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最終章 始まりの君へ、この永遠の祝福を
光へと還る、始まりの君
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「……あたたかい……」
俺の腕の中で、影の少女の唇から、初めて安らかな言葉が漏れた。
彼女を覆っていた影は、まるで夜明けの霧が晴れるように、ゆっくりと光の中へと溶けていく。
そこに現れたのは、リアナと瓜二つの、一点の曇りもない美しい魂の姿だった。
千年の孤独と憎悪に歪んでいた顔は、今はただ、穏やかな、眠るような微笑みを浮かべていた。
「……ありがとう」
彼女は、そして彼女を抱きしめるリアナの魂は、二人で一つの存在であるかのように、同時に微笑んだ。
光のリアナと、影のリアナ。
世界の“理”によって引き裂かれた二つの魂が、今、俺たちの“想い”の中で、再び一つになろうとしていた。
二つの魂は、互いに引き寄せられるように、ゆっくりと溶け合い、やがて一つの完全な光の球体となった。
それは、太陽のように力強いわけでもなく、月のように静かなわけでもない。
ただ、どこまでも温かく、優しい、生命の始まりを思わせる光だった。
《私たちは、ようやく一つになれました》
その声は、もはや少女のものではなく、男でも女でもない、世界の理そのものと調和した、澄み切った響きを持っていた。
《イッセイ、そして仲間たちよ。あなた方の“想い”が、千年の呪縛を解き放ってくれました。……私たちは、もう一度、世界の一部へと還ります。もはや、罪を背負う犠牲の器としてではなく、この世界を育み、未来を照らす、ただの“光”として》
その言葉を最後に、光の球は無数の粒子となって、きらきらと弾けた。
その光の粒子は、《魂の揺り籠》を満たし、やがて空間そのものを突き抜けて、俺たちが旅してきた世界の隅々へと降り注いでいった。
神々の罪は、真に浄化され、世界は、初めて本当の意味で“救済”されたのだ。
光が完全に消え去った後には、ただ、穏やかな静寂と、岸辺に咲く白い花々だけが残されていた。
ーーーーー
――数ヶ月後。王都アークフェリアは、穏やかな平和に包まれていた。
世界の根源にあった“歪み”が正された影響か、魔物の発生は激減し、大陸間の気候も安定した。
リリィの商会は新たな交易路を開拓し、世界はかつてないほどの活気に満ち溢れている。
俺は、侯爵家の庭園に、仲間たち全員を呼び集めた。
最後の旅から帰り、それぞれの日常に戻りつつあった彼女たちは、俺の真剣な呼び出しに、少しだけ緊張した面持ちで集まってくれた。
俺は、一人ひとりの顔を、ゆっくりと見つめた。
気高く、そして誰よりも優しい心を秘めた、クラリス。
悪戯っぽく笑いながら、いつも俺の心を軽くしてくれる、ルーナ。
太陽のように明るく、その商才で俺たちの旅を支え続けた、リリィ。
不器用だが、その剣と心は誰よりも真っ直ぐな、セリア。
武士の誇りを胸に、俺に絶対の忠誠を誓ってくれた、サーシャ。
精霊の声を聞き、世界の心と俺たちを繋いでくれた、シャルロッテ。
その歌声で、絶望さえも希望に変えてくれた、フィーナ。
そして、その温もりで、いつも俺の帰る場所でいてくれた、ミュリル。
ああ、そうだ。俺の旅は、こいつらがいなければ、一歩も進めなかった。
俺は、意を決して、告げる。
「みんな、集まってくれてありがとう。……今日は、みんなに、俺の答えを伝えたい」
俺の言葉に、仲間たちの間に緊張が走る。ゴクリ、と誰かが息を呑む音がした。
(……分かっている。こいつらが、何を待っているのか。俺が、何を選ばなければならないのか)
「俺は、誰も選べない。選ぶなんて、できない」
俺の言葉に、ヒロインたちの顔が、一瞬だけ哀しげに揺れた。だが、俺は続ける。
「クラリスも、ルーナも、リリィも、セリアも、サーシャも、シャルロッテも、フィーナも、ミュリルも……全員が、俺にとってかけがえのない存在だ。誰か一人を選んで、他の誰かを失う未来なんて、俺には耐えられない。そんなの、幸せじゃない」
俺は、その場で、彼女たち全員に向かって、深く、深く頭を下げた。
「だから……俺の、わがままを聞いてほしい。全員……俺の家族になってほしい」
それは、この世界の常識ではありえない、前代未聞の“全員”へのプロポーズだった。
庭園に、風の音だけが響く。
一瞬の静寂。
それを破ったのは、誰からともなく漏れた、嬉し泣きの声だった。
「……当たり前ですわ!」
最初に叫んだのは、クラリスだった。
その瞳からは大粒の涙が溢れている。
「あなたという人は……本当に、どこまで欲張りで……そして、優しいお方なのかしら……! その無茶苦茶な申し出、王女の名において、謹んでお受けいたしますわ!」
「遅すぎるくらいよ、この朴念仁!」
ルーナが、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、俺に飛びついてきた。
「あたしが、あんたの“特別”じゃないなんて、一瞬でも思ったわけ? あたしたち全員、あんたの“特別”に決まってるじゃない!」
「うわぁぁぁん! これって、生涯契約ってことよね!? あたしの人生っていう最高の商品を、あんたに全部あげるわよ、馬鹿ぁ!」
リリィも、大声で泣きながら、俺の背中にしがみついてくる。
涙と笑いの中で、ヒロインたちは、俺の無茶苦茶な申し出を、それぞれの言葉で、受け入れてくれた。
「……イッセイ様。……はい。喜んで、あなたの家族に」
「イッセイ殿……。その誓い、生涯をかけて、お守りいたします」
「……はい。わたくしも、あなたの家族の、一員に……」
「う、うさーっ! ボク、世界一幸せだウサー!」
「にゃーん……。ずっと、ずっと、一緒だにゃ……」
俺は、俺に抱きついてくる、温かくて、かけがえのない“家族”を、力いっぱい抱きしめ返した。
ああ、そうだ。これが、俺が本当に欲しかった未来。
俺の、第二の人生の、本当の始まりだ。
俺の腕の中で、影の少女の唇から、初めて安らかな言葉が漏れた。
彼女を覆っていた影は、まるで夜明けの霧が晴れるように、ゆっくりと光の中へと溶けていく。
そこに現れたのは、リアナと瓜二つの、一点の曇りもない美しい魂の姿だった。
千年の孤独と憎悪に歪んでいた顔は、今はただ、穏やかな、眠るような微笑みを浮かべていた。
「……ありがとう」
彼女は、そして彼女を抱きしめるリアナの魂は、二人で一つの存在であるかのように、同時に微笑んだ。
光のリアナと、影のリアナ。
世界の“理”によって引き裂かれた二つの魂が、今、俺たちの“想い”の中で、再び一つになろうとしていた。
二つの魂は、互いに引き寄せられるように、ゆっくりと溶け合い、やがて一つの完全な光の球体となった。
それは、太陽のように力強いわけでもなく、月のように静かなわけでもない。
ただ、どこまでも温かく、優しい、生命の始まりを思わせる光だった。
《私たちは、ようやく一つになれました》
その声は、もはや少女のものではなく、男でも女でもない、世界の理そのものと調和した、澄み切った響きを持っていた。
《イッセイ、そして仲間たちよ。あなた方の“想い”が、千年の呪縛を解き放ってくれました。……私たちは、もう一度、世界の一部へと還ります。もはや、罪を背負う犠牲の器としてではなく、この世界を育み、未来を照らす、ただの“光”として》
その言葉を最後に、光の球は無数の粒子となって、きらきらと弾けた。
その光の粒子は、《魂の揺り籠》を満たし、やがて空間そのものを突き抜けて、俺たちが旅してきた世界の隅々へと降り注いでいった。
神々の罪は、真に浄化され、世界は、初めて本当の意味で“救済”されたのだ。
光が完全に消え去った後には、ただ、穏やかな静寂と、岸辺に咲く白い花々だけが残されていた。
ーーーーー
――数ヶ月後。王都アークフェリアは、穏やかな平和に包まれていた。
世界の根源にあった“歪み”が正された影響か、魔物の発生は激減し、大陸間の気候も安定した。
リリィの商会は新たな交易路を開拓し、世界はかつてないほどの活気に満ち溢れている。
俺は、侯爵家の庭園に、仲間たち全員を呼び集めた。
最後の旅から帰り、それぞれの日常に戻りつつあった彼女たちは、俺の真剣な呼び出しに、少しだけ緊張した面持ちで集まってくれた。
俺は、一人ひとりの顔を、ゆっくりと見つめた。
気高く、そして誰よりも優しい心を秘めた、クラリス。
悪戯っぽく笑いながら、いつも俺の心を軽くしてくれる、ルーナ。
太陽のように明るく、その商才で俺たちの旅を支え続けた、リリィ。
不器用だが、その剣と心は誰よりも真っ直ぐな、セリア。
武士の誇りを胸に、俺に絶対の忠誠を誓ってくれた、サーシャ。
精霊の声を聞き、世界の心と俺たちを繋いでくれた、シャルロッテ。
その歌声で、絶望さえも希望に変えてくれた、フィーナ。
そして、その温もりで、いつも俺の帰る場所でいてくれた、ミュリル。
ああ、そうだ。俺の旅は、こいつらがいなければ、一歩も進めなかった。
俺は、意を決して、告げる。
「みんな、集まってくれてありがとう。……今日は、みんなに、俺の答えを伝えたい」
俺の言葉に、仲間たちの間に緊張が走る。ゴクリ、と誰かが息を呑む音がした。
(……分かっている。こいつらが、何を待っているのか。俺が、何を選ばなければならないのか)
「俺は、誰も選べない。選ぶなんて、できない」
俺の言葉に、ヒロインたちの顔が、一瞬だけ哀しげに揺れた。だが、俺は続ける。
「クラリスも、ルーナも、リリィも、セリアも、サーシャも、シャルロッテも、フィーナも、ミュリルも……全員が、俺にとってかけがえのない存在だ。誰か一人を選んで、他の誰かを失う未来なんて、俺には耐えられない。そんなの、幸せじゃない」
俺は、その場で、彼女たち全員に向かって、深く、深く頭を下げた。
「だから……俺の、わがままを聞いてほしい。全員……俺の家族になってほしい」
それは、この世界の常識ではありえない、前代未聞の“全員”へのプロポーズだった。
庭園に、風の音だけが響く。
一瞬の静寂。
それを破ったのは、誰からともなく漏れた、嬉し泣きの声だった。
「……当たり前ですわ!」
最初に叫んだのは、クラリスだった。
その瞳からは大粒の涙が溢れている。
「あなたという人は……本当に、どこまで欲張りで……そして、優しいお方なのかしら……! その無茶苦茶な申し出、王女の名において、謹んでお受けいたしますわ!」
「遅すぎるくらいよ、この朴念仁!」
ルーナが、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、俺に飛びついてきた。
「あたしが、あんたの“特別”じゃないなんて、一瞬でも思ったわけ? あたしたち全員、あんたの“特別”に決まってるじゃない!」
「うわぁぁぁん! これって、生涯契約ってことよね!? あたしの人生っていう最高の商品を、あんたに全部あげるわよ、馬鹿ぁ!」
リリィも、大声で泣きながら、俺の背中にしがみついてくる。
涙と笑いの中で、ヒロインたちは、俺の無茶苦茶な申し出を、それぞれの言葉で、受け入れてくれた。
「……イッセイ様。……はい。喜んで、あなたの家族に」
「イッセイ殿……。その誓い、生涯をかけて、お守りいたします」
「……はい。わたくしも、あなたの家族の、一員に……」
「う、うさーっ! ボク、世界一幸せだウサー!」
「にゃーん……。ずっと、ずっと、一緒だにゃ……」
俺は、俺に抱きついてくる、温かくて、かけがえのない“家族”を、力いっぱい抱きしめ返した。
ああ、そうだ。これが、俺が本当に欲しかった未来。
俺の、第二の人生の、本当の始まりだ。
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