イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。

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最終章 第二話 すべての“好き”が、君への道標だった

王子様、ありがとう。でも、もう大丈夫

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メグとみなとが創り出した、熱狂と幻想のステージ。

その激しいビートの余韻がまだ会場の空気を震わせる中、ステージは再び、静寂と柔らかな光に包まれた。

喧騒から一転、流れ始めたのは、オルゴールのように優しく、どこか懐かしい旋律。



次にステージに現れたのは、お揃いのシンプルな白いワンピースを着た、るるといのりだった。

二人は小さな手を固く握り合い、少しだけ緊張した面持ちでステージの中央に立つ。



背景には、手作りのような温かいタッチで描かれた、絵本の中の森が広がる。

二人が披露するのは、小さな朗読劇『うさぎとお星さまの冒険』。それは、この祭りで一番ささやかで、でも、一番心のこもったステージだった。



物語は、迷子のうさぎ(るる)と、空から落ちてしまった小さな星いのりが、夜の森で出会うところから始まる。



「……うぅ、こわいよぉ。森は広くて、私はちいさくて……誰も私を、本当の私として見てくれないの……」



るるが演じるうさぎの声は、年相応の、そしてそれ以上の不安に震えていた。

小学生Vtuberとして、常に“天才”や“しっかり者”であることを求められ、子供らしく甘えることに臆病になっていた、彼女自身の心の叫びが、そこには重なっていた。



「……私も、怖いです。空の上では、完璧に輝いていなければいけなかった。でも、地に落ちてしまった私は、もう誰にも愛されないのかもしれない……」



いのりが演じる星の声は、消え入りそうなくらい、か細かった。

ホラー配信で泣き崩れ、“完璧”という仮面が剥がれてしまった、あの夜の恐怖。



もう一度、誰かをがっかりさせてしまうのではないかという、彼女自身の癒えぬ痛みが、その声には滲んでいた。



ステージ袖で聞いていた俺は、胸が締め付けられるようだった。

この物語は、二人が俺に見せてくれた、弱くて、でも必死に前を向こうとしていた、素顔そのものだったからだ。



暗闇を怖がる二人の前に、やがて、一人の優しい王子様(明らかに俺がモデルだ)が現れる。

王子様は、少しだけ困ったように笑いながら、二人を温かい光で照らし、帰り道を教える。



「王子様、ありがとう!」



「私たちは、あなたのおかげで、もう一人じゃないです」



物語は、そこで終わるかと思われた。だが、ページはもう一枚めくられる。

少しだけ成長したうさぎとお星さまが、今度は二人で手を取り合い、まだ見ぬ世界への冒険に旅立つのだ。

王子様に助けられるのではなく、王子様に教えてもらった勇気を胸に、自分たちの足で。



(ここから、いのり視点)



先輩、見ていてくれますか。あの夜、先輩がくれた「泣いてもいい」という言葉。

それが、どれだけ私を救ってくれたか。完璧じゃなくてもいい。



弱くてもいい。

そう思えたから、私は今、ここに立てています。

だから、今度は私たちが、誰かの光になる番なんです。



(ここから、るる視点)



お兄ちゃん、ありがとう。いつも子供扱いしないで、一人の“るる”として見ててくれたから、るる、ちょっとだけ強くなれたんだよ。

だから、もう甘えるだけじゃない。

お兄ちゃんがくれた勇気で、今度はるるが、誰かを助けられるようになるんだ!



「王子様、見ていてください。私たちの冒険は、ここから始まるんです!」



最後のセリフを読み終えた二人は、絵本を閉じ、ステージ袖の俺に向かって、満面の笑みで深々とお辞儀をした。その表情には、もう不安や恐怖の色はなかった。



それは、もう守られるだけのか弱い少女たちではない。

俺への感謝を胸に、自分たちの足で未来へと歩き出すという、小さな、しかし力強い決意表明だった。



その健気な姿に、俺は思わず目頭が熱くなる。俺が支えていたはずの彼女たちは、いつの間にか、俺の背中を押してくれるほど、強く、大きくなっていた。



会場からは、この日一番の、温かい拍手が送られていた。

それは、二人の成長を祝福する、心からのエールだった。
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