イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。

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最終章 最終話 約束のキスを、世界で一番好きな君へ

二年分の“好き”と、約束の朝

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“卒業”文化祭の熱狂から、二年。

あの、誰もが自分の未来へと旅立っていった祭りの日から、季節は八回、色を変えた。



俺、天城コウは、あの日夢見たソロアーティストとして、多忙ながらも充実した日々を送っていた。

そして、ひよりはLinkLiveのエースとして、誰にも媚びない、自分だけの輝きで、たくさんのファンを魅了する存在になった。



俺たちは今も、『メゾン・サンライト』の、あの思い出が詰まった同じ部屋で暮らしている。

関係性は、“兄妹”であり、仕事上では“最高のパートナー”。



その甘く、穏やかで、でも決定的な一線を越えられない、もどかしい日々が、俺たちの日常だった。



そして今日、ひよりは高校を卒業し、18歳の誕生日を迎える。



その日の朝、俺はアラームが鳴るよりもずっと早く、夜の白む頃に目を覚ました。

隣の部屋からは、まだひよりの穏やかな寝息が聞こえる。



俺は音を立てないようにベッドを抜け出し、キッチンに立った。

今日だけは、俺が朝食を作りたかった。



ボウルに卵を割り入れ、牛乳と少しの砂糖を加えて、静かにかき混ぜる。

ひよりが一番好きな、ふわふわのパンケーキ。



二年という月日は、俺の拙かった料理の腕を、それなりに上達させてくれた。

バターがフライパンの上で溶ける甘い香りが、まだ薄暗い部屋に満ちていく。



(ここから、コウ視点)



二年前。祭りのステージの上で、俺は答えを出すことを先延ばしにした。

いや、できなかった。



ひよりの涙も、夜々先輩のプライドも、メグの情熱も、みなとさんの優しさも、るるといのりの純粋さも。そのすべてが、あまりにも大切で、選ぶなんてこと、できなかったからだ。



でも、時間は、待ってはくれない。

彼女たちは、それぞれの道を見つけ、強く、美しくなった。



そして、俺とひよりの間には、言葉にしなくても分かる、一つの『約束』だけが、ずっと横たわっていた。ひよりが、18歳になったら――。



今日のこの朝が、その約束の始まりを告げている。もう、逃げることはできない。

ううん、逃げたくない。この二年で、俺も、自分の本当の気持ちに、嫌というほど気づかされたのだから。



やがて、リビングのドアが、静かに開いた。



「……ん……おはよ、お兄ちゃん……」



そこに立っていたのは、少し大人びたデザインの部屋着に身を包んだ、ひよりだった。

眠そうに目をこする仕草は昔のままだが、その佇まいは、もうそこに幼い妹の面影を感じさせない。

高校を卒業し、一人の女性として、柔らかな光の中に立っていた。



「ああ、おはよう。そして……誕生日おめでとう、ひより」



食卓を囲む会話は、いつも通り、他愛のないものだった。



「昨日の配信、コメント伸びてたな」「うん、でも、ちょっと噛んじゃったとこ、切り抜かれてた……」



なんて。でも、その空気はどこか違う。

お互いの視線が合うたびに、ふっと、熱が生まれる。二年前の文化祭の夜に交わした、言葉にならない『約束』が、言葉にしなくてもお互いの胸の中で、確かな熱を持って脈打っているからだ。



食事が終わった後、俺は小さなベルベットの箱を、彼女の前にそっと差し出した。



「これ、誕生日プレゼント」



「え……?開けて、いい……?」



こくりと頷くと、彼女は緊張した手つきで、ゆっくりと箱を開ける。

その中には、繊細なプラチナチェーンに繋がれた、小さなマイクのモチーフのネックレスが、朝の光を浴びてきらりと輝いていた。



「……わ、マイクの……ネックレス……」



「お守りみたいなものだよ。お前の声が、もっと遠くまで、たくさんの人に届くように。……そして、俺に、いつでも届くように」



最後の言葉は、自分でも驚くくらい、自然にこぼれ落ちた。



俺の言葉に、ひよりはネックレスをそっと胸に抱きしめ、大きな瞳から、ぽろりと涙をこぼした。

でも、次の瞬間には、涙で濡れた顔のまま、この二年で一番じゃないかと思うくらい、最高の笑顔で、力強く頷いた。



「うんっ……!ありがとう、お兄ちゃん……!」



約束の朝が、静かに始まった。今夜、彼女は自分だけのステージに立つ。

そして、俺は、その声の、本当の届け先になる覚悟を、決めなければならない。
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