたら校庭にいるかもしれないということを含めて体力のある色雲に階下全てを任せた。園山ちゃんを見つけ出しても、園山ちゃんを説得するのが肝心だ。あの子は私に罪悪感があると思うし、色雲だってヒロインちゃんの友達だから罪悪感は拭えない。あの子は不思議と前の羽井涼梨ちゃんと同じ匂いがするんだ、前の羽井涼梨ちゃんのことは救えなかったけれど、園山ちゃんならまだ遅くはない、あの子はもう一度普通に恋して、恋愛を楽しめばいい。悪役の最後がこんなに報われないんて、そんなことがあってはならないんだよ。


私は小走りで空き教室や便所に誰かいないか確認したり、購買のおばあちゃんにツインテールの女の子が来ていないか聞いて回った。

「いない…」

空き教室や他のクラスに行っていないか探したのに、どこにもいないなんて……、もしかして階下にいるのかもしれないと思い色雲に「そっちにいた?」とメールを送る。返信は直ぐに返ってきた、「こっちはいない、そっちも?」とまさかの色雲の方にもいないみたいだ。

どこにいるんだろう、学校にはいないのだろうか、もしや職員室とか?いやまさかね、うん、流石に職員室にはいないよね。

そこで私はハッと気づいた、まだ探していない場所があることに。私はその場所に園山ちゃんがいるかもしれないと、色雲にメールを送り、目的の場所まで駆け走った。


私は階段を駆け登り、お願いだからここにいてくれと目的の場所に最後の希望を託した。












私は“屋上”に続くドアを開いた。現実では屋上は鍵が掛かっていて使えないけれど、少女漫画の世界では屋上は使えるのだ。現実に囚われすぎた私の落ち度だね。

ガチャっとドアが開く音が屋上に響く。私はドアを開けた先に園山ちゃんがいることを願って屋上に足を踏み入れた。





















「やっと見つけた、園山ちゃん」

屋上にはどこまでも続いている青い空を眺めていた園山ちゃんがいた。



羽井涼梨(はねいすずり)

昼休みになりボッチ飯かと思ったら、色雲が一緒に食べてくれた。でも華がないと思ったので、知り合いで昨日喋った園山ちゃんとも一緒にご飯を共にしたいなって思ってた。色雲には反対されると考えていたけれど、まさかの賛成で少し色雲を見直した。最後に無事に屋上で園山ちゃんを見つけれてホッとした人。


色雲柚斗(いろくもゆずと)

羽井涼梨がボッチ飯をしていたから可哀想だと思って一緒に食べてくれた。案外周りのことをちゃんと見ている人、園山ちゃんのことは反省していることが分かっていたから、今の俯いていて前より笑わなくなった園山ちゃんは見てられなかった。

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