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第十四章 望月家からの旅立ち

19、友人への告白

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櫻は宴の翌日、これだけはしなくてはという思いで、学校へ行った。
上野和枝に告白することだ。

学校の教室に入ると、和枝はもうきていた。

「あら、櫻さん、今日は遅かったのね。」
「うん。ちょっと昨日夜更かしして。」
「珍しい。でもあとちょっとでこのクラスも終わっちゃうのも寂しいわね。」
「それで、和枝さんにお話があるの。」
「今がいい?それとも放課後?」
「まだ始業まで20分あるから人に聞かれにくい図書室でお話ししてもいい?」
櫻は和枝に提案した。

「うん、いいわよ。」

二人は和やかに移動した。
図書室には先客もおらず、万が一を考え、ドアの見えるところで話すことにした。

「あのね、」
櫻が切り出した。
「どうしたの?」
「和枝さんに言っておかなければいけないことがあるの。」
「何?深刻なこと?」
「ううん。その反対。」
「じゃあ、いいわ。ぜひ聞かせて。」
「実は、私、4月から養女に行くことになったの。」
「え!!!」
「あ、あの声。。」
「だって、櫻さんびっくりさせるから。。。」
「ごめんなさい。」
「ううん。いえ、怒ってないわ。でも急ね。」
「はっきり決まったのが先日で。それまで本当に養女に行けるかわからなくて。」
「でも、どうしてこの歳になって養女に?」
「縁があって、素敵な父になる方に貰われることになって。」
「差し支えなければ、どちらに行くの?」
「他の方に言わないって約束してくれる?」
「もちろんよ。」
「佐藤支店長と言って、辻百貨店の本店の方。」
「あら!私も知ってるわ。私の父が会合で会ったことがある方だと思う。」
「有名なのね。」
「そりゃ、あの辻百貨店だからね。え、辻先生関係ある?」
「え?それは関係ない。」
櫻は咄嗟に嘘をついてしまった。
「どうして出会ったの?」
「今、お世話になってるお家の関係で。」
「そうよね。実家は秩父だって言ってたものね。」
「じゃあ、東京の女になるんだ。」
「そう言われてみれば。」
「櫻さんてそういうの抜けてて、私好きよ。」
「ん?」
「とりあえず、新しい家を頑張って。」
「ありがとう。」
「でも、私、話してくれて嬉しいわ。」
「本当?」
「私だけでしょ?」
「うん。」
「親友ね。」
「私も嬉しい。」

二人は握手した。
それは友情の証であった。
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