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第十六章 最終学年

95、女性として生きるとは

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翌日の放課後はノアの家庭教師の日だった。
ピアノも本当はいっぱい弾きたいのだが、受験もあるので外国語のレッスンが中心である。


「ノア先生?」
「はい、櫻、なんですか?」
「私、いろんな国の言葉覚えるの好きです。」
「それはいいことです。」
「特に、フランス語は好きです。」
「どうしてですか?」
「男性名詞、女性名詞ってあるから。」
「ああ、椅子は女性、テーブルは男性ですね。」
「私、何もかも同じがいいって思ってるんじゃないんです。」
「そうですね。男の人はそもそも出産しないですしね。」
「ノア先生は子供を産んで、女性として生きること、好きですか?」
「はい、とても。」
「理由が知りたいです。」
「お腹の中に赤ん坊がいたときはとても幸福な気持ちになりました。」
「素敵ですね。」
「でも、流産しそうになりました。」
「初めて聞きました。」
「そう。無事に生まれてきたけど、そこまでは大変でした。」
「ご主人は?」
「ご飯を作ったりしてくれましたよ。」
「男子厨房に入らずの人じゃないんでしたよね。」
「そう。日本は昔風すぎますね。」
「でも、子供を持って、女性として生きていくのはしんどくないですか?」
「しんどい?」
「ああ、辛いっていうことです。」
「いいえ、子供はみんなで育てればいいのです。」

その言葉を聞いたとき、櫻は目から鱗だった。
もちろん、お金持ちの家だったら女中などがいるだろうが、普通は母親が子供を育てなくてはならない。

「ノア先生は女中さんいないですよね。」
「はい。」
「でも、みんなで育てるって。」
「主人も、主人の親や兄妹、近所の人もいます。みんなチームです。」
「そういう考え方してこなかったから、なんだか驚きました。」
「そう?」
「私、結婚したら働いたり、育児に専念したりってなんだかぼんやり考えられなくて。」


ノアがふっと息を吐いた。
「そう。でも、女性の特権をありがたく受け取って生きていくのが自然だとノアは思います。」
「ありがたく受け取っていく?」
「そう。子供といられる時間、仕事を邁進できること、女しかできないこと、この世の中にはたくさんあります。」

櫻はそう言われると、なんだか腑に落ちた。
男性ばかりずるいと思っていたからだ。


「だから、勉強しましょう。女性らしく。」

ノアはニコニコ微笑んで言った。
その言葉は櫻の心に突き刺さった。
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