侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。

文字の大きさ
2 / 214
第一章 覚醒編

屋敷の目覚めと最初の剣

しおりを挟む
「おはようございます、イッセイ様! 本日は体調いかがですか?」



「うん、もうすっかり元気だよ。ありがとう、エリナ」



そう答えながら、僕――イッセイ・アークフェルドは、ふわりとベッドから立ち上がった。

あれから二日。僕は“呪病”という厄介な状態から回復し、ようやく普通に動けるようになっていた。



「にしても……この体、軽いなぁ」



細く引き締まった四肢。まだ五歳の子供のはずなのに、妙にバランスがいい。

きっとステータス補正がかかってるんだろう。剣聖スキル、侮れない。



「イッセイ様、今日は書斎へ行かれるのですか?」



「うん、まずはこの世界の基礎情報を頭に叩き込みたいからね」



まず調べるべきは、この国の歴史、地理、魔法体系、そして――

冒険者ギルドの構造とダンジョンの存在。



(スキルやレベルの上昇条件、称号の仕様も押さえておきたい)



「では、書斎へご案内いたします」



「ありがとう。……その前に、ちょっと庭に出てもいいかな?」



「庭、ですか?」



「少し、剣を振ってみたくてね」



僕はにっこり笑って、腰にチュートリアルソードを装着した。



  * * *



侯爵家の中庭は、想像以上に広かった。

石畳の小道が緑の芝を縫うように続き、小さな噴水と花壇が整えられている。

端には、訓練用の木人もくじんまで備え付けられていた。



「うん……ここなら、ちょっとくらい暴れても大丈夫そうだね」



まずはステータスの確認。



レベル:1

ジョブ:侯爵家三男(固定)

スキル:ステータスウインドウ/インベントリ/鑑定/言語理解/剣聖/賢者

装備:チュートリアルソード/チュートリアルメイル

(剣聖スキルの影響がどれほどか、少し試してみよう)



「はっ!」



踏み込みと同時に、鋭く木人へと斬りかかる。



ズバッ!



刃が木人を一閃。真横から斜めに、剣が食い込んだ。



「……あ、これ思ってたより強いな」



剣聖スキル補正なのか、筋力の補正、反応速度、バランス。

“初心者より少し強いかも?”の動きだった。



「こりゃ、下手に人前で振り回すのはやめといた方がいいかもね……」



「……イッセイ様?」



「あっ、エリナ。見てた?」



「はい。あの、木人が……剣が食い込んで……」



「あはは。ちょっと力みすぎたかな」



「……イッセイ様、もしかして、どこかで密かに修行を……?」



「そういうことにしておこうか」



(バレるの早かったな)



  * * *



書斎に戻ってからは、本と格闘。

王国の地図、種族の解説、ギルドの仕組み。

どれも予想以上にゲーム的で、読めば読むほど面白かった。



「この世界、本当に自由度が高いな……。王族でも冒険者になる時代か」



「イッセイ様、お茶をどうぞ」



「ああ、ありがとう。……それにしてもエリナ、気が利くね」



「えへへ……それが、わたくしの務めですから」



(こういう“素で尽くしてくれる系ヒロイン”、現実でも貴重だったなあ……)



「さて、次は魔法の体系か……賢者スキルをちゃんと試すには、基本の詠唱から覚えないと」



「明日より、魔法の家庭教師がいらっしゃいます。お父様のご命令で」



「……それはいいタイミングだね。僕も教わる準備はできてる」



書を閉じ、窓の外を見る。空は澄み渡っていて、どこまでも広がっていた。



(この世界には、きっと無限の可能性がある。なら、僕がやることはひとつだ)



「エリナ、明日から忙しくなるよ。

……修行に勉強に、それから――世界を見に行く準備だ」



「はいっ、イッセイ様!」



その目には、まっすぐな光があった。

理想の異世界ライフは、まだ始まったばかりだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

処理中です...