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最終章 始まりの君へ、この永遠の祝福を
三つの神具、哀しみを溶かす光
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「みんな、剣を収めてくれ!」
俺の号令に、仲間たちは戸惑いながらも、その手に握りしめた武器をゆっくりと下ろす。
そうだ、これは戦いではない。俺たちは、目の前で怯えるこの哀れな魂を、傷つけるためにここに来たんじゃない。
「俺たちは、お前を傷つけに来たんじゃない。……その哀しみを、分ち合いに来たんだ」
俺は、神々の試練を経て手に入れた、三つの神具を空間に具現化させた。
俺たちの“答え”の象徴。まず、俺は《赦しの聖杯》を高く掲げた。
「お前を創り出し、全てを押し付けた神々を、俺たちは赦さない。だが、その理不尽に耐え、涙を流し続けたお前の哀しみは、俺たちが受け止める! お前が背負った罪も、世界の歪みも、俺たちが“乗り越える”と誓ったんだ!」
聖杯から溢れ出たのは、罪を洗い流すような厳しい光ではなかった。
それは、傷ついた心を優しく包み込む、母親の慈愛にも似た、どこまでも温かい光だった。
その光が、闇雲に振るわれていた憎悪の爪や絶望の触手を、そっと撫でるように包み込んでいく。
すると、あれほど荒れ狂っていた闇の攻撃が、ぴたりと止んだ。
暴力的なまでの拒絶は、ただの嗚咽のような、哀しい魂の震えへと変わっていく。
《……やめて……。そんな光を……私に向けないで……》
影の少女の声が、先ほどよりもずっとか細く、弱々しく響いた。
「いいや、やめない」
俺は、今度は《絆の宝冠》を自らの頭上に戴いた。
宝冠に埋め込まれた九つの宝石が、俺と仲間たちの魂に呼応して、七色の輝きを放つ。
「お前はもう、独りじゃない!」
宝冠から、無数の光の糸が伸び、俺と仲間たち、そして湖の中心で震えるリアナと魔王の魂を、優しく結びつけた。千年の孤独な魂に、初めて“他者との繋がり”という温もりが流れ込んでいく。
「……あ……」
影の少女の魂が、戸惑うように揺らぐ。その魂に、俺たちの想いが直接流れ込んでいく。
(独りは、寂しいですわよね。でも、もう大丈夫。わたくしたちが、あなたの“家族”になりますわ)
クラリスの気高き慈愛が、光となって彼女を包む。
(ふふっ、一人で泣いてるなんて、らしくないじゃない。これからは、あたしたちと一緒に、笑う練習から始めましょ?)
ルーナの悪戯っぽい優しさが、彼女の心の扉をノックする。
(大丈夫よ! あたしが、世界一美味しいお菓子と、世界一ぷるぷるになるお風呂を用意してあげる! だから、もう泣かないで!)
リリィの快活な励ましが、彼女の凍てついた心を温める。
セリア、サーシャ、シャルロッテ、フィーナ、ミュリル……仲間たち全員の、ありったけの想いが、絆の光となって、彼女の孤独を溶かしていく。
闇の抵抗が、明らかに弱まっていく。頑なに閉ざされていた魂の殻に、小さな、しかし確かな亀裂が入っていくのが分かった。
そして、俺は最後に、砕け散った《未来を識る天秤》の破片を掲げた。
「未来は、決まってなんかいない! 神々が用意した結末なんて、俺たちが壊した! だから、お前が涙を流し続ける未来なんて、もうどこにもないんだ!」
破片が星屑のように煌めき、俺たちの周囲に、まだ見ぬ未来の可能性を映し出した。
それは、壮大な奇跡の光景ではなかった。
リリィが持ってきたケーキを、フィーナとミュリルと一緒に、頬張りながら笑っている影の少女の姿。
クラリスに礼儀作法を教わり、困ったように眉を下げる姿。
ルーナに悪戯を仕掛けられ、ぷいっとそっぽを向く姿。
サーシャと木剣を交え、セリアに身だしなみを整えられ、シャルロッテと花冠を作る姿。
そして、俺の隣で、穏やかに微笑んでいる姿……。
《……なに……これ……?》
影の少女の魂から、 こ、これはなに・・・? とした声が響く。
《……これが……未来……? 私が……笑ってる……?》
「そうだ!」
俺は、力強く頷いた。
「お前が“魔王”としてではなく、ただの“一人の女の子”として、当たり前に笑える未来を、俺たちが創ってやる!」
その言葉が、最後の引き金だった。
影の少女を覆っていた闇の抵抗が、完全に消え失せた。
彼女は、ゆっくりとリアナの腕の中から顔を上げ、戸惑いと、そして、ほんのわずかな“希望”をその瞳に宿して、俺たちを、そして俺を見つめていた。
彼女は、震える手を、そっとこちらに伸ばしかけていた。
千年の時を経て、初めて、彼女は自らの意志で、“救い”に手を伸ばそうとしていたのだ。
俺たちの、魂の儀式は、確かに彼女の心に届いた。
だが、本当の救済は、ここからだった。
俺の号令に、仲間たちは戸惑いながらも、その手に握りしめた武器をゆっくりと下ろす。
そうだ、これは戦いではない。俺たちは、目の前で怯えるこの哀れな魂を、傷つけるためにここに来たんじゃない。
「俺たちは、お前を傷つけに来たんじゃない。……その哀しみを、分ち合いに来たんだ」
俺は、神々の試練を経て手に入れた、三つの神具を空間に具現化させた。
俺たちの“答え”の象徴。まず、俺は《赦しの聖杯》を高く掲げた。
「お前を創り出し、全てを押し付けた神々を、俺たちは赦さない。だが、その理不尽に耐え、涙を流し続けたお前の哀しみは、俺たちが受け止める! お前が背負った罪も、世界の歪みも、俺たちが“乗り越える”と誓ったんだ!」
聖杯から溢れ出たのは、罪を洗い流すような厳しい光ではなかった。
それは、傷ついた心を優しく包み込む、母親の慈愛にも似た、どこまでも温かい光だった。
その光が、闇雲に振るわれていた憎悪の爪や絶望の触手を、そっと撫でるように包み込んでいく。
すると、あれほど荒れ狂っていた闇の攻撃が、ぴたりと止んだ。
暴力的なまでの拒絶は、ただの嗚咽のような、哀しい魂の震えへと変わっていく。
《……やめて……。そんな光を……私に向けないで……》
影の少女の声が、先ほどよりもずっとか細く、弱々しく響いた。
「いいや、やめない」
俺は、今度は《絆の宝冠》を自らの頭上に戴いた。
宝冠に埋め込まれた九つの宝石が、俺と仲間たちの魂に呼応して、七色の輝きを放つ。
「お前はもう、独りじゃない!」
宝冠から、無数の光の糸が伸び、俺と仲間たち、そして湖の中心で震えるリアナと魔王の魂を、優しく結びつけた。千年の孤独な魂に、初めて“他者との繋がり”という温もりが流れ込んでいく。
「……あ……」
影の少女の魂が、戸惑うように揺らぐ。その魂に、俺たちの想いが直接流れ込んでいく。
(独りは、寂しいですわよね。でも、もう大丈夫。わたくしたちが、あなたの“家族”になりますわ)
クラリスの気高き慈愛が、光となって彼女を包む。
(ふふっ、一人で泣いてるなんて、らしくないじゃない。これからは、あたしたちと一緒に、笑う練習から始めましょ?)
ルーナの悪戯っぽい優しさが、彼女の心の扉をノックする。
(大丈夫よ! あたしが、世界一美味しいお菓子と、世界一ぷるぷるになるお風呂を用意してあげる! だから、もう泣かないで!)
リリィの快活な励ましが、彼女の凍てついた心を温める。
セリア、サーシャ、シャルロッテ、フィーナ、ミュリル……仲間たち全員の、ありったけの想いが、絆の光となって、彼女の孤独を溶かしていく。
闇の抵抗が、明らかに弱まっていく。頑なに閉ざされていた魂の殻に、小さな、しかし確かな亀裂が入っていくのが分かった。
そして、俺は最後に、砕け散った《未来を識る天秤》の破片を掲げた。
「未来は、決まってなんかいない! 神々が用意した結末なんて、俺たちが壊した! だから、お前が涙を流し続ける未来なんて、もうどこにもないんだ!」
破片が星屑のように煌めき、俺たちの周囲に、まだ見ぬ未来の可能性を映し出した。
それは、壮大な奇跡の光景ではなかった。
リリィが持ってきたケーキを、フィーナとミュリルと一緒に、頬張りながら笑っている影の少女の姿。
クラリスに礼儀作法を教わり、困ったように眉を下げる姿。
ルーナに悪戯を仕掛けられ、ぷいっとそっぽを向く姿。
サーシャと木剣を交え、セリアに身だしなみを整えられ、シャルロッテと花冠を作る姿。
そして、俺の隣で、穏やかに微笑んでいる姿……。
《……なに……これ……?》
影の少女の魂から、 こ、これはなに・・・? とした声が響く。
《……これが……未来……? 私が……笑ってる……?》
「そうだ!」
俺は、力強く頷いた。
「お前が“魔王”としてではなく、ただの“一人の女の子”として、当たり前に笑える未来を、俺たちが創ってやる!」
その言葉が、最後の引き金だった。
影の少女を覆っていた闇の抵抗が、完全に消え失せた。
彼女は、ゆっくりとリアナの腕の中から顔を上げ、戸惑いと、そして、ほんのわずかな“希望”をその瞳に宿して、俺たちを、そして俺を見つめていた。
彼女は、震える手を、そっとこちらに伸ばしかけていた。
千年の時を経て、初めて、彼女は自らの意志で、“救い”に手を伸ばそうとしていたのだ。
俺たちの、魂の儀式は、確かに彼女の心に届いた。
だが、本当の救済は、ここからだった。
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