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第十六章 最終学年

98、That's Life

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櫻は望月から伝言を聞いた。

「あのね、櫻くん、」
「はい。」
「大杉くんと会うのはちょっと先になるってさ。」
「え?」
「学校帰りに急に言われて困った?」
「いえ。。。」
「櫻くんは大杉くんに心酔してるもんね。」
「あの、心酔は思想にであって。」
「わっかってるよ。でも辻くんも気が気じゃないだろうね。」
「どうしてですか?」
「あのね、坂本さんが色々調べていたら、大杉くんを探る探偵を見つけたんだって。」
「探偵?」
「そう、特高じゃなくてね。」
「なんで今更探偵なんて。」
「そう、変だろう?」
「でも、誰なんでしょう?」
「僕ね、わかっちゃったんだ。」
「え?」
「探偵くんと友達になっちゃった。」
「本当、望月さんて神出鬼没ですね。」
「もっと褒めてくれよ。」
「あのですね。でも、それが僕の生き方だから。」
「生き方?」
「ザッツライフ」
「英語にしてカッコつけて。。。」
「ま、僕のよくしてくれる置き屋の芸妓にお熱の人だったんだ。」
「ああ、それで。」
「まあ一席設けて、聞いたんだよ。大杉くんのことをそれとなく。」
「守秘義務をよく聞けましたね。」
「そりゃ、惚れてる女がいて、酔っ払ってたら男は弱いよ。」
「それで、誰だったんですか?」
「そう、依頼主はね、若葉先生だよ。」
「え!」
「大声ださない、櫻くん。」
「あ、ちょっと、ていうかだいぶ驚いたので。」
「そうだよね。そういうわけでさ。」

と、言いかけて望月は話すのをやめた。
櫻も望月の言葉を待った。
車はどんどんと進んでいく。


「櫻くんはどう思う?」
「怖いです。」
「まあ、そうだよね。多分、辻くんと大杉くんが通じてること、若葉先生は知ってるよ。」
「え?」
「まあ、落ち着いて。でも、核心までいっていない。だから探偵だよ。」
「どうなっちゃうんでしょうか?」
「ああ、探偵さんにはよく言い聞かせたから、若葉先生には櫻くんのことは知られないよ。」
「はあ、良かった。でも、どうやって?」
「今月で引き上げてくれたら、倍の料金を払うって言ったのさ。」
「え?」
「ああ、これは辻くんから言われてたんだ。」
「倍のって。。」
「君たちの将来を考えてだよ。」


櫻は自分を恥じた。
でも、大杉とはきちんと話してみたい、本当は。
ザッツライフ。。。
意味は、「それが人生だ、仕方ない。」
今は受け入れることが最善だと櫻は受け止めた。
それをみた望月は少し心が痛んだ。
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