303 / 419
第十六章 最終学年
24、学校にて
しおりを挟む
学校に翌日行った。
櫻はあの出産の興奮がまだ続いていた。
今まで奉公していた家で感じた思いとは別であった。
「櫻さん、どうしたの?」
上野和枝が聞いてきた。
「ああ、昨日、お世話になっているかたが出産して。」
「あら?私のお姉さまももうすぐ出産なの。」
「そうなの?」
「そう。うちは婿養子に来てもらってるから、うちでなのよ。」
「知らなかった。」
「ああ、姉とは特に仲が悪いわけじゃないんだけど、かといって仲がいいわけじゃなくてね。」
「どうして?」
「姉はね、とても有能な方を婿に取ったの。本当は思う方がいたのに。」
「それで、和枝さんとどう関係あるの?」
「私、姉から聞いてたのに、味方にならなかったの。」
「え?」
「姉の思う人は長男だったし、家柄もない方だったから。両親に反対されることは見えたし、姉が苦労すると思ったから。」
「和枝さんがその立場だったらどうする?」
「姉の立場だったら?」
「うーん。私ね、思いこがれるような恋愛はしたことがないの。」
「そうね。自由恋愛の学生は少ないものね。」
そう言いながら、櫻は後ろめたい気持ちになった。
「まあ、お姉さまは結婚して子供もできて、いいと思ったんだけど、ため息してるし。」
「その結婚は良かったか、迷ってるのね。」
「うん。」
「和枝さんは何も悪いことしていないと思う。」
「え?」
「だって、それってご両親が決めたことだし、お姉さまもどうしてもだったら駆け落ちだってできたわけだし。」
「駆け落ち?」
「うん。」
「櫻さんて時々ドッキリするようなこと言うのね。」
「どうして?」
「家を捨てるって大事よ。」
櫻は言えなかった。自分が家を逃げるように出て東京に来たことを。
今、佐藤のお嬢様でいることが奇跡ということも。
「でも赤ちゃんが生まれたらお姉さま変わるかもしれないわ。」
「そう思う?」
「うん。昨日、生まれたばかりの赤ちゃんにあったけど、本当に可愛かった。」
「じゃあ、私出産の日は休もうかしら?」
「もし、お姉さまが許すのであればそうしたら、心強いんじゃない?」
「そうするわ。櫻さん、ありがとう。」
「どうして?」
「だって、後押ししてくれたから。」
「ううん。きっといいことが起きると祈ってる。」
上野の悩みは知らなかったが、櫻の過去は親友といえど話せない自分が後ろめたかった。
勉強に集中しなければと思ったのに、それができない、櫻であった。
櫻はあの出産の興奮がまだ続いていた。
今まで奉公していた家で感じた思いとは別であった。
「櫻さん、どうしたの?」
上野和枝が聞いてきた。
「ああ、昨日、お世話になっているかたが出産して。」
「あら?私のお姉さまももうすぐ出産なの。」
「そうなの?」
「そう。うちは婿養子に来てもらってるから、うちでなのよ。」
「知らなかった。」
「ああ、姉とは特に仲が悪いわけじゃないんだけど、かといって仲がいいわけじゃなくてね。」
「どうして?」
「姉はね、とても有能な方を婿に取ったの。本当は思う方がいたのに。」
「それで、和枝さんとどう関係あるの?」
「私、姉から聞いてたのに、味方にならなかったの。」
「え?」
「姉の思う人は長男だったし、家柄もない方だったから。両親に反対されることは見えたし、姉が苦労すると思ったから。」
「和枝さんがその立場だったらどうする?」
「姉の立場だったら?」
「うーん。私ね、思いこがれるような恋愛はしたことがないの。」
「そうね。自由恋愛の学生は少ないものね。」
そう言いながら、櫻は後ろめたい気持ちになった。
「まあ、お姉さまは結婚して子供もできて、いいと思ったんだけど、ため息してるし。」
「その結婚は良かったか、迷ってるのね。」
「うん。」
「和枝さんは何も悪いことしていないと思う。」
「え?」
「だって、それってご両親が決めたことだし、お姉さまもどうしてもだったら駆け落ちだってできたわけだし。」
「駆け落ち?」
「うん。」
「櫻さんて時々ドッキリするようなこと言うのね。」
「どうして?」
「家を捨てるって大事よ。」
櫻は言えなかった。自分が家を逃げるように出て東京に来たことを。
今、佐藤のお嬢様でいることが奇跡ということも。
「でも赤ちゃんが生まれたらお姉さま変わるかもしれないわ。」
「そう思う?」
「うん。昨日、生まれたばかりの赤ちゃんにあったけど、本当に可愛かった。」
「じゃあ、私出産の日は休もうかしら?」
「もし、お姉さまが許すのであればそうしたら、心強いんじゃない?」
「そうするわ。櫻さん、ありがとう。」
「どうして?」
「だって、後押ししてくれたから。」
「ううん。きっといいことが起きると祈ってる。」
上野の悩みは知らなかったが、櫻の過去は親友といえど話せない自分が後ろめたかった。
勉強に集中しなければと思ったのに、それができない、櫻であった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる