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第七章 新しい夢探し

9、久しぶりの逢引き

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トントン。
「だあれ?」
淳之介が聞く。
「辻だよ。遊びにきたよ。」
「わあい!辻さんだ!」
辻がドアを開けて、淳之介の部屋に入ってくる。
「辻さん、いっぱいいっぱいお話したいんだ!」
「そうだな。おじさんもたくさん、淳之介とお話ししたいんだけど、ちょっと櫻さんとお話しさせてくれるかな?」
「辻さん、櫻先生知ってるの?」
「櫻さんは僕の学校の生徒でね、ここの家を紹介したのも僕なんだよ。」
「僕、何にも知らされてなかったよ!櫻先生ほんと?」
「そうですよ。辻先生には本当にお世話になってます。」
「じゃあさ、僕、下に行ってお母さんのお手伝いしてくるから、すぐに下に来てよ!」

淳之介はそういうと、部屋を出ていった。
「先生、ちょっとだけ久しぶりになりましたね。」
「うん。でも、望月から君のことは聞いていたよ。」
「そんな。私まだ他の方の文章を直したりする校正というお仕事させていただいたばかりで、お役に立っているか、、、」
「役に立つかどうかじゃなくて、君がどう成長するかどうかだから、そんなに気張らなくていいさ。何か良かったことはあったかい?」
「はい。私と同じような境遇にいる方た主人公の短編、通りさんという方が書いたものを読んで感動してしまって。」
「ほお。そんなに面白かったかい?」
「先生も、次号が発売になったらぜひ読んでください。働く若者には本当に素敵な小説です。」
「それは楽しみだね。君自身も小説を書いてみたくなった?」
「うーん。私は頭の中にある物語っていうものがないのです。だから、逆にインタビューとか取材とかそういうのを今はしてみたいです。」
「好奇心、かな?」
「はい。私、編集部の雰囲気だけでワクワクするんです。」
「君に新婦人社を勧めて良かったね。富田編集長は本当に尊敬できる人だしね。」
「私も富田編集長みたいなモダンガールになりたいです。」
「モダンガールになったら、君はいろんな人にふりかえられるだろうね。」
「どうして?」
「君はまだ原石だ。夢に向かって走り出したんだね。嬉しいよ。」
「はい!」
二人は笑い合った。
少し手を握って、抱き合った。
「さて、下に行って、皆さんと合流しますか。」

ここは望月邸。淳之介の部屋で逢引なんてダメだとわかっているが、櫻はちょっとムクれた。。
辻はささっと出て行ったのでそんな表情は知らない。
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