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3.想いの重みを収める人
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「は~……なんか今日眠いな」
くぁ、と欠伸をした一言目、出たのは自分勝手な感想だった。
持っていた本の表紙を見つめて眠気にぼんやりとしているが今は就業時間中である。
蝉の声が薄らと聞こえる中、冷房の効いた店内は人も疎らで業務も落ち着いていた。特にイレギュラーも無く、ただ日常業務をゆる~くやる程度。見慣れた連なる書棚にも変わった様子は無いし、あとはよく分からん奴に盗みでも働かれてなければ問題は無いはず。たぶん。
熱い瞼の裏を鬱陶しく思いながら本をひたすら棚に収める。A型の血が騒いで背の順に並べてみたり作家の出版順に並べてみたりと遊びつつ、そろそろ入口近くを整理するかと小さめの棚を触っていた時、湿気を含んだ熱気が俺の体を扇いだ。
「いらっしゃいませぇ」
反射で挨拶したけどよく考えたら普段挨拶なんかしないな。
急に正気に戻ってお客様の方を向けば慣れたラベンダー色が目に入った。涼し気なノースリーブの服を着て大きな鞄を肩に掛けたサングラス姿の女。
「え、千弦?」
「は?」
久々に浴びる冷たい声。そういや出会った日はこんな声だったな。
俺の声でやっとこちらを認識した千弦は、こんな所に俺がいると思っていなかったのか少しだけ目を見開いていた。これもまた初めて見る顔だ。
「……なんでアンタがここに?」
「いやエプロンしてるじゃん。働いてんだよ一応」
体を千弦の正面に向けてやればエプロンも目に入ったのか納得はしていた。ただ、たぶんだけど今日は機嫌が悪いっぽい。なんとなく千弦の周りの空気が少し重い気がしたから。
そんなことを考えながら千弦を見ていれば何かを探して視線を彷徨わせていた。そりゃそうか、本探してるから本屋に来たんだよな。
「何探してる? 案内するけど」
「……いえ、時間が潰したかっただけなの。涼しいところで何か面白いものでもないかと思っただけ」
そう言って顔を逸らす千弦に少し変わった印象を持った。千弦って暇潰しで本を読むタイプには見えなかったから、意外だったのかもしれない。
「……そ。見逃すから立ち読みしていいよ。オススメが聞きたかったら言うけど」
「なら聞こうかしら、読むかどうかは分からないけどね」
相変わらず棘のある言葉。でもその棘の先は随分と丸くなっている。それにちょっと安心しながら自分の好きな本を紹介した。
「千弦って感動ものと考えさせられる系ならどっちが好き?」
「……人間が嫌いだからなんとも言えないけど」
「……ならこれがオススメかな。主人公が自然の綺麗さに魅せられて絵を描き始めるって話。結構筆折りそうな場面が出てくるけどそれでも嫌いになれないってのが結構好きだったんだよね」
俺の話を割と素直に聞いてる様子の千弦は案外真剣に読むか考えてくれているらしい。表紙をじっと見つめたり、くるりと裏返してあらすじの載った裏表紙を読み込んだり。何度も表紙を見ているから絵の綺麗さに惹かれてるのかな。
その内、ぱら……と目次を捲り、サブタイトルを見る。どうやら刺さったようでそのまま1ページ目を読み始めた。
何も言わずに隣で本の整理を続ける。人が居なくなった本屋では音がよく響いていた。
冷房の風を送り続ける音。本同士が擦れる音。ページを捲る音。
静かすぎて、お互いの呼吸音まで意識してしまうくらいだった。
その中で、ふと思い出して口を開く。
「千弦、どこ読んでる?」
「……? 最初の挫折辺りかしら」
「俺さ、そこのセリフ大好きなんだよね」
『俺はこれが好きな訳じゃなかった。でも、嫌いになったら何も残らない気がした』ってやつ。
そう言ったら無性にタバコが吸いたくなって、でも勤務中だし客の前だしな……と理性で止まる。セリフを思い出して靄がかった心は、もうどう思われてもいいから感情の捌け口が欲しかった。
「別に俺、タバコが好きだった訳じゃないよ。でもさ、縋るものがなくなったらその時の俺はもうやっていけないって思ったんだよね」
手は止めない。心の赴くままに本を並べ替える。足りない本は本棚の下の引き出しから補充して、綺麗に整えていく。
「酒もそう。美味いかどうかより酔えるかどうかでさ、なんて言うの? なんか、『そういう自分』って思わないと耐えられない気がして」
「……そう」
俺の視界にアネモネはいない。赤い雫すらチラつかない。ひたすら本と向き合いながら言葉を綴った。
「その後、先生が『そんな事ないよ、貴方にはこんなに素敵なところがあるじゃない』って諭すだろ? その言葉はやけに響かなくて。俺に素敵なところなんてないじゃん、って思うからこそ主人公に感情移入できて世界に入り込めたんだよね」
「確かに、この主人公は何かが歪んでるわね」
「だろ? 全部が王道キラキラ主人公じゃつまんないし、色々あるから本ってのは面白いんだよ」
引き出しを開けるついでに千弦の顔を見れば、何を考えてるか知らないけどぼーっと開いたページの一点を見つめてた。どこにそんな見つめる要素があったのか分かんないけど不機嫌じゃないならいいや。俺はまた視線を本棚に戻して仕事を始めた。
千弦は何も言わない。ページを捲る音もしない。その本そんなに考え込むシーンあったか? と思いながら本を並べてたその時。
かしゃ。
本屋ではまず聞くことの無い音がした。ベランダで聞いた時より少し重めの音。反射で横を向けばラベンダーの代わりに黒に囲われた透明のレンズが俺を見ていた。
「……え、撮った?」
「……そうね」
「なんで?」
「……さぁ。気付いたら、シャッターを切ってたの」
千弦にしては珍しくふわふわした答えだった。気付いたらっていう辺り普段から感覚派なんだろうなとか考えつつ、だとしても今俺を撮る意味って何? って疑問は拭えない。でも、千弦自身が不思議そうに眉を寄せてるから本当に理由は無いんだろうな。
「……かっこよく撮れてた?」
「……今日のはフィルムの一眼レフだから、現像してみないと分からないわね」
「じゃあ現像したら見せてよ、被写体なんだしそれくらいは許されるだろ」
少しずつ眉間のシワが薄くなっていく千弦は、俺にそっけない返事をしてから本棚や店内の無機物をメインに写真を撮り始めた。自然しか撮らないって言ってたけど、俺撮って吹っ切れたのかな。本って人工物だけど。
そんな千弦を横目で見ながら新しい本を棚に収める。あ、これ気になってたタイトル。今度買おうかな。入荷してすぐ買えるっていうのは店員の特権だよなぁとか考えながら、シャッター音をBGMに二つ三つと棚の整理を進めていく。
この静かな時間で心の靄がまた少し、軽くなった気がした。
くぁ、と欠伸をした一言目、出たのは自分勝手な感想だった。
持っていた本の表紙を見つめて眠気にぼんやりとしているが今は就業時間中である。
蝉の声が薄らと聞こえる中、冷房の効いた店内は人も疎らで業務も落ち着いていた。特にイレギュラーも無く、ただ日常業務をゆる~くやる程度。見慣れた連なる書棚にも変わった様子は無いし、あとはよく分からん奴に盗みでも働かれてなければ問題は無いはず。たぶん。
熱い瞼の裏を鬱陶しく思いながら本をひたすら棚に収める。A型の血が騒いで背の順に並べてみたり作家の出版順に並べてみたりと遊びつつ、そろそろ入口近くを整理するかと小さめの棚を触っていた時、湿気を含んだ熱気が俺の体を扇いだ。
「いらっしゃいませぇ」
反射で挨拶したけどよく考えたら普段挨拶なんかしないな。
急に正気に戻ってお客様の方を向けば慣れたラベンダー色が目に入った。涼し気なノースリーブの服を着て大きな鞄を肩に掛けたサングラス姿の女。
「え、千弦?」
「は?」
久々に浴びる冷たい声。そういや出会った日はこんな声だったな。
俺の声でやっとこちらを認識した千弦は、こんな所に俺がいると思っていなかったのか少しだけ目を見開いていた。これもまた初めて見る顔だ。
「……なんでアンタがここに?」
「いやエプロンしてるじゃん。働いてんだよ一応」
体を千弦の正面に向けてやればエプロンも目に入ったのか納得はしていた。ただ、たぶんだけど今日は機嫌が悪いっぽい。なんとなく千弦の周りの空気が少し重い気がしたから。
そんなことを考えながら千弦を見ていれば何かを探して視線を彷徨わせていた。そりゃそうか、本探してるから本屋に来たんだよな。
「何探してる? 案内するけど」
「……いえ、時間が潰したかっただけなの。涼しいところで何か面白いものでもないかと思っただけ」
そう言って顔を逸らす千弦に少し変わった印象を持った。千弦って暇潰しで本を読むタイプには見えなかったから、意外だったのかもしれない。
「……そ。見逃すから立ち読みしていいよ。オススメが聞きたかったら言うけど」
「なら聞こうかしら、読むかどうかは分からないけどね」
相変わらず棘のある言葉。でもその棘の先は随分と丸くなっている。それにちょっと安心しながら自分の好きな本を紹介した。
「千弦って感動ものと考えさせられる系ならどっちが好き?」
「……人間が嫌いだからなんとも言えないけど」
「……ならこれがオススメかな。主人公が自然の綺麗さに魅せられて絵を描き始めるって話。結構筆折りそうな場面が出てくるけどそれでも嫌いになれないってのが結構好きだったんだよね」
俺の話を割と素直に聞いてる様子の千弦は案外真剣に読むか考えてくれているらしい。表紙をじっと見つめたり、くるりと裏返してあらすじの載った裏表紙を読み込んだり。何度も表紙を見ているから絵の綺麗さに惹かれてるのかな。
その内、ぱら……と目次を捲り、サブタイトルを見る。どうやら刺さったようでそのまま1ページ目を読み始めた。
何も言わずに隣で本の整理を続ける。人が居なくなった本屋では音がよく響いていた。
冷房の風を送り続ける音。本同士が擦れる音。ページを捲る音。
静かすぎて、お互いの呼吸音まで意識してしまうくらいだった。
その中で、ふと思い出して口を開く。
「千弦、どこ読んでる?」
「……? 最初の挫折辺りかしら」
「俺さ、そこのセリフ大好きなんだよね」
『俺はこれが好きな訳じゃなかった。でも、嫌いになったら何も残らない気がした』ってやつ。
そう言ったら無性にタバコが吸いたくなって、でも勤務中だし客の前だしな……と理性で止まる。セリフを思い出して靄がかった心は、もうどう思われてもいいから感情の捌け口が欲しかった。
「別に俺、タバコが好きだった訳じゃないよ。でもさ、縋るものがなくなったらその時の俺はもうやっていけないって思ったんだよね」
手は止めない。心の赴くままに本を並べ替える。足りない本は本棚の下の引き出しから補充して、綺麗に整えていく。
「酒もそう。美味いかどうかより酔えるかどうかでさ、なんて言うの? なんか、『そういう自分』って思わないと耐えられない気がして」
「……そう」
俺の視界にアネモネはいない。赤い雫すらチラつかない。ひたすら本と向き合いながら言葉を綴った。
「その後、先生が『そんな事ないよ、貴方にはこんなに素敵なところがあるじゃない』って諭すだろ? その言葉はやけに響かなくて。俺に素敵なところなんてないじゃん、って思うからこそ主人公に感情移入できて世界に入り込めたんだよね」
「確かに、この主人公は何かが歪んでるわね」
「だろ? 全部が王道キラキラ主人公じゃつまんないし、色々あるから本ってのは面白いんだよ」
引き出しを開けるついでに千弦の顔を見れば、何を考えてるか知らないけどぼーっと開いたページの一点を見つめてた。どこにそんな見つめる要素があったのか分かんないけど不機嫌じゃないならいいや。俺はまた視線を本棚に戻して仕事を始めた。
千弦は何も言わない。ページを捲る音もしない。その本そんなに考え込むシーンあったか? と思いながら本を並べてたその時。
かしゃ。
本屋ではまず聞くことの無い音がした。ベランダで聞いた時より少し重めの音。反射で横を向けばラベンダーの代わりに黒に囲われた透明のレンズが俺を見ていた。
「……え、撮った?」
「……そうね」
「なんで?」
「……さぁ。気付いたら、シャッターを切ってたの」
千弦にしては珍しくふわふわした答えだった。気付いたらっていう辺り普段から感覚派なんだろうなとか考えつつ、だとしても今俺を撮る意味って何? って疑問は拭えない。でも、千弦自身が不思議そうに眉を寄せてるから本当に理由は無いんだろうな。
「……かっこよく撮れてた?」
「……今日のはフィルムの一眼レフだから、現像してみないと分からないわね」
「じゃあ現像したら見せてよ、被写体なんだしそれくらいは許されるだろ」
少しずつ眉間のシワが薄くなっていく千弦は、俺にそっけない返事をしてから本棚や店内の無機物をメインに写真を撮り始めた。自然しか撮らないって言ってたけど、俺撮って吹っ切れたのかな。本って人工物だけど。
そんな千弦を横目で見ながら新しい本を棚に収める。あ、これ気になってたタイトル。今度買おうかな。入荷してすぐ買えるっていうのは店員の特権だよなぁとか考えながら、シャッター音をBGMに二つ三つと棚の整理を進めていく。
この静かな時間で心の靄がまた少し、軽くなった気がした。
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