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プロローグ
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「こんばんは」
予定通りに部屋を訪ねてきた目の前の男──憎き竜人族の王であるジークの口から、低くも威圧感を感じさせない穏やかな声が紡ぎ出された。見目も所作も洗練された男に、アウラの中でなんとも言えない感情が湧き上がってくる。初めて会うはずなのに、ジークの纏う香りや雰囲気に懐かしさにも似た安心感を覚えたのだ。全てをジークに委ねてしまいたい。その腕の中で温もりを感じ、まどろみたい……。暗殺対象である相手に抱くべきではない感情ばかりが、アウラを支配しようとする。
アウラは次々と湧き上がる感情を冷静に抑え込むために、改めてジークを暗殺対象として見つめ直した。
(でも、今夜僕は彼を殺さなければいけない……僕たち人間のために)
今度は人を殺す罪を背負うことに少しばかり胸を痛めたアウラだったが、自分が背負う人類の平和という大義名分を前に、罪悪感を切り捨てた。
「陛下、足をお運びいただき光栄です」
「アウラ」
優しく名前を呼ばれ顔を上げさせられたアウラの唇に、ジークの唇が重なった。何度も唇を触れ合わせた後、ジークの舌先がアウラの唇を突く。アウラはうっとりとした表情を浮かべながら小さく唇を開き、熱くぬめる舌を迎え入れた。
アウラを驚かせないためか、ジークはゆっくりと口内を舐り、混ざり合う唾液の淫猥な音を部屋中に響かせる。
「ああ……体、熱い……」
ジークから放たれる馨しい香りに酔いながら、アウラは自身の体が経験したことのないほど熱を帯びていくのを感じていた。口付けの合間に悩ましい声で呟くアウラをジークは瞳を細めながら見下ろす。
「俺もだ」
ふたりの体は熱を持ち、下腹部は欲望に膨らんでいる。アウラは無意識のうちに体をジークのこすりつけるように揺らし始めた。
(もう、何もわからない……とにかく今は目の前の彼が)
「んんっ……欲しい……」
そうこぼしたアウラは、流れに身を任せ事を済ませたあかつきには任務を完遂できているものと思っていた。
自身の体を巡る猛毒がジークを殺してくれると、そう思っていたのに──。
「おはようございます!陛下は朝議があってもう向かわれました。アウラ様に朝のご挨拶をできず、それはもう悔しそうでしたよ」
「え……?」
(ジーク王が、生きている……?)
予定通りに部屋を訪ねてきた目の前の男──憎き竜人族の王であるジークの口から、低くも威圧感を感じさせない穏やかな声が紡ぎ出された。見目も所作も洗練された男に、アウラの中でなんとも言えない感情が湧き上がってくる。初めて会うはずなのに、ジークの纏う香りや雰囲気に懐かしさにも似た安心感を覚えたのだ。全てをジークに委ねてしまいたい。その腕の中で温もりを感じ、まどろみたい……。暗殺対象である相手に抱くべきではない感情ばかりが、アウラを支配しようとする。
アウラは次々と湧き上がる感情を冷静に抑え込むために、改めてジークを暗殺対象として見つめ直した。
(でも、今夜僕は彼を殺さなければいけない……僕たち人間のために)
今度は人を殺す罪を背負うことに少しばかり胸を痛めたアウラだったが、自分が背負う人類の平和という大義名分を前に、罪悪感を切り捨てた。
「陛下、足をお運びいただき光栄です」
「アウラ」
優しく名前を呼ばれ顔を上げさせられたアウラの唇に、ジークの唇が重なった。何度も唇を触れ合わせた後、ジークの舌先がアウラの唇を突く。アウラはうっとりとした表情を浮かべながら小さく唇を開き、熱くぬめる舌を迎え入れた。
アウラを驚かせないためか、ジークはゆっくりと口内を舐り、混ざり合う唾液の淫猥な音を部屋中に響かせる。
「ああ……体、熱い……」
ジークから放たれる馨しい香りに酔いながら、アウラは自身の体が経験したことのないほど熱を帯びていくのを感じていた。口付けの合間に悩ましい声で呟くアウラをジークは瞳を細めながら見下ろす。
「俺もだ」
ふたりの体は熱を持ち、下腹部は欲望に膨らんでいる。アウラは無意識のうちに体をジークのこすりつけるように揺らし始めた。
(もう、何もわからない……とにかく今は目の前の彼が)
「んんっ……欲しい……」
そうこぼしたアウラは、流れに身を任せ事を済ませたあかつきには任務を完遂できているものと思っていた。
自身の体を巡る猛毒がジークを殺してくれると、そう思っていたのに──。
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