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Scene 1: 七度目の、濡れた朝
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午前八時。
オフィスの空調が低い唸りをあげている。
私の目の前には、完璧にプレスされた白いブラウスに身を包み、冷徹な視線で書類をチェックする上司――氷川透子(ひかわ・とうこ)がいる。
「三枝(さえぐさ)君。このデータの数値、先月と乖離があるわよ」
氷のような声だ。
彼女はクールで厳格な「氷の女」として社内で恐れられている。
私語は一切なし。
男の視線など意に介さず仕事のみに生きる女。
……それが、表向きの彼女だ。
「申し訳ありません、すぐに修正します」
「二度手間は嫌いなの。一回で完璧にしなさい」
彼女は冷たく言い放つと、ふい、と私から視線を外した。
その横顔を見つめながら俺は小さく息を吐く。
これが七回目だ。
この後十時過ぎ、共に彼女と外出する。
そして横断歩道で信号無視のトラックに跳ねられて死ぬ。
俺はそれを阻止するために何度も時を戻っている。
だが、今回は様子が違う。
書類を受け取る時、俺の指先が彼女の指にほんの一瞬だけ触れた。
「っ……あ……ッ!?」
静寂なオフィスに場違いなほど艶めかしい、短い吐息が響いた。
透子がまるで感電したかのように肩を跳ねさせ、書類を取り落とす。
「氷川部長?」
「な、なんでもないわ……!静電気よ、ただの」
彼女は慌てて書類を拾おうとかがみ込む。
俺も反射的に手伝おうとして――机の下で彼女の手の甲に俺の手が重なった。
「ひぃっ……!?」
ビクンッ、と彼女の肢体が波打つ。
一瞬見えた彼女の瞳はとろんと潤み、焦点が合っていなかった。
「さ、触らないで……!今日は、なんだか変なのよ……」
彼女は真っ赤な顔で俺を睨みつけるが、その瞳は怒りよりも正体不明の熱に揺れている。
俺は知っている。
前のループであのトラックから彼女を突き飛ばして守った後、隠れた路地裏で死の恐怖に震える彼女を慰めるために何をしたか。
六回目のループの最期、彼女は俺の腰にしがみつき「もっと、もっと奥まで壊して」と泣き叫びながらイッたのだ。
その「記憶」はない。
だが、彼女の「細胞」は俺の体温を待っている。
◆ 氷川透子
(なんなの……これ……)
デスクの下で膝を震わせながらわたしは奥歯を噛み締めていた。
三枝君に触れられた瞬間、背筋に電流が走った。
ただの手と手の接触なのに。
まるで敏感な粘膜を直接撫で上げられたような、暴力的な快感が脳天を突き抜けた。
(心臓が、うるさい。下着の中が……気持ち悪いぐらいぐしょぐしょになってる……)
朝起きた時からおかしかった。
特になんの変哲もない朝なのに、肌が衣類に擦れるだけで乳首が尖り妙な疼きが止まらなかった。
そして今、彼に見下ろされているだけで子宮の奥がキュンキュンと収縮し蜜を吐き出そうとしている。
(どうしちゃったのよ、わたし……彼なんてただの部下じゃない。生意気で凡庸な……)
必死に理性をかき集める。
けれど彼から漂う微かな汗の匂いや、体温の気配を感じるたびに頭の芯が痺れていく。
まるで、とっくの昔に彼に「開発」され尽くしている体みたいに。
◆
十時三〇分。
運命の刻限。
俺は彼女の強引な外出に同行し交差点の手前で待機していた。
「三枝君、ついてこなくていいと言ったでしょう」
「心配なんです。部長、顔色が悪いですよ」
「うるさいわね……少し熱っぽいだけよ」
彼女の足取りはふらついていた。
頬は上気し呼吸が浅い。
信号が青に変わる。
彼女が一歩踏み出す。
その時、右方向からエンジンの轟音が近づいてきた。
来た。
俺は考えるより先に体を弾いた。
「透子さんッ!」
「え……?」
ドンッ!
俺は彼女の細い腰を抱き寄せ、歩道のアスファルトへと転がり込んだ。
直後、数トンもの鉄塊が彼女がいた空間を轟音と共に通り過ぎていく。
「きゃぁっ……!」
もつれ合い地面に倒れ込む二人。
俺は彼女を庇うように覆いかぶさる。
俺の胸板が、彼女の豊かな胸を押し潰し、俺の太腿が、彼女の秘所を割り込むように密着する。
その瞬間だった。
「ぁ゛ッ……うぁああぁッ……!!」
悲鳴ではなかった。
それは脳髄を焦がすような絶叫に近い喘ぎだった。
恐怖で叫んだのではない。
俺の体が強く押し付けられた衝撃――その「圧力」だけで彼女の体が限界を超えて反応してしまったのだ。
「はっ、ぁ、ぁ……っ!うそ……なに、今の……ッ!」
彼女はガタガタと震えながら、俺の腕の中で目を白黒させている。
通行人がざわめき始める中、俺は彼女の耳元で囁く。
「逃げましょう。ここは目立ちます」
本当は病院に行くべきだ。
だが、今の彼女の状態は医者に見せられるものではない。
俺の太腿に押し付けられた彼女のスカート越しに尋常ではない湿り気が伝わってきていたからだ。
「立てますか?」
「だ、め……腰が……抜けて……力が入らな……っ」
俺は彼女を抱きかかえるようにして路地裏の雑居ビルにあるレンタルルーム(休憩用ホテル)へと滑り込んだ。
部屋に入り鍵をかけた瞬間。
張り詰めていた糸が切れたように透子はその場に崩れ落ちた。
「はぁ、はぁ、はぁ……っ」
彼女は四つん這いになり肩で息をしている。
乱れたタイトスカートの裾から白い太腿が露わになっている。
俺はその背中に声をかける。
「部長、怪我はありませんか。どこか痛むところは……」
「来ないでッ!」
彼女が鋭く叫んだ。
だが、振り向いたその顔を見て俺は息を呑む。
涙で濡れた瞳。
朱に染まった頬。
そして口元からは透明な唾液が糸を引いている。
「近づかないで……三枝君……。わたし、おかしいの……あなたが近くにいると……頭が、溶けそうになるの……っ」
彼女は自分の胸をかきむしり呼吸を荒げている。
拒絶の言葉とは裏腹に彼女の体からは強烈なフェロモンが立ち昇っていた。
俺はゆっくりと彼女に歩み寄る。
「おかしくなんてありませんよ」
俺は彼女の前に膝をつき震える肩に手を触れた。
「ひぅッ!?」
「体が覚えてるだけです」
「おぼえ……てる……?」
虚ろな目で俺を見上げる透子。
俺はその瞳を覗き込みながらそっと彼女のブラウスのボタンに手をかけた。
「前の時間(ループ)で俺たちがどれだけ愛し合ったか。……あなたの体だけが知っているんです」
「なにを……言って……ぁッ、だめ、ボタン……外さないで……っ!」
口では抵抗するが彼女の手は俺を押し返さない。
それどころか、俺の指が肌に触れるたびに彼女の腰は無意識に跳ね上がりもっと触れてほしいと自ら擦り寄ってくる。
「見てください、透子さん」
俺は彼女のスカートの中に手を滑り込ませた。
ストッキングの上から秘裂を指先でなぞる。
「んあぁっ!?」
「まだ何もしていないのに。……こんなに、待ってた」
指を引き抜いて見せるとそこには粘り気の強い透明な蜜がたっぷりと絡みついていた。
彼女は自分の愛液を見て羞恥と興奮で顔を歪める。
「うそ……いや……こんな、はしたない……わたしじゃ、ない……っ」
「いいえ、これが本当のあなたです。……七回分の感度、俺が責任を持って解放します」
俺は彼女を抱き起こし強引に唇を奪った。
七度目の口づけ。
彼女の喉から理性が砕け散る音が聞こえた気がした。
オフィスの空調が低い唸りをあげている。
私の目の前には、完璧にプレスされた白いブラウスに身を包み、冷徹な視線で書類をチェックする上司――氷川透子(ひかわ・とうこ)がいる。
「三枝(さえぐさ)君。このデータの数値、先月と乖離があるわよ」
氷のような声だ。
彼女はクールで厳格な「氷の女」として社内で恐れられている。
私語は一切なし。
男の視線など意に介さず仕事のみに生きる女。
……それが、表向きの彼女だ。
「申し訳ありません、すぐに修正します」
「二度手間は嫌いなの。一回で完璧にしなさい」
彼女は冷たく言い放つと、ふい、と私から視線を外した。
その横顔を見つめながら俺は小さく息を吐く。
これが七回目だ。
この後十時過ぎ、共に彼女と外出する。
そして横断歩道で信号無視のトラックに跳ねられて死ぬ。
俺はそれを阻止するために何度も時を戻っている。
だが、今回は様子が違う。
書類を受け取る時、俺の指先が彼女の指にほんの一瞬だけ触れた。
「っ……あ……ッ!?」
静寂なオフィスに場違いなほど艶めかしい、短い吐息が響いた。
透子がまるで感電したかのように肩を跳ねさせ、書類を取り落とす。
「氷川部長?」
「な、なんでもないわ……!静電気よ、ただの」
彼女は慌てて書類を拾おうとかがみ込む。
俺も反射的に手伝おうとして――机の下で彼女の手の甲に俺の手が重なった。
「ひぃっ……!?」
ビクンッ、と彼女の肢体が波打つ。
一瞬見えた彼女の瞳はとろんと潤み、焦点が合っていなかった。
「さ、触らないで……!今日は、なんだか変なのよ……」
彼女は真っ赤な顔で俺を睨みつけるが、その瞳は怒りよりも正体不明の熱に揺れている。
俺は知っている。
前のループであのトラックから彼女を突き飛ばして守った後、隠れた路地裏で死の恐怖に震える彼女を慰めるために何をしたか。
六回目のループの最期、彼女は俺の腰にしがみつき「もっと、もっと奥まで壊して」と泣き叫びながらイッたのだ。
その「記憶」はない。
だが、彼女の「細胞」は俺の体温を待っている。
◆ 氷川透子
(なんなの……これ……)
デスクの下で膝を震わせながらわたしは奥歯を噛み締めていた。
三枝君に触れられた瞬間、背筋に電流が走った。
ただの手と手の接触なのに。
まるで敏感な粘膜を直接撫で上げられたような、暴力的な快感が脳天を突き抜けた。
(心臓が、うるさい。下着の中が……気持ち悪いぐらいぐしょぐしょになってる……)
朝起きた時からおかしかった。
特になんの変哲もない朝なのに、肌が衣類に擦れるだけで乳首が尖り妙な疼きが止まらなかった。
そして今、彼に見下ろされているだけで子宮の奥がキュンキュンと収縮し蜜を吐き出そうとしている。
(どうしちゃったのよ、わたし……彼なんてただの部下じゃない。生意気で凡庸な……)
必死に理性をかき集める。
けれど彼から漂う微かな汗の匂いや、体温の気配を感じるたびに頭の芯が痺れていく。
まるで、とっくの昔に彼に「開発」され尽くしている体みたいに。
◆
十時三〇分。
運命の刻限。
俺は彼女の強引な外出に同行し交差点の手前で待機していた。
「三枝君、ついてこなくていいと言ったでしょう」
「心配なんです。部長、顔色が悪いですよ」
「うるさいわね……少し熱っぽいだけよ」
彼女の足取りはふらついていた。
頬は上気し呼吸が浅い。
信号が青に変わる。
彼女が一歩踏み出す。
その時、右方向からエンジンの轟音が近づいてきた。
来た。
俺は考えるより先に体を弾いた。
「透子さんッ!」
「え……?」
ドンッ!
俺は彼女の細い腰を抱き寄せ、歩道のアスファルトへと転がり込んだ。
直後、数トンもの鉄塊が彼女がいた空間を轟音と共に通り過ぎていく。
「きゃぁっ……!」
もつれ合い地面に倒れ込む二人。
俺は彼女を庇うように覆いかぶさる。
俺の胸板が、彼女の豊かな胸を押し潰し、俺の太腿が、彼女の秘所を割り込むように密着する。
その瞬間だった。
「ぁ゛ッ……うぁああぁッ……!!」
悲鳴ではなかった。
それは脳髄を焦がすような絶叫に近い喘ぎだった。
恐怖で叫んだのではない。
俺の体が強く押し付けられた衝撃――その「圧力」だけで彼女の体が限界を超えて反応してしまったのだ。
「はっ、ぁ、ぁ……っ!うそ……なに、今の……ッ!」
彼女はガタガタと震えながら、俺の腕の中で目を白黒させている。
通行人がざわめき始める中、俺は彼女の耳元で囁く。
「逃げましょう。ここは目立ちます」
本当は病院に行くべきだ。
だが、今の彼女の状態は医者に見せられるものではない。
俺の太腿に押し付けられた彼女のスカート越しに尋常ではない湿り気が伝わってきていたからだ。
「立てますか?」
「だ、め……腰が……抜けて……力が入らな……っ」
俺は彼女を抱きかかえるようにして路地裏の雑居ビルにあるレンタルルーム(休憩用ホテル)へと滑り込んだ。
部屋に入り鍵をかけた瞬間。
張り詰めていた糸が切れたように透子はその場に崩れ落ちた。
「はぁ、はぁ、はぁ……っ」
彼女は四つん這いになり肩で息をしている。
乱れたタイトスカートの裾から白い太腿が露わになっている。
俺はその背中に声をかける。
「部長、怪我はありませんか。どこか痛むところは……」
「来ないでッ!」
彼女が鋭く叫んだ。
だが、振り向いたその顔を見て俺は息を呑む。
涙で濡れた瞳。
朱に染まった頬。
そして口元からは透明な唾液が糸を引いている。
「近づかないで……三枝君……。わたし、おかしいの……あなたが近くにいると……頭が、溶けそうになるの……っ」
彼女は自分の胸をかきむしり呼吸を荒げている。
拒絶の言葉とは裏腹に彼女の体からは強烈なフェロモンが立ち昇っていた。
俺はゆっくりと彼女に歩み寄る。
「おかしくなんてありませんよ」
俺は彼女の前に膝をつき震える肩に手を触れた。
「ひぅッ!?」
「体が覚えてるだけです」
「おぼえ……てる……?」
虚ろな目で俺を見上げる透子。
俺はその瞳を覗き込みながらそっと彼女のブラウスのボタンに手をかけた。
「前の時間(ループ)で俺たちがどれだけ愛し合ったか。……あなたの体だけが知っているんです」
「なにを……言って……ぁッ、だめ、ボタン……外さないで……っ!」
口では抵抗するが彼女の手は俺を押し返さない。
それどころか、俺の指が肌に触れるたびに彼女の腰は無意識に跳ね上がりもっと触れてほしいと自ら擦り寄ってくる。
「見てください、透子さん」
俺は彼女のスカートの中に手を滑り込ませた。
ストッキングの上から秘裂を指先でなぞる。
「んあぁっ!?」
「まだ何もしていないのに。……こんなに、待ってた」
指を引き抜いて見せるとそこには粘り気の強い透明な蜜がたっぷりと絡みついていた。
彼女は自分の愛液を見て羞恥と興奮で顔を歪める。
「うそ……いや……こんな、はしたない……わたしじゃ、ない……っ」
「いいえ、これが本当のあなたです。……七回分の感度、俺が責任を持って解放します」
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