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涙の夜と、とろけるファーストキス
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優斗さんと次に会う約束をした週末。
あたしは、柄にもなく、何を着ていこうか、どんな髪型にしようか、前日の夜からずっとそわそわしていた。彼氏に会う時なんて、もうずっとこんな気持ちになったことなかったのに。
(あたし、完全に浮かれてるな…)
でも、その気持ちに蓋をすることは、もうできなかった。
金曜の夜だというのに、彼氏から一通のLINEも来ない。
しびれを切らしてあたしから電話をかけると、聞こえてきたのは知らない女の人の声だった。
頭が、真っ白になった。
震える手で優斗さんに送ったLINEは、たった一言。
『今すぐ会えますか?』
すぐに既読がついて、『駅前で待ってる』と返事が来た。
駅前のロータリーに着くと、彼はもうそこに立っていた。心配そうな顔で駆け寄ってくる。
あたしは、彼の顔を見た瞬間、堪えていた涙が堰を切ったように溢れ出した。
「…ごめん、なさい…っ」
「ううん、大丈夫だから。何も言わなくていいよ」
彼は何も聞かずに、あたしの背中を優しくさすってくれた。
その温かい手のひらから伝わる優しさに、余計に涙が止まらなくなる。
少し落ち着いたところで、彼はあたしを静かなバーに連れて行ってくれた。
カウンターだけの、薄暗い照明が心地いいお店。
「…彼氏、浮気してたの。電話かけたら、女の人が出て…。だから、別れてきた」
ぽつり、ぽつりと、途切れ途切れに話すあたしの言葉を、彼はただ黙って聞いてくれた。
「そっか…」
低い、優しい声。
「あたしが、魅力ないからかな…。セックスの時も、あたし、全然感じられなくて…、つまんない女だって、思われてたのかな…っ」
自分でも気づかないうちに、ずっと心の奥底に溜め込んでいた不安が、言葉になって溢れ出す。
「そんなこと、絶対にない」
優斗さんは、あたしの言葉を強い口調で遮った。
「ミカちゃんが感じられなかったのは、ミカちゃんのせいじゃない。相手の男が、ミカちゃんの魅力に気づけなかっただけだ。ミカちゃんを、気持ちよくさせられなかった、その男が悪い」
まっすぐに、あたしの目を見て言ってくれる。
その力強い言葉に、心が震えた。
誰も、そんなこと言ってくれなかった。
あたし自身でさえ、自分が悪いんだって思い込んでたのに。
「ミカちゃんは、すごく魅力的だよ。可愛いし、優しいし、話してるとすごく楽しい。俺は、ミカちゃんといると、いつも幸せな気持ちになる」
(あたしが、魅力的…?)
彼の言葉は、魔法みたいだった。
自己肯定感が地の底まで落ちていたあたしの心を、ゆっくりと、でも確かに、掬い上げてくれる。
「泣き顔も可愛いけど、やっぱりミカちゃんは、笑顔が一番だよ」
そう言って、彼はあたしの涙で濡れた頬を、指先でそっと拭ってくれた。
その優しい手つきに、胸がぎゅっと締め付けられる。
(ああ、もう、だめだ)
彼氏と別れたばかりで、こんなこと考えちゃいけないってわかってる。
でも、もう、この気持ちを誤魔化すことはできない。
あたしは、覚悟を決めた目で、彼を見つめた。
「…あなたの、家に行きたいです」
彼の部屋は、麻布にある、少し高級なマンションだった。
案内されたリビングは、お洒落な間接照明で照らされていて、大人の男の人の部屋って感じがして、なんだかすごく緊張する。
「何か、飲む?」
「…お水、もらえますか」
彼がキッチンでお水を用意してくれている間も、あたしはソファに座ったまま、どうしたらいいかわからずに固まっていた。
勢いで「家に行きたい」なんて言っちゃったけど、これからどうするんだろう。
どうなっちゃうんだろう。
彼が持ってきてくれたグラスを受け取る指が、小さく震えているのが自分でもわかった。
静寂が、部屋を支配する。
気まずいとかじゃなくて、お互いに、次に何を言うべきかを探っているような、そんな空気。
先に沈黙を破ったのは、あたしだった。
「…好きです。あなたのことが…」
声が、震えた。でも、言わなきゃ後悔するって思った。
彼は、少しだけ驚いたように目を見開いた後、ふっと、柔らかく微笑んだ。
「俺もだよ」
その一言で、あたしの心は完全に決まった。
彼はあたしの隣にゆっくりと座ると、そっとあたしの手を握った。
大きくて、温かい手。
「ミカちゃんと初めて会った時から、ずっと気になってた。もっと知りたいって、もっと一緒にいたいって、思ってた」
ゆっくりと、彼が顔を近づけてくる。
あたしは、そっと目を閉じた。
唇に、柔らかくて、温かい感触。
(あ…)
触れるだけの、優しいキス。
元カレの、乱暴に唇を塞いでくるようなキスとは全然違う。
「ん…」
少しだけ角度を変えて、もう一度。
今度は、さっきよりも少しだけ深く。
彼の唇が、あたしの唇の形を確かめるみたいに、ゆっくりと動く。
(うそ…っ♡ なに、このキス…!彼氏のときと全然違う…っ♡)
彼の舌が、そっとあたしの唇をこじ開けて、中に入ってくる。
びっくりして身体がビクッて震えたけど、怖くはなかった。
彼の舌は、あたしの舌に優しく絡みついて、くちゅ、くちゅ、と甘い音を立てる。
「ん、んぅ…っ♡」
舌が絡むたびに、脳が痺れて、身体の奥からじゅわ…っと熱いものが込み上げてくるのがわかった。
背筋を、ぞくぞくとした快感が駆け上がっていく。
彼の大きな手が、あたしの背中に回されて、ぎゅっと抱きしめられる。
ぴったりと密着した身体。彼の心臓の音が、あたしの胸に直接響いてくるみたい。
(キスだけで、こんなに気持ちいいなんて、知らなかった…!)
彼の舌が、あたしの上顎をなぞったり、歯茎を優しく擦ったりするたびに、あたしの身体はビクン、ビクンと反応してしまう。もう、自分の身体じゃないみたい。
(だめ、だめ…っ、なんか、変な感じ…っ♡)
キスだけで、あたしのパンツの中が、もうじっとりと濡れていくのがわかった。
下腹部の奥が、きゅぅんと疼いて、熱を持っていく。
彼のペニスが、服の上からでもわかるくらい硬くなっているのが、あたしのお腹に当たって、余計に興奮を高めてしまう。
どれくらいそうしていただろう。
唇が離れた時、二人の間には銀色の糸が引いていた。
はぁ、はぁ、と息を切らすあたしの瞳を、彼は熱を帯びた瞳で見つめている。
腰がくだけて、足に力が入らない。
このまま彼に身を任せてしまったら、あたし、本当にダメになっちゃうかもしれない。
その本能的な予感に、たまらず口を開いた。
「あ、あの…っ、お風呂、借りてもいいですか…?♡」
それは、このままじゃどうにかなってしまいそうな自分を、一度リセットするための、精一杯の言葉だった。
あたしは、柄にもなく、何を着ていこうか、どんな髪型にしようか、前日の夜からずっとそわそわしていた。彼氏に会う時なんて、もうずっとこんな気持ちになったことなかったのに。
(あたし、完全に浮かれてるな…)
でも、その気持ちに蓋をすることは、もうできなかった。
金曜の夜だというのに、彼氏から一通のLINEも来ない。
しびれを切らしてあたしから電話をかけると、聞こえてきたのは知らない女の人の声だった。
頭が、真っ白になった。
震える手で優斗さんに送ったLINEは、たった一言。
『今すぐ会えますか?』
すぐに既読がついて、『駅前で待ってる』と返事が来た。
駅前のロータリーに着くと、彼はもうそこに立っていた。心配そうな顔で駆け寄ってくる。
あたしは、彼の顔を見た瞬間、堪えていた涙が堰を切ったように溢れ出した。
「…ごめん、なさい…っ」
「ううん、大丈夫だから。何も言わなくていいよ」
彼は何も聞かずに、あたしの背中を優しくさすってくれた。
その温かい手のひらから伝わる優しさに、余計に涙が止まらなくなる。
少し落ち着いたところで、彼はあたしを静かなバーに連れて行ってくれた。
カウンターだけの、薄暗い照明が心地いいお店。
「…彼氏、浮気してたの。電話かけたら、女の人が出て…。だから、別れてきた」
ぽつり、ぽつりと、途切れ途切れに話すあたしの言葉を、彼はただ黙って聞いてくれた。
「そっか…」
低い、優しい声。
「あたしが、魅力ないからかな…。セックスの時も、あたし、全然感じられなくて…、つまんない女だって、思われてたのかな…っ」
自分でも気づかないうちに、ずっと心の奥底に溜め込んでいた不安が、言葉になって溢れ出す。
「そんなこと、絶対にない」
優斗さんは、あたしの言葉を強い口調で遮った。
「ミカちゃんが感じられなかったのは、ミカちゃんのせいじゃない。相手の男が、ミカちゃんの魅力に気づけなかっただけだ。ミカちゃんを、気持ちよくさせられなかった、その男が悪い」
まっすぐに、あたしの目を見て言ってくれる。
その力強い言葉に、心が震えた。
誰も、そんなこと言ってくれなかった。
あたし自身でさえ、自分が悪いんだって思い込んでたのに。
「ミカちゃんは、すごく魅力的だよ。可愛いし、優しいし、話してるとすごく楽しい。俺は、ミカちゃんといると、いつも幸せな気持ちになる」
(あたしが、魅力的…?)
彼の言葉は、魔法みたいだった。
自己肯定感が地の底まで落ちていたあたしの心を、ゆっくりと、でも確かに、掬い上げてくれる。
「泣き顔も可愛いけど、やっぱりミカちゃんは、笑顔が一番だよ」
そう言って、彼はあたしの涙で濡れた頬を、指先でそっと拭ってくれた。
その優しい手つきに、胸がぎゅっと締め付けられる。
(ああ、もう、だめだ)
彼氏と別れたばかりで、こんなこと考えちゃいけないってわかってる。
でも、もう、この気持ちを誤魔化すことはできない。
あたしは、覚悟を決めた目で、彼を見つめた。
「…あなたの、家に行きたいです」
彼の部屋は、麻布にある、少し高級なマンションだった。
案内されたリビングは、お洒落な間接照明で照らされていて、大人の男の人の部屋って感じがして、なんだかすごく緊張する。
「何か、飲む?」
「…お水、もらえますか」
彼がキッチンでお水を用意してくれている間も、あたしはソファに座ったまま、どうしたらいいかわからずに固まっていた。
勢いで「家に行きたい」なんて言っちゃったけど、これからどうするんだろう。
どうなっちゃうんだろう。
彼が持ってきてくれたグラスを受け取る指が、小さく震えているのが自分でもわかった。
静寂が、部屋を支配する。
気まずいとかじゃなくて、お互いに、次に何を言うべきかを探っているような、そんな空気。
先に沈黙を破ったのは、あたしだった。
「…好きです。あなたのことが…」
声が、震えた。でも、言わなきゃ後悔するって思った。
彼は、少しだけ驚いたように目を見開いた後、ふっと、柔らかく微笑んだ。
「俺もだよ」
その一言で、あたしの心は完全に決まった。
彼はあたしの隣にゆっくりと座ると、そっとあたしの手を握った。
大きくて、温かい手。
「ミカちゃんと初めて会った時から、ずっと気になってた。もっと知りたいって、もっと一緒にいたいって、思ってた」
ゆっくりと、彼が顔を近づけてくる。
あたしは、そっと目を閉じた。
唇に、柔らかくて、温かい感触。
(あ…)
触れるだけの、優しいキス。
元カレの、乱暴に唇を塞いでくるようなキスとは全然違う。
「ん…」
少しだけ角度を変えて、もう一度。
今度は、さっきよりも少しだけ深く。
彼の唇が、あたしの唇の形を確かめるみたいに、ゆっくりと動く。
(うそ…っ♡ なに、このキス…!彼氏のときと全然違う…っ♡)
彼の舌が、そっとあたしの唇をこじ開けて、中に入ってくる。
びっくりして身体がビクッて震えたけど、怖くはなかった。
彼の舌は、あたしの舌に優しく絡みついて、くちゅ、くちゅ、と甘い音を立てる。
「ん、んぅ…っ♡」
舌が絡むたびに、脳が痺れて、身体の奥からじゅわ…っと熱いものが込み上げてくるのがわかった。
背筋を、ぞくぞくとした快感が駆け上がっていく。
彼の大きな手が、あたしの背中に回されて、ぎゅっと抱きしめられる。
ぴったりと密着した身体。彼の心臓の音が、あたしの胸に直接響いてくるみたい。
(キスだけで、こんなに気持ちいいなんて、知らなかった…!)
彼の舌が、あたしの上顎をなぞったり、歯茎を優しく擦ったりするたびに、あたしの身体はビクン、ビクンと反応してしまう。もう、自分の身体じゃないみたい。
(だめ、だめ…っ、なんか、変な感じ…っ♡)
キスだけで、あたしのパンツの中が、もうじっとりと濡れていくのがわかった。
下腹部の奥が、きゅぅんと疼いて、熱を持っていく。
彼のペニスが、服の上からでもわかるくらい硬くなっているのが、あたしのお腹に当たって、余計に興奮を高めてしまう。
どれくらいそうしていただろう。
唇が離れた時、二人の間には銀色の糸が引いていた。
はぁ、はぁ、と息を切らすあたしの瞳を、彼は熱を帯びた瞳で見つめている。
腰がくだけて、足に力が入らない。
このまま彼に身を任せてしまったら、あたし、本当にダメになっちゃうかもしれない。
その本能的な予感に、たまらず口を開いた。
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