150 / 214
第十二章 蒼穹の方舟と、空に還る想い
神柱の目覚め、風の誓い
しおりを挟む
《風の根》の最奥――そこは、世界の空気が胎動するかのような神域だった。
天井も壁もないように見えるその空間は、無限に広がる風のうねりに包まれていた。
中央に浮かぶ巨大な結晶、それが《風精の核》──都市の命を司る風の心臓。
その結晶に触れかけた瞬間、突如として風が逆巻いた。
旋風がひとつに集まり、姿を形作る。
「……来たか、契約者たちよ」
その声は澄み渡る風のささやき。
姿を現したのは、全身を風の鎧に包んだ少女だった。
長い銀髪が宙に揺れ、瞳には風の紋章が宿る。
背中には羽のように見える風の装置、そしてその手には空気を裂くような細剣。
「我は“ヴェイア”。十二神柱のひと柱――風の境界を守る者」
イッセイが一歩前に出る。
「君が……方舟を守ってきた存在か?」
「否。“守る”は過去の話。我らは長き眠りの中で、力を封印へと変えていた。だが――」
ヴェイアの瞳が揺れた。
「今また風は乱れ、均衡は崩れつつある。ならば我は、目覚める者を選ばねばならぬ」
細剣が一閃。
「汝らの“覚悟”を示せ。我が刃を受け止め、風を導くに相応しき者か否か!」
風が弾け、空間全体が戦場へと変貌する。
「みんな、行くぞ!」
イッセイの号令とともに、仲間たちが動いた。
◆
最初に動いたのはフィーナだった。
風の壁を駆け上がるように跳び、脚術でヴェイアに接近。
「風は、止められないウサ!」
その蹴りをヴェイアは軽く受け流す。空気を操る彼女の動きは、まるで風そのもの。
フィーナが弾かれた瞬間、ミュリルが背後から襲いかかる。
「にゃっ、今だにゃ!」
だがその奇襲も読まれていた。空気の流れから動きを先読みされ、ヴェイアは瞬時に反撃。
「速い……けど、まだっ!」
シャルロッテが結界を展開し、リリィの飛翔型魔導具が空中から砲撃を加える。
「感情も、技術も、全部ぶつけるわよっ!」
一瞬の隙をついて、イッセイが正面から突進。
構えた剣が、風の剣と激突した。
「風を守りたい。君たちの想いを、次に繋げたい!」
激しい剣撃の応酬。その中で、イッセイの言葉がヴェイアの心を打つ。
「なぜ、そうまでして?」
「誰かがそうしてくれたからだ。俺のいた世界で、俺を救ってくれた“風”がいた。だから今度は、俺がその風になる番だ」
その言葉に、ヴェイアの動きが止まる。風が、一瞬だけ静まった。
「……面白いな。契約者」
ヴェイアが剣を下ろす。
「ならば、認めよう。我が名と力、そしてこの試練を超えし者として」
彼女は結晶の上空に浮かび、祈るように両手を広げた。
「この空の命運を託す。残る十一柱を目覚めさせ、風王を導け」
その声が風と共に広がると、《風精の核》が淡く輝き出す。
その光は《アエリス族》の聖域全体に届き、空の流れがひとつにまとまっていく。
「これが……風の均衡か」
エリュアが小さく囁いた。精霊たちの声も、少しだけ近くなっていた。
「ありがとう、ヴェイア。君のこと、決して忘れない」
イッセイの言葉に、ヴェイアは風に還るように姿を薄めた。
「……まだ終わりではない。空の本質は、吹き荒れるだけではない。静けさと、導きもまた“風”なのだ……」
彼女の声だけが、最後に残された。
◆
イッセイたちは顔を見合わせた。
「……これから、十一柱を探すってことか」
「でもきっと、道はもう始まってるわね」
「うん。“風を守る旅”の、ほんとの始まりにゃ」
仲間たちの言葉に、イッセイも力強くうなずいた。
「進もう。空が、未来を待ってるから」
こうして、新たな試練の扉が開かれた。
彼らの旅は、さらなる空へと続いていく――
天井も壁もないように見えるその空間は、無限に広がる風のうねりに包まれていた。
中央に浮かぶ巨大な結晶、それが《風精の核》──都市の命を司る風の心臓。
その結晶に触れかけた瞬間、突如として風が逆巻いた。
旋風がひとつに集まり、姿を形作る。
「……来たか、契約者たちよ」
その声は澄み渡る風のささやき。
姿を現したのは、全身を風の鎧に包んだ少女だった。
長い銀髪が宙に揺れ、瞳には風の紋章が宿る。
背中には羽のように見える風の装置、そしてその手には空気を裂くような細剣。
「我は“ヴェイア”。十二神柱のひと柱――風の境界を守る者」
イッセイが一歩前に出る。
「君が……方舟を守ってきた存在か?」
「否。“守る”は過去の話。我らは長き眠りの中で、力を封印へと変えていた。だが――」
ヴェイアの瞳が揺れた。
「今また風は乱れ、均衡は崩れつつある。ならば我は、目覚める者を選ばねばならぬ」
細剣が一閃。
「汝らの“覚悟”を示せ。我が刃を受け止め、風を導くに相応しき者か否か!」
風が弾け、空間全体が戦場へと変貌する。
「みんな、行くぞ!」
イッセイの号令とともに、仲間たちが動いた。
◆
最初に動いたのはフィーナだった。
風の壁を駆け上がるように跳び、脚術でヴェイアに接近。
「風は、止められないウサ!」
その蹴りをヴェイアは軽く受け流す。空気を操る彼女の動きは、まるで風そのもの。
フィーナが弾かれた瞬間、ミュリルが背後から襲いかかる。
「にゃっ、今だにゃ!」
だがその奇襲も読まれていた。空気の流れから動きを先読みされ、ヴェイアは瞬時に反撃。
「速い……けど、まだっ!」
シャルロッテが結界を展開し、リリィの飛翔型魔導具が空中から砲撃を加える。
「感情も、技術も、全部ぶつけるわよっ!」
一瞬の隙をついて、イッセイが正面から突進。
構えた剣が、風の剣と激突した。
「風を守りたい。君たちの想いを、次に繋げたい!」
激しい剣撃の応酬。その中で、イッセイの言葉がヴェイアの心を打つ。
「なぜ、そうまでして?」
「誰かがそうしてくれたからだ。俺のいた世界で、俺を救ってくれた“風”がいた。だから今度は、俺がその風になる番だ」
その言葉に、ヴェイアの動きが止まる。風が、一瞬だけ静まった。
「……面白いな。契約者」
ヴェイアが剣を下ろす。
「ならば、認めよう。我が名と力、そしてこの試練を超えし者として」
彼女は結晶の上空に浮かび、祈るように両手を広げた。
「この空の命運を託す。残る十一柱を目覚めさせ、風王を導け」
その声が風と共に広がると、《風精の核》が淡く輝き出す。
その光は《アエリス族》の聖域全体に届き、空の流れがひとつにまとまっていく。
「これが……風の均衡か」
エリュアが小さく囁いた。精霊たちの声も、少しだけ近くなっていた。
「ありがとう、ヴェイア。君のこと、決して忘れない」
イッセイの言葉に、ヴェイアは風に還るように姿を薄めた。
「……まだ終わりではない。空の本質は、吹き荒れるだけではない。静けさと、導きもまた“風”なのだ……」
彼女の声だけが、最後に残された。
◆
イッセイたちは顔を見合わせた。
「……これから、十一柱を探すってことか」
「でもきっと、道はもう始まってるわね」
「うん。“風を守る旅”の、ほんとの始まりにゃ」
仲間たちの言葉に、イッセイも力強くうなずいた。
「進もう。空が、未来を待ってるから」
こうして、新たな試練の扉が開かれた。
彼らの旅は、さらなる空へと続いていく――
11
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました
東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!!
スティールスキル。
皆さん、どんなイメージを持ってますか?
使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。
でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。
スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。
楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。
それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。
2025/12/7
一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる