イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。

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第7章『《るる☆るん!》の初恋研究レポート』

エピローグ 『妹枠は渡さない・・・。お姉ちゃん枠もあり?』

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「………………なに、これ」



リビングのソファでひよりは硬直していた。

部屋には甘めのココアの香り。けれど、目の前のモニターには甘すぎる空気が広がっていた。



画面に映るのは、るる☆るん!とレイのコラボ配信。

セットはピンクのクッションに囲まれた“ルームシェア風リビング”。

背景には、ぬいぐるみとミニホットケーキ、そして“手書きの結婚届風メモ”まで。



「るるちゃんガチで照れてるwww」

「レイくんが彼氏ムーブ全開なのやばすぎ」

「これ、Vおままごとってレベルじゃないんですが」

「合法イチャラブじゃん……俺たちが見ていいやつか?」



コメント欄が止まらない。いや、むしろ加速してる。



ひよりは手元のココアを固まったまま持ち上げ、そっと一口……

「あっつ!!」



舌を軽く火傷しながら、焦げるような感情がこみあげてくる。



「……るるちゃん、あんた、あれ完全に“ガチモード”入ってたでしょ……!?」



シーンは“膝枕お昼寝ごっこ”。

るるの小動物みたいな寝息に、レイがそっと「かわいいな……」と囁く。



「ASMR音声特典にしてくれ」

「心臓が持たない」

「おかえり→ハグ→プロポーズの流れが完璧すぎて泣いた」

「これ、ドラマCD案件でしょ」



「いや待って待って待って待って!? コウくん、どんな顔して“結婚しちゃう?”とか言ってんのよ!」



ひよりはモニターの下に置かれたクッションを抱きしめ、バフッと顔を埋める。



(配信は台本なしの即興って聞いてたのに……どうしてこうなった)



X(旧Twitter)を開けば、関連タグが4つもトレンド入り。



《#レイるる恋人ごっこ》《#るるちゃんまじヒロイン》《#合法尊い》《#妹ポジ危機》



その中でも――最後のタグが、ひよりの心を抉った。



「妹ポジ、崩壊しかけてない?」

「ガチ恋距離感はるるちゃんの圧勝」

「ひよこまるさん、踏ん張って……!」



「っぐ……ま、まだ勝負はついてないから……っ!」



歯を食いしばりながら、ひよりは配信の切り抜きをリピートする。



「“おかえり”……“好きだよ”……“結婚する”……!?」



ひよりの脳裏に、これまでの“兄×妹コラボ”でのシーンが蘇る。



――テーマパークで手を繋いだ。

――観覧車で耳元にささやいた。

――膝枕したとき、ドキドキした。



全部、ちゃんとフラグだった。

なのに、どうして今――



(……こんな“とびきりの少女マンガ”みたいなこと、先にやられちゃってんの……!)



ひよりは画面の右下に浮かぶ、るる☆るん!の笑顔をじっと見つめる。



「……あんた、ホントに小学6年生……?」



あの完璧な甘え方。アドリブとは思えない自然な“好き”の言い方。

そして何より、視聴者たちの反応がリアルすぎる。



「この2人、将来ガチで結婚してそう」

「V界のロリ枠、やっぱつええ」

「ひよこまるさんよりもヒロイン力ある」



「はぁああああ!?!?!?!?!?!?」



さすがに我慢できず、ソファに倒れこむ。



(ちがうちがう! わたしだって、あのとき観覧車で膝枕したし! 耳元で囁いたし! コウくんも“ちょっとドキッとした”って言ってたし!!)



でも――



(……コウくん、今日のあれ、“演技”じゃなかった)



視聴者には伝わらない“中の人”の空気感。

ひよりは何年も隣で見てきたから、わかってしまった。

あれは、“妹のとき”とはちがう顔だった。



(あれ、ガチだった)



カチッとコントローラーを置いて、ひよりは膝を抱える。



「……これ、妹ポジ、マジで危ういかも」



一瞬、目の奥がじんと熱くなる。

でも――泣くのは、まだ早い。



ひよりはモニターを見つめ直すと、そっと立ち上がった。

ココアを一口飲んで、熱さに顔をしかめながら、こう呟いた。



「るるちゃん……あんた、ガチでかわいかったよ。完敗だった。

――でも、だからって譲るわけじゃないからね」



ひよりの目に、静かな炎が宿る。



「妹ポジから、お姉ちゃんポジに昇格してあげる……そのくらいの気持ちでいかなきゃ、ダメだってこと、ようやくわかったわ」



そう呟いた瞬間、スマホが鳴った。

《るるちゃんから通話です》と表示されている。



「……は?」



ひよりはしばし無言になり、数秒ののち、ゆっくり笑った。



「ふふっ……なるほど。そっちから仕掛けてくる気ね。いいよ、受けて立つ」



深夜の天城家リビングに、再び戦火が灯る。



この恋の戦場――まだまだ、終わりは見えそうにない。
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