ゾンビBL小説の世界に転生した俺が、脇役に愛され過保護される話。【注、怖くないよ】

いんげん

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小説の主人公

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中庭に行った豹兒が帰ってこない。
しかも、なんだか言い争うような声が聞こえてきて、不穏な感じだ。
心配になって金網に齧り付くように近づいて、豹兒の名前を呼んだ。

そして少しすると、屋上の扉が開き、ジフがやって来た。いつも、この屋上の扉を、俺以外の皆が頭を下げて入ってくるのが、ちょっと悔しい。俺以外、全員が高身長で、俺がいなかったら高身長インフレで誰もデカく見えないやつだよ。

「おい犬、客だぞ」
俺がジフの元まで駆け寄ると、後ろからはジフよりも大きな男が現れた。
「あー!人間ゾンビ!」
つい、くちから言葉が飛び出してしまい、指までさしてしまった。
男は、目を見開いて驚いている。
その顔も、とても秀麗だった。
何なの?BLって美しい男選手権で各ジャンルに優勝した人間しか配属されないの?この人完全に、正統派美形のジャンルで天辺とっているよね?ビジュアルに文句を付けられる所が一カ所も無い。
細くて高い鼻、俺の丸っこい目と違う、男らしいくっきりした切れ長の目は何故か潤んでいるし、少し微笑んでいる形の良い唇から覗く歯並びも完璧だ。歯医者なんてもう無いだろうに。
色素が薄い黒髪は、日光の元では濃いめの茶色に見える。前髪は眉にかかるくらいの長さだけど、全体的に短めで、とても爽やか。
本当に同じ人間なのかと思う完璧さ。豹兒やジフだって背が高いし足が長いけど……この人、長過ぎじゃない?股下から向こう側の世界見えちゃっているよ!
えっ、もと短足の俺からしたら、足長過ぎ罪で無期懲役だよ!その履いているズボンが、若干くるぶし見えているのは、ぜったいサイズが無いからだろう。でも……それすらも、オシャレなクロップドパンツにしている……虫に刺されると良いと思う。

「人間…ゾンビ?」
うわ…声まで良い声しているよ。
なんだろう、この完璧な主人公感は……ん?
主人公感!?
「あっ……あ……ああああ!!」
俺は、叫んだ。目の前のジフと彼がビックリするくらい、デカい声で叫んだ。

主人公じゃん!
この、完全無欠の美形、屍街世界の主人公の蒼陽(ソウヒ)じゃないか。

「蒼陽!蒼陽!!」
思わず、俺が蒼陽に向かって名前を叫ぶと、蒼陽は凄く泣きそうな顔をして、俺に抱きついた。
身長差が大きいから、彼の胸に顔が押しつけられ、太い腕が後頭部で絡んでいる、
「芳親!……よかった……芳親!生きてた……芳親!!」
蒼陽が、俺の頭上で泣いている。
縋り付くように抱きしめられて、困惑する。
「ごめん……今まで、探せなくて……ごめん。でも……良かった……本当に……」
蒼陽から零れ落ちてきた涙が、俺の耳に降ってきた。
「あ…あの!」
「ポチ!」
ソロソロ離してくれないだろうか、と思っていたら、やって来た豹兒に引き剥がされた。
掴まれて引かれた肘がちょっと痛い。

「……犬、お前……記憶が戻ったのか?」
ジフが俺の前で荒れた手を振っている。
「えっ?いやぁ……記憶は……無いけど。わかる。この人は蒼陽。強くて優しい。お花好き」
俺は原作知識を披露してしまってから、まずいっと思った。
初対面じゃん!いや……この蒼陽の反応を見る限りでは、俺達は知り合い?
「芳親……」
潤んだ瞳で、満面の笑みを浮かべ、蒼陽が頭を下げて俺の手を取った。うわぁ……目の前に蒼陽の美しいお顔……破壊力抜群だ。これか、これが主人公の力なのか、ドキドキするぞ。
「えっと……」
蒼陽の手は凄く大きくて、俺の手はすっぽりと包まれている。
「犬、お前の昔の知り合いらしいぞ……豹兒……お前、殺気やめろ」
「……」
俺の手を掴む蒼陽に、肘を掴む豹兒の肩を抱いたジフ……なんだこの連結。そして、レッドは何故鼻の穴を広げてコッチをみているの?

「君が赤ちゃんの時から、ずっと一緒に居たんだ。君の名前は、芳親。俺の事……少しでも覚えててくれて嬉しい」
俺の手を大事な宝物のように包み込み、目を閉じて幸せそうに微笑む、蒼陽。
その姿は、胸を打たれるものがあった。
「……」
俺って、転生というか……成り代わりの転生だったのか?もしかして4巻以降に出てくるキャラクター?それとも、主人公の昔の知り合い程度のモブ?
何だとしても、何だかしっくり来ない。
ここがBL小説の世界みたいなのは承知したけど、自分までその小説の中のキャラクターの一人だとは、中々認められない。だって、俺が持っている現代の平和な記憶が嘘になるみたいで、自分を否定されたみたいで…。

「あ…あの……」
あなたたちは小説のキャラクターで、俺は違う。この発言は、そういう傲慢な発言なのだろうか?
でも、この人達を架空のキャラクターだとも、もう思っていないのだけど……今の俺にとって、この人達も、生きている一人の人間だから。
あーもう!頭が、ぐちゃぐちゃになってきた。

「俺、ポチって言います。ポチって呼んでください」
眉を寄せて、出来る限り格好いい顔をしたつもりで、蒼陽と目を合わせた。
蒼陽の目が丸くなっている。微笑みながら首を傾げる顔から、優しいオーラが溢れ出てて……奥歯をぐっと噛みしめて耐える。主人公の恋の罠には引っかからない!!あぁ…爽やかに素敵すぎるだろ!なぜ、人類の女性滅んでしまったんだ……。

「そうか……はじめまして、ポチ。俺は、蒼陽です。今日から、友達になって貰える?」

だ…駄目だ!!なんなの、この青年は。
その笑顔反則でしょ。歯並び良すぎ、目が輝きすぎ。声が体に響きすぎ!

「ならない」
「豹兒!おい……今は黙っておけ…」
どうどう、とジフが豹兒の肩を叩いている。

「う…うん。よろしくお願いします」
蒼陽に真剣に見つめられて、恥ずかしくて、ちょっと視線を逸らして答えた。

「……さっさと、手を離せ」
「豹兒!」

俺は、わちゃわちゃしている豹兒とジフ、なぜか悶えているレッドを見ながら、少しの不安を抱いた。
もしも、このまま原作のように進んでいったら、レッドが死んで、ジフが死んで、豹兒は一人になってしまう。そんなの絶対に嫌だ。

だから……だから……

どうしたら良いのだろうか。

あぁ、考えないと……彼らを守る方法を!

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