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第六章 愛を確かめ合う関係

2、望月の気遣い

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「ねえ、淳之介、今日は何時から櫻くんの家庭教師なの?」
望月が午前中にリビングで聞く。
「1時から4時までだよ。どうして?」
「今日は3時までにして、その後の時間、お父さんに貸してくれないかな?」
「あ!お父さん、浮気しようとしてる?」
「そんなことはないよ。お父さんの心は常に、お母さんにあるさ。」
「お父さん、軽薄そうだから心配だなあ。本当は何するの?」
「櫻くんの会いたい人に会わせたいんだ。ちょっと驚かしてね。」
「それって、櫻先生にとてもいいこと?」
「ザッツライト!そのとおりだよ。だから、ちょっと貸してね。」
「いいよ。僕は読みたかった本の続きを読んでみるよ。」
「ああそうそうるといい。本は君を無限の世界へと連れて行ってくれるよ。」
「お父さんみたいに書けるようになるかな?」
「書いてみたいのかい?」
「うーん、わからないけど、洋装店よりお父さんみたいに本に載って書いてみるって憧れるよ。」
「軽薄な父が褒められているのも一興だね。ハハハハハハハハハ。」

と言うことで、櫻の予定は3時から望月と出かけることになった。
「どちらにいくんですか?」
「出版社だよ。興味あるでしょ?」
「はい。でも、アグリ先生の確認しないでよろしいんでしょうか?」
「アグリには後で僕が謝っておくよ。僕の一存だからね。」

望月は車を呼び、新橋までやってきた。

出版社の社屋の前に、見慣れた男性の姿がある。
「やあ!櫻くん、久しぶりだね!」
間違いない。あれは辻先生だ。
「先生!なんでここに。。。」
「僕が前もって望月に頼んだんだよ。もし会えなくてもそれはそれ。」
望月が近づいてくると、こう言った。

「では、お二人の時間をお邪魔するのもなんだから、坂本さんの車に1時間ほどいるといいよ。僕はついでに出社してくるよ。」
そういうと、望月は会社の中に入っていき、櫻と辻の二人が道に残された。


「先生、、心配しました。」
「おお。それは嬉しいですね。私は心の中のあなたといつも一緒に入れて楽しかったですが、実物以上ではありませんね。」
「もう、変なことばかりおっしゃる。私は一人ですよ。」
「僕は君が好きすぎて君を心の中に飼ってしまったんだよ。そこも理解して欲しいね。」
「先生、私、本当に。。。。。」
櫻は泣いてしまった。
悲しかったわけではない。嬉しかったからだ。
「さあ、車の方へ行きましょう。僕が女性を泣かせてる姿を見せつけるのもいいですがね。」
「もう!先生ったら。。。」
二人は肩を寄せながら車へと向かった。そして蜜月の時を過ごすこととなる。





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