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第三章 愛の確認
11、先生、頼っていいの。。。?
しおりを挟む櫻は学校が終わるといつもの辻の車が待っていたのでそれに乗車した。
「坊ちゃんは坂の下で乗りますのでご安心ください。」
運転手の坂本が櫻にいう。坂ノ下だって目立つだろうに。
「ですので、カーテンは必ず閉めてくださいね。」
この車はとても高級車ということはわかる。しかし、銀上女学校の生徒は車で通うものも多かったので、悪目立ちはしていないようだった。
車が停車すると、後部座席のドアが空いて、ひらりと辻がやってきた。
「やあ!」
「先生、やあじゃないですよ。心配になるじゃないですか。。。」
「どうやって乗車するのが1番目立たないか考えてね、。明日からはもう少し考えてみるよ。」
注意したというのに、お構いなしと行った顔で楽しそうにしている。
「先生、私先生に感謝をしなくてはいけないわ。手紙本当に感動しました。」
「そう言われると、恥ずかしいなあ。僕はね、滅多にラブレターなんて書かないんだよ。だからあれがラブレターになるかどうかもわからずに書いた次第だよ。」
「先生の気持ちがとてもこもっていて。。私にはまだ到底かけません。お返事が書けなくてごめんなさい。」
「あなたはすぐに文章を書くことにも慣れて行くでしょう。僕は荒削りなあなたの文章もぜひ拝見したいところですがね。」
「そんな、、、練習できたらいつかお渡しします。先生、私本当に望月の家に弟子に入れて嬉しいです。」
「そうだろう。アレはアグリくんの成せる技だね。弟子を家族同然に扱うなんて、とても西洋的じゃないか。」
「私がいつか立派な職業婦人になったら、アグリさんみたいな先生になりたいです。」
「アグリ君はまだ発展途上だよ。目標にしていたらどんどん離れていくから、追いつく勢いで行くといい。」
櫻は辻に抱きついた。
「おやおや、君からそんな芸当が出てくるとは驚きですよ。」
「私、本当に頑張ります。先生、離れていかないで」
いつになく不安になって居る櫻を辻は心配した。父親が上京することに関して恐ろしいのだろう。
「僕は、僕のやり方で君を守ると言ったじゃないですか。面と向かってあなたのお父様に恋人ですなんて無粋なことはしませんよ。」
「でも、どうやって父を。。」
「まあ、カラクリは終わった後のお楽しみでおいいじゃないですか。安心して望月君のお店で働いてください。」
櫻は不安が増していくのが自分でもわかっった。でも、辻は今まで重要なことで嘘をついたことはない。
父と辻が対峙したらどうしようと頭の中でぐるぐる駆け巡った。
「さ、つきましたよ。」
不安であったために、強めに抱きついていたらしい。
「は、!ごめんなさい。」
「いいのですよ。たまには甘えん坊なあなたも可愛らしい」
「先生!もう!」
櫻は車を降り、アグリ洋装店へと向かった。先程まで重かった足が少し軽くなった気がした。
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