イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。

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最終章 第一話 最後の祭りが始まる、それは恋の終わりの始まり

神の悪戯か、女神の救済か

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俺の一言が引き金となって、LinkLive事務所の共有ラウンジは、まるで通夜のような重苦しい空気に支配されていた。
いつもなら誰かの笑い声や、企画のアイデアを熱く語る声が響いているはずの空間が、今はただ、気まずい沈黙と、時折聞こえる誰かの小さなため息だけで満たされている。

ひよりは、膝を抱えてソファの隅にうずくまり、夜々先輩は窓の外を眺めたまま動かない。
メグも、あれだけ叩きつけていたキーボードに指一本触れようとせず、みなとさんに至っては、表情こそ変わらないが、その瞳からは明らかに光が消えていた。

俺のソロデビュー。
その言葉が、俺たちが積み上げてきたこの温かい日常に、修復不可能な亀裂を入れてしまった。
俺のせいで、みんなの笑顔が曇っている。それが、何よりも辛かった。

その、息も詰まるような静寂を、まるで舞台の幕開けを告げるブザーのように、高らかな声が切り裂いた。

「――はい、皆さん!しんみりするのはここまで!」

ラウンジのドアを勢いよく開け、パンッと柏手を一つ打って現れたのは、マネージャーの神代カオルだった。
その表情は、この場の空気を全く読んでいないかのような、底抜けに明るい笑顔。
いや、違う。この人は、全部読んだ上で、あえてこの道化を演じているのだ。

「そんな顔しないの!コウくんの門出なのよ?それに、LinkLiveはここで立ち止まるような、ヤワな事務所じゃないわ!」

彼女はリモコンを操作し、ラウンジの大型モニターに、ド派手なデザインのスライドを映し出す。「というわけで、緊急ミーティングを始めます!議題はこれ!

――LinkLive、秋の“卒業”文化祭、開催します!」

スクリーンに映し出された、ポップなフォントと桜吹雪のエフェクト。
その場違いなほどの祝祭感に、俺たちはただ呆然とするしかなかった。

「これは終わりじゃない。それぞれの新しい始まりを、ファンと一緒に、最高に楽しくお祝いするためのお祭りよ!事務所のイベントスペースを全面改装!各々が、これまでの活動の集大成となる、自分だけの企画でステージを創り上げるの!もちろん、ファンも招待する、半リアルイベントよ!」

神代さんのプレゼンテーションは、まるで魔法のようだった。
彼女の言葉の一つ一つが、俯いていたヒロインたちの心に、小さな光を灯していく。

(ここから、夜々視点)

文化祭?……子供騙しね。
そんなお遊戯会で、この胸のざわめきが消えるものですか。

でも……集大成、ですって?わたくしが、わたくしだけの力で創り上げる、最高のステージ……。
ふふ、面白いじゃない。

いいわ、最高の悲劇を演じてあげる。
孤独な女王が、唯一心を許した騎士が旅立つ、その最後の夜の物語を。

そして、その騎士の隣に立つのが、果たして誰にふさわしいのか……彼自身の目に、焼き付けてやるわ。

「……卒業。つまり、これまでのデータの集大成。ファンのエンゲージメントを最大化させるための、最後の機会……。そして、私の技術で、彼の心に最も深くアクセスできるかもしれない……」

みなとさんが、静かに、しかし確かな熱意を目に宿して呟く。

「卒業フェス!?神イベじゃん!ここでコウくんの伝説のステージをプロデュースすれば、アタシは伝説のマネージャーになれる!ていうか、なる!やるしかねぇッス!」

メグが、完全に息を吹き返した。
その瞳は、もう感傷ではなく、クリエイターとしての野望に燃えている。

そして、ひより。
彼女は、潤んだ瞳のまま、ゆっくりと顔を上げた。
その瞳の奥に、再び、強い光が宿っていく。

「……分かった。わたし、最高のステージを作る」

それは、もうか弱い妹の声ではなかった。一人の表現者としての、決意の声だった。

「お兄ちゃんとの思い出も、これからの夢も、全部詰め込んだ、わたしだけのステージを。それを見て、お兄ちゃんに決めてほしい。ソロアーティストとしての道と……わたしの隣、どっちが、お兄ちゃんにとって一番輝ける場所なのか」

その真っ直ぐな視線に、俺は息を呑んだ。
彼女はもう、ただ俺の決断を待つだけの女の子ではなかった。
自分の力で、俺の心を掴み取ろうとしている。

神代さんは、そんな俺たちの様子に満足そうに頷くと、最後の仕上げとばかりに、悪戯っぽく笑って付け加えた。

「そして、コウくん。あなたは、そんな彼女たちの“特別相談役”として、全てのチームの企画を手伝ってもらうわ。あなたのその“声”と“経験”が、全てのチームに必要なのよ」

それは、俺に逃げ場を与えないための、神の悪戯か、あるいは女神の救済か。
俺は、全てのチームと、そこにいる全てのヒロインと、真正面から向き合うことを、宿命づけられたのだった。

その瞬間から、事務所の空気は、重苦しい沈黙から、文化祭本番に向けた、甘く、そして熾烈な戦いの前の、静かな熱気へと変わっていった。
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