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第六章 愛を確かめ合う関係

8、絡繰研究

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辻は、櫻と別れてから学校へ向かった。
夏休みとはいえ、交代で学校の当番もあるし、絡繰の研究もしたいと思っていた。

「あら?遅いご出勤で。辻先生、ご機嫌いかが?」
ベテランの女性教師、森田が話しかけてきた。
「僕のようなフラフラした教師もダメですね。」
「でも、先生、生徒に大人気でらっしゃるじゃないですか。絡繰クラブなんて二学期になったらまた増えるんじゃあないですか?」
「ちゃんと勉強をしてくれる生徒が増えてくれると嬉しいんですがね。」
「とは言っても、この銀上女学校は嫁入り前の箔をつける学校ですからね。」
「森田先生はどちらのご出身ですか?」
「私は、相模の方の女学校出身で。叔父がこの学校と懇意していたので採用していただきました。」

十人十色といったものだが、森田にも森田の苦労がありそうだった。
しかし、他の女性と長い話をすると言うのもあまり今は趣味ではない。

「しかし、森田先生も頑張っておりますね。僕は研究室に行って、論文書きでもします。では失礼。」


研究室についた。
研究室で、櫻と愛し合ったことをふと思い出す。可愛いあの子をどうしたらいいのだろうか。
実物に会ってみると、やっぱり毎日会いたいと言う気持ちも出てきてしまった。
しかし、こうやって離れている時間はあった時の可愛い櫻を思い出し、ニコニコしてしまう自分もいる。

アグリも思っただろうが、櫻は本当に不思議な子だ。
いや、自分と櫻が融合すると未来が見える不思議な反応をする気がする。
なぜなら、大学の研究室で煮詰まっていたカラクリ研究が教師をしているこの瞬間の方が捗るのだ。
未来がどうなっていくのか、どんどんと頭の中で広がっていく。
櫻がみた僕らの子供はどんな子供に育つのだろう。
僕は、子煩悩に育てるのだろうか。
自分自身もその子供と話してみたいと思った。いや、数年、数十年すれば会える。
それを楽しみに、今は櫻の可愛い笑顔を思った。
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