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第十二章 蒼穹の方舟と、空に還る想い
眠れる柱、開かれし封印
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「もうすぐ……神柱に、届く」
イッセイは額から汗をぬぐい、神器《風を束ねる音叉》を強く握り直した。
眼前には、空に浮かぶ朽ちた神殿。
中央の祭壇には、長い眠りについたままの“少女”――第三の神柱セフィールが、石像の姿で横たわっていた。
「まるで……眠る精霊そのもの、だね」
ミュリルが小さな声で呟いた。
彼女の風色の髪がそよぎ、まるで神柱の呼吸に合わせて揺れているかのようだった。
「この感じ……たしかに、魂がここに“閉じ込められて”るウサ」
フィーナは真剣な目で封印の文様を見つめた。
普段のおっとりした雰囲気はどこへやら、空の巫女としての感覚が研ぎ澄まされている。
「セフィール……聞こえるか? 君を、目覚めさせに来た」
イッセイが音叉を高く掲げ、封印に近づくと――
突如、結界が“反応”を起こした。
ギィィィィィ……ン!!
鈍く、金属を擦るような音と共に、祭壇の周囲に六つの浮遊石が浮かび上がる。
「これは……封印装置か? それとも……!」
「違うッ! これ、“守り手”だわ!」
シャルロッテが叫ぶや否や、六つの石からそれぞれ“風の分身”が出現。
人の形をしているが、全身は透明な気流で構成され、目だけが淡く光っていた。
「試練だ……神柱に触れるには、選ばれし者でなければならないってことか」
イッセイが低くつぶやいた。
「上等ウサ! 風だって……スパの泡だって、ぶつかって砕けるのよ!」
「それ、名言か? 迷言じゃない?」
「うるさいウサ! やるウサ!」
フィーナが笑いながら跳ねるように前に出た。
風の分身たちは、まるで生き物のように周囲を包囲し、同時に突撃してくる。
「来る! 防御陣形、二層目!」
「セリア! 援護を!」
「了解!――させるかッ!」
セリアの矢が風の分身を貫く。しかし、分身の身体は霧のように崩れ、再び再構築されていく。
「効かない!? いや、違う……“意志”がこもってないから、戻れるんだ!」
ミュリルが叫ぶ。
「だったら、こっちも“想い”をぶつけるしかないってことか」
イッセイは音叉を振り上げ、叫んだ。
「みんな、声を重ねてくれ! 俺たちの“風”で、扉を開ける!」
「おうとも!」
「任せろウサ!」
「ふふ……風は、ひとつ」
それぞれの想いが込められた声が響き合う。
神器が共鳴し、イッセイの掌に風の紋様が浮かび上がる――その瞬間。
――きこえる
「……え?」
「いま、だれが……?」
全員が戸惑いの表情を浮かべる。
そして祭壇の上の少女が、ゆっくりと目を開けた。
「――私は、セフィール」
その声は風そのものであり、すべての空を撫でるような優しさを持っていた。
「あなたたちが……目覚めを望んだの?」
「……ああ。君の力が、必要なんだ。この空を、守るために」
イッセイはそう返した。
セフィールはしばらく黙ったまま、風のように揺れる長い銀髪を垂らしていたが、やがて微笑んだ。
「ならば、問います。あなたは、“風を託す者”となる覚悟がありますか?」
「ある」
即答だった。
「仲間と生きる未来のためなら、俺は――何度でも戦う。風を託されても、重荷にはしない」
「……いい返事ね」
セフィールの笑みが深まり、その身が光に包まれていく。
同時に祭壇が揺れ、大気そのものが“歌い始めた”。
風よ、永遠に。空と共に在れ。
セフィールの身体が光の粒子となり、風の流れへと溶けていく。
「これは……魂が、拡がっていく……!」
シャルロッテが呟いた。
そして次の瞬間、天空に巨大な“風紋”が描かれ、空全体が柔らかな緑光に包まれた。
「神柱セフィール、覚醒完了……」
ミュリルが感極まったように両手を組み、ぽつりと涙を零す。
その風は、確かに“祝福”だった。
「ありがとう。風の旅人たちよ。私はあなたに風の鍵を授けましょう」
その言葉と共に、音叉に新たな輝きが宿る。
“第三の神柱、目覚め完了”
……だがその直後。
ギィ……ィィ……ギギギ……ン……
空の彼方から、不協和音のような“歪み”が届く。
「今の……なに?」
「空じゃない……“次元”が、揺れてる……!?」
イッセイの胸に、嫌な予感が走った。
「セフィール、これは――?」
「ごめんなさい……私の目覚めで、“空の枷”が、緩んでしまったみたい……」
「枷……?」
「“第四の柱”が、もう……起き始めている」
風が、一瞬だけ凍る。
次なる嵐の予兆が、すでに始まっていた。
イッセイは額から汗をぬぐい、神器《風を束ねる音叉》を強く握り直した。
眼前には、空に浮かぶ朽ちた神殿。
中央の祭壇には、長い眠りについたままの“少女”――第三の神柱セフィールが、石像の姿で横たわっていた。
「まるで……眠る精霊そのもの、だね」
ミュリルが小さな声で呟いた。
彼女の風色の髪がそよぎ、まるで神柱の呼吸に合わせて揺れているかのようだった。
「この感じ……たしかに、魂がここに“閉じ込められて”るウサ」
フィーナは真剣な目で封印の文様を見つめた。
普段のおっとりした雰囲気はどこへやら、空の巫女としての感覚が研ぎ澄まされている。
「セフィール……聞こえるか? 君を、目覚めさせに来た」
イッセイが音叉を高く掲げ、封印に近づくと――
突如、結界が“反応”を起こした。
ギィィィィィ……ン!!
鈍く、金属を擦るような音と共に、祭壇の周囲に六つの浮遊石が浮かび上がる。
「これは……封印装置か? それとも……!」
「違うッ! これ、“守り手”だわ!」
シャルロッテが叫ぶや否や、六つの石からそれぞれ“風の分身”が出現。
人の形をしているが、全身は透明な気流で構成され、目だけが淡く光っていた。
「試練だ……神柱に触れるには、選ばれし者でなければならないってことか」
イッセイが低くつぶやいた。
「上等ウサ! 風だって……スパの泡だって、ぶつかって砕けるのよ!」
「それ、名言か? 迷言じゃない?」
「うるさいウサ! やるウサ!」
フィーナが笑いながら跳ねるように前に出た。
風の分身たちは、まるで生き物のように周囲を包囲し、同時に突撃してくる。
「来る! 防御陣形、二層目!」
「セリア! 援護を!」
「了解!――させるかッ!」
セリアの矢が風の分身を貫く。しかし、分身の身体は霧のように崩れ、再び再構築されていく。
「効かない!? いや、違う……“意志”がこもってないから、戻れるんだ!」
ミュリルが叫ぶ。
「だったら、こっちも“想い”をぶつけるしかないってことか」
イッセイは音叉を振り上げ、叫んだ。
「みんな、声を重ねてくれ! 俺たちの“風”で、扉を開ける!」
「おうとも!」
「任せろウサ!」
「ふふ……風は、ひとつ」
それぞれの想いが込められた声が響き合う。
神器が共鳴し、イッセイの掌に風の紋様が浮かび上がる――その瞬間。
――きこえる
「……え?」
「いま、だれが……?」
全員が戸惑いの表情を浮かべる。
そして祭壇の上の少女が、ゆっくりと目を開けた。
「――私は、セフィール」
その声は風そのものであり、すべての空を撫でるような優しさを持っていた。
「あなたたちが……目覚めを望んだの?」
「……ああ。君の力が、必要なんだ。この空を、守るために」
イッセイはそう返した。
セフィールはしばらく黙ったまま、風のように揺れる長い銀髪を垂らしていたが、やがて微笑んだ。
「ならば、問います。あなたは、“風を託す者”となる覚悟がありますか?」
「ある」
即答だった。
「仲間と生きる未来のためなら、俺は――何度でも戦う。風を託されても、重荷にはしない」
「……いい返事ね」
セフィールの笑みが深まり、その身が光に包まれていく。
同時に祭壇が揺れ、大気そのものが“歌い始めた”。
風よ、永遠に。空と共に在れ。
セフィールの身体が光の粒子となり、風の流れへと溶けていく。
「これは……魂が、拡がっていく……!」
シャルロッテが呟いた。
そして次の瞬間、天空に巨大な“風紋”が描かれ、空全体が柔らかな緑光に包まれた。
「神柱セフィール、覚醒完了……」
ミュリルが感極まったように両手を組み、ぽつりと涙を零す。
その風は、確かに“祝福”だった。
「ありがとう。風の旅人たちよ。私はあなたに風の鍵を授けましょう」
その言葉と共に、音叉に新たな輝きが宿る。
“第三の神柱、目覚め完了”
……だがその直後。
ギィ……ィィ……ギギギ……ン……
空の彼方から、不協和音のような“歪み”が届く。
「今の……なに?」
「空じゃない……“次元”が、揺れてる……!?」
イッセイの胸に、嫌な予感が走った。
「セフィール、これは――?」
「ごめんなさい……私の目覚めで、“空の枷”が、緩んでしまったみたい……」
「枷……?」
「“第四の柱”が、もう……起き始めている」
風が、一瞬だけ凍る。
次なる嵐の予兆が、すでに始まっていた。
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