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第十二章 蒼穹の方舟と、空に還る想い
幻影の風、囁く王の記憶
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「――これは、風王の……記憶?」
シャルロッテの言葉が静寂に沈む神殿の空間に、淡く響いた。
《シリル》の覚醒から数日、イッセイたちは神柱の導きにより、次なる神柱の眠る《風歌の窟》へと向かう準備を進めていた。
だが、神殿の封印が解除されたことで、思わぬものが解放された。
「風の精霊の記録層に……何かが現れてるにゃ……これは、風王の……影……?」
ミュリルの瞳が細められる。結界の中央に浮かび上がったのは、かつて空の王として君臨した存在――風王アナフィエルの幻影だった。
「我が名はアナフィエル……風の座に在りしもの……」
その声は風のうねりに乗って届くように、柔らかく、それでいて威厳を湛えていた。
「……これは録音じゃない。思念そのものね」
シャルロッテが結界を調整しながら呟いた。
幻影の風王は語り始める。
それは遥か昔、空が崩れかけた第一次崩落の時代――精霊たちの力が分断され、風が制御を失い、世界の天候が狂い出した頃。
「我らは秩序を守るため、風を束ねる柱を選んだ……だが、十二の魂を封印に変える選択は……正しきことだったのか」
「……迷ってる?」
リリィが思わず呟く。
「そうかもしれないウサ」
フィーナが口を尖らせる。「でも、風王っていうぐらいなんだから、本当は全部分かってたはずウサ」
「そうよね。じゃないと……誰もついていかない」
セリアが静かに頷いた。
やがて、幻影はふっと姿を変える。
そこに現れたのは、かつての十二神柱たちの姿だった。
「彼女たちは、王の命令に従ったわけではない」
エリュアがぽつりと呟いた。「自らの意志で、“空を守る”選択をしたんだわ……」
神殿に満ちる風の記憶は、それぞれの神柱が“自らを捧げる”場面を映し出していく。
彼女たちの顔には、涙も、迷いも、そして微笑みもあった。
「それが――空に生きる者たちの覚悟、か」
イッセイは小さく呟いた。
やがて、幻影の風王は最後にこう告げた。
『十二柱すべてが揃う時、封印は解かれ、“風王の座”は再び選ばれる。
されど、選ばれる者は一人。……それが“空の未来”を決する鍵となろう』
「……選ばれる?」
「つまり、神柱が全員覚醒したら、最終的には“誰か一人”が風王になるってことウサか……?」
「そうなると……イッセイが候補かもね」
ミュリルがにやりと笑う。「みんなの中心で、風の音叉持ってるしにゃ」
「オレ……が?」
イッセイは苦笑した。
「俺はただ、みんなと生きたいだけなんだけどな」
その時、幻影の最後の残滓がふわりと舞い、イッセイの音叉に触れた。
音叉が微かに震え、風がイッセイの髪を優しく撫でる。
「……認められた、ということかしら」
シャルロッテが結界を閉じながら、言った。
「その覚悟、私たちが見極めさせてもらうわね、イッセイ」
「……ああ。行こう。次の神柱の元へ」
その時、方舟の上空に、突如として“風の断層”が揺れた。
未覚醒の神柱たちが、共鳴を始めていた。
「風が……呼んでる」
「じゃあ、応えてやらなきゃウサ!」
笑顔で叫ぶフィーナの背に、風が舞った。
こうしてイッセイたちは、風王の記憶を胸に――新たなる神柱の眠る地、《風歌の窟》へと旅立つのであった。
シャルロッテの言葉が静寂に沈む神殿の空間に、淡く響いた。
《シリル》の覚醒から数日、イッセイたちは神柱の導きにより、次なる神柱の眠る《風歌の窟》へと向かう準備を進めていた。
だが、神殿の封印が解除されたことで、思わぬものが解放された。
「風の精霊の記録層に……何かが現れてるにゃ……これは、風王の……影……?」
ミュリルの瞳が細められる。結界の中央に浮かび上がったのは、かつて空の王として君臨した存在――風王アナフィエルの幻影だった。
「我が名はアナフィエル……風の座に在りしもの……」
その声は風のうねりに乗って届くように、柔らかく、それでいて威厳を湛えていた。
「……これは録音じゃない。思念そのものね」
シャルロッテが結界を調整しながら呟いた。
幻影の風王は語り始める。
それは遥か昔、空が崩れかけた第一次崩落の時代――精霊たちの力が分断され、風が制御を失い、世界の天候が狂い出した頃。
「我らは秩序を守るため、風を束ねる柱を選んだ……だが、十二の魂を封印に変える選択は……正しきことだったのか」
「……迷ってる?」
リリィが思わず呟く。
「そうかもしれないウサ」
フィーナが口を尖らせる。「でも、風王っていうぐらいなんだから、本当は全部分かってたはずウサ」
「そうよね。じゃないと……誰もついていかない」
セリアが静かに頷いた。
やがて、幻影はふっと姿を変える。
そこに現れたのは、かつての十二神柱たちの姿だった。
「彼女たちは、王の命令に従ったわけではない」
エリュアがぽつりと呟いた。「自らの意志で、“空を守る”選択をしたんだわ……」
神殿に満ちる風の記憶は、それぞれの神柱が“自らを捧げる”場面を映し出していく。
彼女たちの顔には、涙も、迷いも、そして微笑みもあった。
「それが――空に生きる者たちの覚悟、か」
イッセイは小さく呟いた。
やがて、幻影の風王は最後にこう告げた。
『十二柱すべてが揃う時、封印は解かれ、“風王の座”は再び選ばれる。
されど、選ばれる者は一人。……それが“空の未来”を決する鍵となろう』
「……選ばれる?」
「つまり、神柱が全員覚醒したら、最終的には“誰か一人”が風王になるってことウサか……?」
「そうなると……イッセイが候補かもね」
ミュリルがにやりと笑う。「みんなの中心で、風の音叉持ってるしにゃ」
「オレ……が?」
イッセイは苦笑した。
「俺はただ、みんなと生きたいだけなんだけどな」
その時、幻影の最後の残滓がふわりと舞い、イッセイの音叉に触れた。
音叉が微かに震え、風がイッセイの髪を優しく撫でる。
「……認められた、ということかしら」
シャルロッテが結界を閉じながら、言った。
「その覚悟、私たちが見極めさせてもらうわね、イッセイ」
「……ああ。行こう。次の神柱の元へ」
その時、方舟の上空に、突如として“風の断層”が揺れた。
未覚醒の神柱たちが、共鳴を始めていた。
「風が……呼んでる」
「じゃあ、応えてやらなきゃウサ!」
笑顔で叫ぶフィーナの背に、風が舞った。
こうしてイッセイたちは、風王の記憶を胸に――新たなる神柱の眠る地、《風歌の窟》へと旅立つのであった。
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