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第六章 愛を確かめ合う関係
19、憂いの夜
しおりを挟む家に帰ると思うことがある。辻は孤独と自由について考える。
自分の周りには常に孤独があった。だから、それと引き換えに自由があると思っていた。
しかし、櫻といると、果たして自分は孤独という名の自由を誇示できるのだろうかと。
自由が自分を動かしてきた。なぜ他人が孤独を楽しまないのかわからなかった。
しかし、学生時代に友と戯れあったりしていたのも一種の孤独を回避した行動だったのかもしれない。
望月の家に二人目の子供ができると知った時、自分は櫻といつどうなりたいのか考えた。
櫻を辻の家に入れるには、それ相応の身分をまとわせなくてはならない。
あの父が名のない農家の娘を嫁に許すわけがないと思う。
ふと、辻は思い立って筆をもった。
「僕の中の僕へ
君は何にどうしてそんなに悩んでいるのかい?
好きな女性ができたのいうのは喜ばしいことじゃあないか。
先のことを羨むことが果たして得策か?
今ある現実を楽しむのが、君のダダイズムだったじゃないか。
そこに矛盾が生じたってそれがそれ。
人を楽しませることだって、自分が楽しむことだってそれは許される。
今までだって、コジキのフリをして、人から笑われたり、
バカなフリをして、女性から嫌われたりしただろう。
素敵な女性との出会いは君を自由にさせる。
その女性に出会ったのは奇跡じゃあないか!
誰がその女性のことを疎んじたって、君にとっての王女なのだ。
その国の法律は二人で決めればいい。
立憲君主制だよ。
王様と女王様の二人で切り開いていく、人生。
それも面白いじゃあないか。
中々、君に伝えたいことがうまく伝わらなくたって、それが僕だ。
本当に向き合えば、道は切り開ける。
ハハハと笑い飛ばそう。
T」
書いてみて、すっきりとした。
辻にとっての思い。駄文かもしれないが、これが今のダダだ。
月がぼんやりと光っている。
同じ月を櫻も観ているだろうか。
毎晩同じ月を見たら、愉快だろうな、と
思いつつ、筆を置いた辻は布団に入って眠りについた。
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