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春の訪れ
八話【感謝の気持ち】
しおりを挟む「園山ちゃん、俺とも友達なろう?ね?」
そう園山ちゃんを怯えさせないように優しく、色雲の女の子を魅了する得意のスマイルで笑いかけるが……
「……怖い怖い……!男の子怖い……!」
主人公くんに嫌いと突き放されたことがトラウマになっているのか、完全に男の子を恐怖対処として怯えている園山ちゃん。
そしてその二人は現在、屋上で私の周りをグルグルと追いかけっこしている状態。今すぐにやめてくれ、私の目が回って仕方ない、私が倒れてもいいのか。
「はぁ……」
結局私はため息を吐くことしか出来なかった。私のため息は優しく吹いている風が消え去ってしまって、二人の耳に届くことはなかった。
何故こんなことに……
遡ること数分前ー
私と園山ちゃんが友達記念に写真をパシャリと撮ったあと、まるで私と園山ちゃんが友達になるのを待っていたかのように丁度よく屋上の扉が開いた。
園山ちゃんは屋上に入ってきた人物を見る前に私の後ろに隠れてしまった。私と友達になっても、他人が怖いのは変わらないんだね、まぁこれから頑張っていくしかないけど。私はプルプルと全身震えている園山ちゃんをどうどうと抑えながら、屋上に入ってきた人物を見た。
その人物は片手をひらひらと挙げながら、いつもの飄々とした顔つきをしていた。
「色雲、丁度良すぎて逆に怖いよ、もしかして中から見てた?」
「涼梨ちゃんが園山ちゃんの手を握っていたことなんて知らないな~」
「バッチリと見てんじゃん、しかも結構前から」
色雲は直ぐに屋上に辿り着いたみたいだけど、私と園山ちゃんが話していたから、わざとその話が終わるまで待っていたようだ。本当に色雲は人の心が透かして見えているんじゃないかって時々思うよ。
色雲はキョロキョロと屋上を見渡してから、「園山ちゃんは?」と私に問いかけた。
「ここ」
私は自分の後ろを指しながら、園山ちゃんの居場所を教える。色雲は園山ちゃんを発見すると、一瞬驚いていたけれど、直ぐに飄々とした顔つきに戻った。色雲は身長が高いから、私の後ろでプルプルと震えて蹲っている園山ちゃんには気づかなかったみたいだね。身長が高いって、案外下の方が見えないで不便なのかもしれない。高身長の悩みって多そうだしね。私は低身長でもないし、平均の身長だから、悩みってほどのことはあまりないかな。
園山ちゃんは居場所が教えられたことにビクッと驚いていた。私は内心で謝りながら、これから最難関の【園山ちゃんと色雲の友達大作戦】を決行し始める。ごめんね園山ちゃん、躊躇ってる暇なないんだ、今が一番園山ちゃんの扉が開いている時だから。チャンスは一度きりでしょ?
「園山ちゃん、紹介するね この人が今日一緒にご飯を食べていた友達」
「俺は色雲柚斗、女の子はみんな大好きな高校生二年生~、仲良くしようね」
「……色雲くんってあの色雲くん?」
「そう、あの色雲な」
「っ!、一年前はごめんなさい!」
私は蹲っている園山ちゃんをゆっくりと立たせながら、色雲を紹介した。色雲は本当に女の子が大好き星人だから、園山ちゃんに口説くかもしれない、私がちゃんと見張っとかないとね。園山ちゃんは私が守るよ。
園山ちゃんは色雲がヒロインちゃんの友達の色雲だと分かったら、瞬時に頭を下げて謝罪を口にしていた。まぁこれはまだ予想内だ、園山ちゃんが色雲に会ったら言うだろうなとは思っていたからね。そして大事なのは、色雲がどう返すかだ。色雲がまだ根に持ってることなんてないと思うけど、言葉を一歩でも間違えてしまったら、もう二度と色雲と園山ちゃんは友達になれないかもしれない。だから色雲の返しの言葉がとても大事なのだ。色雲はどう返すのだろうかと思いながら、私は少しの緊張で色雲を見た。
色雲は私の視線に気づくと、軽く私にだけが分かるウインクをした。それは大丈夫という意味なのだろうか、色雲が大丈夫というのなら大丈夫なのだろう。私は安心し一息ついた。
そうして色雲は園山ちゃんに「とりあえず頭を上げて」と言うと、園山ちゃんはゆっくり顔を上げた。色雲は園山ちゃんが自分を見ていることが分かると口を開いた。
「何の事かな?一年前のことだし俺覚えていないな~、何だったんだろう」
「えっ、その…」
「園山ちゃん、色雲は覚えていないからさ、わざわざ教えなくてもいいんじゃないかな」
「……でも、」
「いいのいいの、記憶力皆無な色雲にはまた教えたとしても忘れちゃうから」
「……そうなのかしら?」
「そうだよ」
色雲は首を傾げながら、何の事か分からないと言った。どうやら覚えていないフリをしたようであった。それはほぼ正解の返しだと私は思う。相手が覚えいなければ、自分が罪悪感を負うこともない。私はこれ以上園山ちゃんが傷つくことがないと分かったからか、思わずガッツポーズをとった。勿論背中の後ろでだけど。
忘れたフリをした色雲にも自分が何をしたかを教えようとするいい子ちゃんな園山ちゃんであったけど、色雲が記憶力皆無なこと(大嘘)を教えると、園山ちゃんは引き下がってくれた。色雲にはジト目で睨まれたが、これは園山ちゃんの為なのだ、これくらい我慢してくれ。
「園山ちゃん、俺と友達なろう?」
「え、えっと……」
「な?」
「…えーと……」
色雲が園山ちゃんと友達になろうと誘っているのだが、圧が強すぎて園山ちゃんは若干怯えている。そして、色雲が園山ちゃんに一歩近づくと園山ちゃんも一歩下がり……
「園山ちゃん、友達なろう~」
「ヒッ……!追いかけないで……!」
いつの間にか私の周りをグルグルと二人で追いかけっこしている状態になってしまった。やめてくれ、本当にやめてくれ、私を間に挟まないでくれないかな。何でだろう、屋上こんなに広いのに……、何故二人は私の周りをだけを使うのだろうか??屋上全体で追いかけっこすればよくない??私の目が回って仕方ないんだよ、そろそろ私倒れるよ??いいの??
「園山ちゃん~」
「……怖い怖い!男の子怖い……!」
ただでさえ園山ちゃんは主人公くんに嫌いと突き放されてしまったことをトラウマ化しているというのに、その主人公くんの友達の男の子に追いかけられるとか恐怖でしかないよね。助けてあげたいよ、でもね、君たちが私の周りをグルグル回っているせいで私は立つこともやっとなんだよ。助けるためには止まってくれないかな??
それに色雲はもう悪ノリしているよね、園山ちゃんを追いかけて私の目を回そうしてる??そんな外道だっけ、色雲って。そういえば最近の色雲が優しすぎて忘れてたけど、性格がクズだったよね。危ない危ない、忘れるところだった。
「ねぇ」
「友達なろう?」
「怖い怖い!」
「ねぇってば」
「園山ちゃん~」
「男の子怖すぎ!」
「ねぇ!!止まってくれないかな!!」
私が呼びかけても二人には届かなかったみたいだから、久々に出した大きい声で二人はピタッと止まってくれた。私って大きい声も出せるんだ……っと私自身も驚いて固まってしまい、屋上で三人の高校生が時が止まったように表情一つ動かさないで止まっているという、妙な構図が出来てしまった。
数秒沈黙が続いたが、色雲が「涼梨ちゃんって大きい声も出せるだね?」と目を見開いて言った問いかけにより、屋上での三人の時間は進み出した。
「うん、私って大きい声出せるんだね、自分でも吃驚」
私が小さく笑ってからそう言うと、二人も笑ってくれた。この三人で友達になるなんて、【丘華】の漫画の中だったら絶対想像出来ないよね。私が羽井涼梨ちゃんに成り代わったからこそ、未来が変わったのかな。
これが青春ってやつなのかな、凄く心がポカポカして暖かくなるような気持ちだよ。ついこの平穏な日々が続くといいなって思っちゃうのは二人も同じなのかな。私も一緒の気持ちだったらいいな。
「ほら園山ちゃん、大丈夫だよ 色雲は怖くない」
「そうだよ、俺は女の子には優しいからね」
「……そうよね、ふー、もうバッチリよ」
私が園山ちゃんの背中を擦りながら、安心させる。それに便乗して色雲も自分が怖くないことを証明する。園山ちゃんはふーっと一度目を瞑り深呼吸をして息を整えると、目つきが柔らかく安心しているものに変わっていた。
「よろしくね、色雲くん」
「よろしく、園山ちゃん」
園山ちゃんが右手を差し出すと、色雲も右手を差し出した。二人でお互いに挨拶をしたあと、握手を交わしていた。私はそれが何だか、二人の時だけそうやってるのは狡いと思い、私は右手差し出した。
「私もやりたいな、それ」
「涼梨ちゃんもしかしてヤキモチ?」
「羽井さんも可愛いところがあるのね」
「いいでしょ……別に、」
「はいはい」
「ふふっ分かったわ」
二人は優しく笑いながら、私とも握手を交わしてくれた。それが本当に嬉しくて、私は頬を少し染めた。前世の私なら信じられないと思うな、今世を私にくれた人には凄い感謝だよ。どんな人かも分からないし、そもそも人じゃないかもしれない、でもこれが私の新たな人生だとしたら、精一杯楽しまないとね。
「涼梨ちゃんどうしたの?頬が赤い」
「具合でも悪くなったかしら」
「違うよ、二人と友達になれたのが嬉しかっただけ」
私がそう言うと、二人は少し恥ずかしそうに頬をかいた。色雲はそっぽを向いていたし、園山ちゃんは下を向いていた。恐らく、今二人の顔は真っ赤なんだろうなと思うと、私は悪戯心が湧いた。ニヤニヤと笑いながら「二人も嬉しいんだね」と言うと、二人から小さな声が聞こえた。
「……あぁ」
「……そうね」
小さくて掠れた声だったけど、私にはしっかりと耳に届いていた。私は益々嬉しく思い、小さく笑うと空を見上げた。
空は私たちを見守ってくれているんだ、これからも見守ってくれると思うと、
「ありがとう」
この言葉が思わず私の口から零れていた。私はこの言葉が二人に言っているのか、空に言っているのかは私自身でも分からなかった。
羽井涼梨(はねいすずり)
色雲と園山ちゃんが自分の周りで追いかけっこをしていたから、目が回りすぎて倒れそうだった人。色雲と園山ちゃんが友達になれて良かったし、二人と友達になれて本当に良かったと思ってる。
色雲柚斗(いろくもゆずと)
涼梨ちゃんと園山ちゃんの話が終わるまでずっと待ってた人。園山ちゃんを追いかけて涼梨ちゃんの目を回すという悪ノリをしていた。最後の涼梨ちゃんが友達になれて嬉しいと言った時、そっぽ向いたけど顔が真っ赤なのはバレバレです。
園山未亜(そのやまみあ)
ヒロインちゃんの友達に追いかけ回されて涙目になった人。結果的には涼梨ちゃんに背中を押されて色雲と友達になれました。最後の涼梨ちゃんの友達になれて嬉しい発言で顔が真っ赤になりました。涼梨ちゃん大好き。
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