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第十一章 櫻の冬休み

17、執筆について

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櫻の残された冬休み一週間は洋装店で事務と出版社での仕事となった。

仕事に慣れてきて思うことだが、自分はまだまだだなと思う事だった。
富田編集長のような人になるにはどうすればいいか、そう考えたりした。

「ねえ、江藤さん、ちょっとティータイムしない?」
富田編集長が、仕事中に誘ってくれた。
「はい、でも私だけいいんですか?」
「タイピストの人たちには今日は長めに昼休みにしてもらったしね。」
そういうと、もう紅茶を持ってきてた。
応接セットに腰をかける。

「富田編集長、こんなお休みいただいてすみません。」
「え、いいのよ。営業さんなんて、一社回ったら、喫茶店でタバコ吹かしたりしてるんだから。」
「そうなんですか?」
「そう。オフィス仕事ってなかなか時間を作るのが難しいでしょ?」
「ずっとお仕事しているものだと思ってました。休憩と手洗い以外。」
「それがね、ちょっと全時代的なのよね。」
「全時代的?」
「男の人はもっと自由でしょ。ここは私が1番トップだからどうしても変えたいって思ってるんだけどね。」
「男女が平等に働ける時代になるといいですね。」
「多分だけど、江藤さん、あなた平等に働くようになると思うわ。」
「え?」
「あなたね、自分の仕事以外のこと、結構把握してるでしょう?」
「あ、でも、全部はわかってないと思います。」
「前にね、あなたがタイピストに話しかけてるとこ見たのよ。」
「そんなことが」
「その時に、どんな仕事で何をサポートすればいいか聞いてた。」
「奉公していた時、そうだったので。」
「でも、普通は他の人の仕事、聞かないわよ。」
「すみません。」
「ううん、褒めてるの。あなたが、とても優秀な編集員だってこと。」
「でも、私まだ見習いで。」
「あなた、本当に、文筆の世界に入った方がいいと思う。」
「え?」
「あなたの訂正文、いつも正確だし。心が入ってる。」
「そんな。。。。」
「何か書きたいものあるんじゃない?」
「あるにはあるんですが、経験がなさすぎて。」
「何の経験?」
「活動家に憧れてて。」

ふと、富田編集長がカップを置いた。
「活動家になるのは、少し先の未来だと思った方が本当にいいわ。」
「承知してます。お嫁に行くためには。」
「わかってるのね。まだ、女性がするには危険すぎる。」
「はい。。。」
「でもね、うちの編集部、ゴーストライターとしても全然募集中なの。」
「ゴーストライター?」
「名前を偽って書くのよ。だからこそ自由にかける。例えばだけど、女学校のいいところとかかけるかしら?」
「女学校のいいところ?」
「そう。女学生じゃないとかけないような。」
「はい。ちょっとお時間頂きますが、書いてみます。」

すぐに返事をしてしまったが、後悔はしていなかった。
そして、その日の夜からキーワードを見つけては書くことが櫻の日課になった。
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