侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。

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第十二章 蒼穹の方舟と、空に還る想い

神柱の目覚め、風の誓い

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《風の根》の最奥――そこは、世界の空気が胎動するかのような神域だった。



天井も壁もないように見えるその空間は、無限に広がる風のうねりに包まれていた。

中央に浮かぶ巨大な結晶、それが《風精の核》──都市の命を司る風の心臓。



その結晶に触れかけた瞬間、突如として風が逆巻いた。

旋風がひとつに集まり、姿を形作る。



「……来たか、契約者たちよ」



その声は澄み渡る風のささやき。

姿を現したのは、全身を風の鎧に包んだ少女だった。



長い銀髪が宙に揺れ、瞳には風の紋章が宿る。

背中には羽のように見える風の装置、そしてその手には空気を裂くような細剣。



「我は“ヴェイア”。十二神柱のひと柱――風の境界を守る者」



イッセイが一歩前に出る。



「君が……方舟を守ってきた存在か?」



「否。“守る”は過去の話。我らは長き眠りの中で、力を封印へと変えていた。だが――」



ヴェイアの瞳が揺れた。



「今また風は乱れ、均衡は崩れつつある。ならば我は、目覚める者を選ばねばならぬ」



細剣が一閃。



「汝らの“覚悟”を示せ。我が刃を受け止め、風を導くに相応しき者か否か!」



風が弾け、空間全体が戦場へと変貌する。



「みんな、行くぞ!」



イッセイの号令とともに、仲間たちが動いた。







最初に動いたのはフィーナだった。

風の壁を駆け上がるように跳び、脚術でヴェイアに接近。



「風は、止められないウサ!」



その蹴りをヴェイアは軽く受け流す。空気を操る彼女の動きは、まるで風そのもの。

フィーナが弾かれた瞬間、ミュリルが背後から襲いかかる。



「にゃっ、今だにゃ!」



だがその奇襲も読まれていた。空気の流れから動きを先読みされ、ヴェイアは瞬時に反撃。



「速い……けど、まだっ!」



シャルロッテが結界を展開し、リリィの飛翔型魔導具が空中から砲撃を加える。



「感情も、技術も、全部ぶつけるわよっ!」



一瞬の隙をついて、イッセイが正面から突進。

構えた剣が、風の剣と激突した。



「風を守りたい。君たちの想いを、次に繋げたい!」



激しい剣撃の応酬。その中で、イッセイの言葉がヴェイアの心を打つ。



「なぜ、そうまでして?」



「誰かがそうしてくれたからだ。俺のいた世界で、俺を救ってくれた“風”がいた。だから今度は、俺がその風になる番だ」



その言葉に、ヴェイアの動きが止まる。風が、一瞬だけ静まった。



「……面白いな。契約者」



ヴェイアが剣を下ろす。



「ならば、認めよう。我が名と力、そしてこの試練を超えし者として」



彼女は結晶の上空に浮かび、祈るように両手を広げた。



「この空の命運を託す。残る十一柱を目覚めさせ、風王を導け」



その声が風と共に広がると、《風精の核》が淡く輝き出す。

その光は《アエリス族》の聖域全体に届き、空の流れがひとつにまとまっていく。



「これが……風の均衡か」



エリュアが小さく囁いた。精霊たちの声も、少しだけ近くなっていた。



「ありがとう、ヴェイア。君のこと、決して忘れない」



イッセイの言葉に、ヴェイアは風に還るように姿を薄めた。



「……まだ終わりではない。空の本質は、吹き荒れるだけではない。静けさと、導きもまた“風”なのだ……」



彼女の声だけが、最後に残された。







イッセイたちは顔を見合わせた。



「……これから、十一柱を探すってことか」

「でもきっと、道はもう始まってるわね」

「うん。“風を守る旅”の、ほんとの始まりにゃ」



仲間たちの言葉に、イッセイも力強くうなずいた。



「進もう。空が、未来を待ってるから」



こうして、新たな試練の扉が開かれた。

彼らの旅は、さらなる空へと続いていく――
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