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第十六章 最終学年

108、39度

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櫻はその日、寝冷えがあったのか、体から寒気がして目が覚めた。
いつもは早起きな櫻が起きてこなかったので、ナカが部屋をノックした。

「櫻お嬢様、いいですか?」
「あ、えっと、調子悪くて。」
「入りますよ。」


ささっと櫻の部屋に入ると、寝ている櫻のおでこを触った。

「櫻お嬢様、熱あるじゃないですか?」
「え?」
「体温計持ってきますね。」

こんな晩夏でも風邪を引くことがあるなんて。

その後、ナカが熱を測ってくれると39度の熱があった。

「咳も酷くないし、学校はお休みにしてあったかくしましょう。まず着替えですね。」
手際よく、体を拭いて、浴衣を着せてくれた。


「あの、本当にありがとうございます。」
「櫻お嬢様、何度も言うけど、これが私の仕事だから、何も気にせんで。」
「でも。」
「病人は口答えしちゃならんですよ。」

そう言って、部屋を出て行った。
どうやら玄関に来た望月に今日は休むことを伝えてほしいと伝言しているのが聞こえた。


受験があると言うのに、私は何をしているんだろうか。
父は今日は早いと言っていたので、櫻のことは知らない。

こう言う時の望月に感謝した。

「あの、」
看病に氷枕をかえにきたナカに話しかけた。
「はい?」
「こんな時期に風邪ひくんでしょうか?」
「そりゃ、朝晩冷えますからね。」
「私、今まで風邪一つ引いたことなくて。」
「多分、気が張り詰めてたんでしょうね。」
「え?」
「お嬢様がご苦労された話は聞いてますし、うちの女中よりもっと厳しいところにいたことも。」
「うーん。どうなんでしょう。」
「だから、気にしないでください。」
「え?」
「生きていれば、風邪なんてひくし、誰かに看病してもらうなんて持ちつ持たれつですよ。」
「それは。」
「私だって風邪ひきますよ。」
「ナカさんも?」
「その時は他の女中が実家に帰っていたら、櫻お嬢様お願いしますね。」
「もちろん。」
「そう言う気持ちでいればいいんです。」

そういうと、部屋を出ていき、昼にはお粥を食べさせてくれた。

いつの間にか櫻は寝てしまっていた。


気がつくと、ベットの横に辻がいた。
「え?先生?」
「あ。起きちゃった?」
「はい。というか自然に。」
「気にしないでと言っても気にするだろうけど。」
「はい、気にします。」
「坂本の計らいで、記者を巻いてこちらにきたんだ。」
「さすがですね。」
「まあ、39度もあるなんて聞いたら心配になるさ。」
「でも、さっき測ったら下がってました。」
「熱は甘く見ちゃいけないよ。」
「はい。」
「でも、熱のおかげで会えた。」
「そうですね。」
「櫻くんの熱に感謝だね。」

櫻は体から発するこの熱がこの恋から来るような気がして、少し嬉しくなった。
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