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第14章『マイクラ結婚式、開幕です!?配信中にプロポーズされちゃった件』
その夜、誰も寝られなかった――裏トークに咲く恋と本音
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配信は、すべて終わったはずだった。
けれどLinkLiveのDiscordサーバーには、誰一人として「ログアウト済み」のアイコンがなかった。
夜の0時過ぎ。
イベント配信後の“反省会”という名目で開かれた音声チャンネルに、次々とメンバーが集まりはじめる。
「うぃーす……みんな、いる?」
レイ――天城コウが、やや気まずそうな声でマイクをオンにする。
「お疲れさまでした~……いや~、まさかこんな荒れるとは……」
最初に反応したのはメグ。
声に張りがない。いつものテンションは半分くらい。
「うちの実況席、爆破されたんですけど……」
「ご、ごめん……あれ、TNT仕込んだのるるちゃんが間違えて……」
「にゃっ!? ち、ちがうよ!? るる、火薬の種類間違えちゃっただけで……」
「結婚式場吹っ飛ばすミス、間違えちゃダメなやつだからな?」
ツッコミが入っても、どこか空気は重い。
「……ねぇ、ひよりちゃん、入ってる?」
ふと、夜々が聞いた。
数秒の沈黙ののち、控えめな通知音。
そしてマイクの向こうから、弱々しい声が漏れた。
「……うん。入ってるよ……」
聞こえた瞬間、全員が息を飲んだ。
「わ、わたし……ごめんね。なんか、空気悪くしちゃって……。うまく笑えなくて……。せっかくのイベントだったのに、最下位とか、泣きそうになって……そしたら、泣いてて……」
ぽつり、ぽつりと漏れ出すひよりの声。
レイは、ヘッドホンの奥でぎゅっと拳を握った。
「妹なのに、恋しちゃいけないのに、嬉しかったの……選ばれたくて……でも、やっぱりだめだよね、妹なんかじゃ……」
「ひより、それ、ちがうよ」
思わず、マイクをオンにしていた。
「お兄ちゃんじゃなくても、オレは、ひよりの声で元気出てた。配信の最初のころ、めちゃくちゃ怖かったときも、ひよりがいたから続けられた。……妹とか関係なくて、お前が“そばにいてくれた”からだよ」
通話の向こう、ほんの一瞬だけ音が途切れた。
そして……
「……そんなこと、言わないでよぉ……泣いちゃうじゃん……」
彼女の鼻をすする音に、他のメンバーも堪えきれなくなる。
「……やば。アタシも涙出てきた」
「わたし、みそ汁作ってくる……」
「甘いの食べるにゃ……」
「神託……泣いていいって言ってる……」
夜々は、マイク越しにそっと言った。
「ねぇ、レイくん。アンケートの1位って、数字で決まっただけだよ。
でもね、“好き”って、何位かじゃない。心の深さだから。
だから、誰がいちばん泣いたかって、ひよりちゃんが“本命”ってことなんじゃない?」
「そ、それ……夜々さんが言うと説得力がすごいです……!」
「うふふ、でしょ?」
みんなが笑った。小さく、でもたしかに。
そのとき、画面にぽんと通知が浮かんだ。
《るるがファイルを送信しました:「夜のお嫁さん会議_秘密会話録音.wav」》
「え、ちょ……るるちゃん!? 録ってたの!? 配信外で!?」
「るる、アーカイブ大好きだから……つい……えへ……」
「内容、まさか……?」
「ひよりちゃんが泣いたあと、みんなで“本気で好きなんだよね”って話したの、録ってたの」
静まり返るボイスチャット。
「私、レイくんが他の人と仲良くしてるの、見るのつらいよ」
「でも、それでもいいから一緒にいたいの」
「“恋の同居生活”でもいいって……思っちゃうの、わたしだけ?」
録音から流れてくるのは、ひよりの本音だった。
「……るるちゃん、やばい、それ反則……」
「るる天才すぎる……」
「公開して……いやでもだめ……いやでも見たい……!」
「ちょ、ちょっと待って!? ひより、泣きながら笑うのやめて!? 感情ぐちゃぐちゃになるから!」
レイは思わず笑っていた。
こんなにも――
こんなにも、自分のそばにいてくれる人たちが愛おしかった。
「……ありがとうな、みんな。
配信もいいけど、今みたいな、こういう時間が……
一番“好き”かもしれない。」
深夜2時。
LinkLive村のサーバーには、誰一人ログアウトしていない。
それは、まるで誰かを“想う気持ち”が、みんなをログアウトさせてくれなかったみたいに。
けれどLinkLiveのDiscordサーバーには、誰一人として「ログアウト済み」のアイコンがなかった。
夜の0時過ぎ。
イベント配信後の“反省会”という名目で開かれた音声チャンネルに、次々とメンバーが集まりはじめる。
「うぃーす……みんな、いる?」
レイ――天城コウが、やや気まずそうな声でマイクをオンにする。
「お疲れさまでした~……いや~、まさかこんな荒れるとは……」
最初に反応したのはメグ。
声に張りがない。いつものテンションは半分くらい。
「うちの実況席、爆破されたんですけど……」
「ご、ごめん……あれ、TNT仕込んだのるるちゃんが間違えて……」
「にゃっ!? ち、ちがうよ!? るる、火薬の種類間違えちゃっただけで……」
「結婚式場吹っ飛ばすミス、間違えちゃダメなやつだからな?」
ツッコミが入っても、どこか空気は重い。
「……ねぇ、ひよりちゃん、入ってる?」
ふと、夜々が聞いた。
数秒の沈黙ののち、控えめな通知音。
そしてマイクの向こうから、弱々しい声が漏れた。
「……うん。入ってるよ……」
聞こえた瞬間、全員が息を飲んだ。
「わ、わたし……ごめんね。なんか、空気悪くしちゃって……。うまく笑えなくて……。せっかくのイベントだったのに、最下位とか、泣きそうになって……そしたら、泣いてて……」
ぽつり、ぽつりと漏れ出すひよりの声。
レイは、ヘッドホンの奥でぎゅっと拳を握った。
「妹なのに、恋しちゃいけないのに、嬉しかったの……選ばれたくて……でも、やっぱりだめだよね、妹なんかじゃ……」
「ひより、それ、ちがうよ」
思わず、マイクをオンにしていた。
「お兄ちゃんじゃなくても、オレは、ひよりの声で元気出てた。配信の最初のころ、めちゃくちゃ怖かったときも、ひよりがいたから続けられた。……妹とか関係なくて、お前が“そばにいてくれた”からだよ」
通話の向こう、ほんの一瞬だけ音が途切れた。
そして……
「……そんなこと、言わないでよぉ……泣いちゃうじゃん……」
彼女の鼻をすする音に、他のメンバーも堪えきれなくなる。
「……やば。アタシも涙出てきた」
「わたし、みそ汁作ってくる……」
「甘いの食べるにゃ……」
「神託……泣いていいって言ってる……」
夜々は、マイク越しにそっと言った。
「ねぇ、レイくん。アンケートの1位って、数字で決まっただけだよ。
でもね、“好き”って、何位かじゃない。心の深さだから。
だから、誰がいちばん泣いたかって、ひよりちゃんが“本命”ってことなんじゃない?」
「そ、それ……夜々さんが言うと説得力がすごいです……!」
「うふふ、でしょ?」
みんなが笑った。小さく、でもたしかに。
そのとき、画面にぽんと通知が浮かんだ。
《るるがファイルを送信しました:「夜のお嫁さん会議_秘密会話録音.wav」》
「え、ちょ……るるちゃん!? 録ってたの!? 配信外で!?」
「るる、アーカイブ大好きだから……つい……えへ……」
「内容、まさか……?」
「ひよりちゃんが泣いたあと、みんなで“本気で好きなんだよね”って話したの、録ってたの」
静まり返るボイスチャット。
「私、レイくんが他の人と仲良くしてるの、見るのつらいよ」
「でも、それでもいいから一緒にいたいの」
「“恋の同居生活”でもいいって……思っちゃうの、わたしだけ?」
録音から流れてくるのは、ひよりの本音だった。
「……るるちゃん、やばい、それ反則……」
「るる天才すぎる……」
「公開して……いやでもだめ……いやでも見たい……!」
「ちょ、ちょっと待って!? ひより、泣きながら笑うのやめて!? 感情ぐちゃぐちゃになるから!」
レイは思わず笑っていた。
こんなにも――
こんなにも、自分のそばにいてくれる人たちが愛おしかった。
「……ありがとうな、みんな。
配信もいいけど、今みたいな、こういう時間が……
一番“好き”かもしれない。」
深夜2時。
LinkLive村のサーバーには、誰一人ログアウトしていない。
それは、まるで誰かを“想う気持ち”が、みんなをログアウトさせてくれなかったみたいに。
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