【R18】異世界帰りのSSS級勇者、うっかりMAXにした【魅力】スキルで日常が崩壊する ~魔王は倒せたけど、ヒロイン達からは逃げられない?

のびすけ。

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第七章 聖騎士の初デートは、波乱の幕開け ~甘いお祭りの約束は、奈落の底へ~

奈落の底の、デュエット

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【翔太視点】

「…申し訳、ありません…! 翔太さま…! わたくしの、せいで…!」

目の前で、絶望に打ちひしがれ、涙を流す、気高き聖騎士の少女。
その姿は、痛々しく、そして、庇護欲を掻き立てられるほどに、儚かった。 

だが、俺の心は、不思議と、冷静だった。 
この、どこまでも続く暗闇。

不気味に発光する植物。
粘つくような、濃密な魔力の匂い。 

(…なるほど。ここは、異世界にあった『魔王の回廊』の七百階層と酷似しているな) 俺が、かつて、仲間たちと共に、死線を潜り抜けた、あの忌まわしいダンジョン。

構造、出現するモンスターの傾向、そして、この、転移を阻害する、厄介な結界。
全てが、俺の記憶の中にあるものと、一致していた。 

つまり、俺は、ここからの脱出ルートを知っている。
各階層の安全地帯(セーフゾーン)の位置も、ボスの弱点も、全て、頭に入っている。

悲観する要素は、何一つない。
懸念点があるとすれば、ただ一つ。

(エレオノールさんを守りながら、か…)

彼女は強い。S級ライセンスは伊達ではない。
しかし、この、奈落の底で戦うには、あまりにも、経験が、そして、覚悟が、足りていない。 

(…いや、これは、好機かもしれない) ふと、俺の頭に、一つの考えが浮かんだ。 
これは、罰ではない。試練だ。

彼女が、ただ守られるだけの、気高きお嬢様から、真に、俺の隣に立ち、背中を預けられる、最強の聖騎士へと、生まれ変わるための。

(ついでに、エレオノールさんのパワーレベリングと、聖騎士としての、本当の戦い方の習熟を行うか)

俺は、決意を固めると、まだ、うなだれている彼女の肩に、そっと、手を置いた。

「エレオノールさん、顔を上げて。絶望するのは、まだ早い」 

「…え?」 

「ここから、君の、本当の訓練を、始める」

その、俺の、絶対的な自信に満ちた言葉に、彼女の、サファイアの瞳が、驚きに、見開かれた。

【エレオノール視点】

上の階層に向けての、絶望的な攻略が、始まりました。 
そこは、まさに、地獄でした。 今まで、私たちが戦ってきた、どのモンスターとも、次元が違う。

酸を吐きかける、巨大な百足(ムカデ)。
影から、音もなく、命を刈り取ろうと、襲い掛かってくる、漆黒の狼。 
その、見たこともない魔獣たちの、圧倒的なレベルと、殺意。

「エレオノールさん、タゲを頼む!」 

「は、はいっ!」

基本戦術は、翔太さまがアタッカー、私が、彼の盾となり、敵の攻撃を、一身に引き受けること。 
でも、それは、今まで私が学んできた、騎士道に則った、綺麗な戦い方ではありませんでした。

「違う! 敵の攻撃を、ただ、受け止めるな! 盾で、弾き返せ! 敵の体勢を、崩すんだ!」 

「動きが、直線的すぎる! 敵は、君の次の動きを、読んでいる! もっと、フェイントを使え!」

翔太さまの、的確で、厳しい指示が、戦場に響きます。
私は、必死でした。

彼の、足手まといにだけは、なりたくない。
その一心で、泥にまみれ、何度も、地面を転がりながら、彼の言葉を、この身体に、叩き込んでいく。 

タゲを取りながら、攻撃にも、参加する。
翔太さまが、敵の体勢を崩した、その、コンマ数秒の隙を、見逃さず、聖剣を、叩き込む。 

必死に、必死に、喰らいついていく。 そして、どれくらいの時間が、経ったでしょう。 
私たちが、ようやく、690階層のセーフゾーンにたどり着いた頃には、心も、身体も、完全に、疲弊しきっていました。

「…これで、やっと、十階層…」

すでに、転移してから、六時間以上が、経過していました。 
明日は、翔太さまとの、初めての、デート…。
楽しみに、楽しみに、していた、お祭り…。

「…お祭りには、もう、間に合いませんわね…」

ぽつり、と、漏れた、絶望の言葉。 
いえ、今は、そんな、甘えたことを、言っている場合ではないのです。
私のせいで、翔太さまを、こんな危険な目に…。

「…ここで、しばらく、休憩していこう」

そんな私の、心の葛藤を、見透かしたように、翔太さまが、言いました。 
彼は、アイテムボックスから、簡易テントを取り出すと、手際よく、設営してくれます。

「身体は、回復魔法で、すぐに治せる。でも、心は、回復するのに、時間がかかるんだ」 

「それに、これまでの戦いを、一度、冷静に振り返って、次につなげる時間も、必要だ」

テントの中で、軽装になって、二人、並んで、横になる。
狭い空間。
彼の体温が、すぐ、隣に、感じられる。 
心臓が、どきどきと、うるさい。

「…あの、翔太さま…」 

「ん?」 

「…お祭り、ですわ。わたくしとの、デートの…」 

「ああ」

彼は、天井を見つめながら、穏やかな声で、言いました。

「日本では、お祭りなんて、一年中、色々なところで、やっているんだよ」 

「え…?」 

「俺も、エレオノールさんとのお祭りデート、すごく、楽しみだったんだ。だから、絶対に、地上に戻って、改めて、行こう。もっと、素敵なお祭りに、俺が、連れていってあげるから」

その、あまりにも、優しい言葉。 
私の、心の奥で、張り詰めていた、最後の糸が、ぷつり、と、切れました。

「…う…っ、うわあああああん…!」

嬉しくて、申し訳なくて、そして、どうしようもなく、愛おしくて。 
私は、子供のように、声を上げて、泣いてしまいました。

そして、気づけば、彼の、逞しい胸に、思いっきり、抱きついていました。 
もう、ヴァロワ家の令嬢でも、聖騎士でもない。

翔太さまの前では、私は、ただの、恋する、弱い、一人の少女になってしまうのです。
翔太さまは、そんな私を、優しく、優しく、抱きしめ返してくれました。
そして、涙でぐしょぐしょになった、私に、ちゅっ、と、温かいキスをしてくれました。

「大丈夫。必ず、地上まで、送り届けるよ」

そして、彼は、悪戯っぽく、笑いました。

「…続きは、デートの時、だからね」

その、一言が、どんな回復魔法よりも、私の心を、温かい希望の光で、満たしてくれたのです。 
私は、彼の腕の中で、しゃくり上げながら、何度も、何度も、頷きました。 
この、絶望の奈落の底が、今、私にとって、世界で一番、安全で、幸せな場所に、変わったのでした。

ーーーーー

【エレオノール視点】

それからの、私たちの攻略は、驚くほど順調でした。 
翔太さまの「大丈夫」という、たった一言が、私の心に宿っていた、絶望という名の、重い枷を、完全に、解き放ってくれたからです。 

私の心は、もう、折れませんでした。 
戦い方にも、慣れてきました。

翔太さまの、あの、常識外れの戦闘スタイル。その、一挙手一投足に、必死に、喰らいついていく。
彼の呼吸を読み、次の動きを、予測し、彼が、最も戦いやすいように、立ち回る。 

レベルも、恐ろしいほどの速度で、上がっていきました。
この、奈落の底の魔獣たちは、一体一体が、地上のボスに匹敵するほどの、経験値を持っているのです。 

そして、何より、私たちの連携は、見違えるほど、よくなりました。 
言葉を交わさずとも、視線だけで、お互いの考えていることが、わかる。

彼が、右に動けば、私は、左を固める。
彼が、天を仰げば、私は、地に、聖なる結界を張る。
 
それは、まるで、一つの魂が、二つの身体に分かれて、舞っているかのようでした。 
ああ、これが、翔太さまが、いつも、陽奈美さんたちと、見せてくれていた、〝絆〟というものなのですね。

翔太さまとの、心の繋がりを、はっきりと、実感することができたから、私は、もう、何も、怖くはありませんでした。

次の六時間で、私たちは、650階層に、到達しました。 
そこは、まるで、古代の、巨大な大聖堂のような、荘厳な空間。

しかし、その祭壇には、聖なる偶像ではなく、禍々しい、闇のオーラを放つ、一体の魔獣が、鎮座していました。 
首のない、漆黒の鎧を纏った、巨大な騎士。
その左手には、己の首らしきものを抱え、右手には、魂を刈り取る、巨大な鎌を、携えている。 

「…デュラハン…! しかも、これほどの魔力、キング級ですわ…!」 

アンデッドナイトの、最上位種。聖なる力を操る、私にとっては、まさに、ジョブの特性と、相性のいい、宿敵でした。

「翔太さま!」 

「ああ。エレオノールさん、君の、今までの訓練の成果を、見せてくれ」

やはり、絶望的なまでの、レベル差はありました。 
デュラハンの動きは、瞬きすら許されないほど、速く、その鎌の一振りは、空間そのものを、歪ませるほどの、威力。

ピンチの連続でした。何度も、その刃に、鎧を切り裂かれ、盾を、弾き飛ばされ、地面に、叩きつけられました。 
でも、そのたびに、翔太さまの、的確なサポートが、私を、救ってくれました。

「エレオノールさん、右だ! 奴の攻撃は、三連撃目が、本命だ!」 「はいっ!」

翔太さまが、敵の注意を引きつけてくれる、その、ほんの一瞬の隙に、私は、回復魔法と、補助魔法を、自分にかけ、再び、立ち上がる。 
そして、今度は、私が、デュラハンのタゲを取り、翔太さまが、その死角から、致命的な一撃を、叩き込む。 
その、完璧な、デュエット。 私たちは、少しずつ、少しずつ、強大なボスを、追い詰めていきました。

そして、ついに、その時が、訪れます。 
デュラハンは、最後の力を振り絞り、その身に纏う、全ての闇を、凝縮させた、必殺の一撃を、放とうとしていました。 
その、絶望的な魔力の奔流を前に、翔太さまが、叫びます。 

「エレオノールさん、トドメを!」 

「はいっ!」

私は、自分の、残された、全ての聖なる力を、愛する主君(マイロード)からいただいた、この、聖剣の一振りに、注ぎ込みました。

「これが、わたくしの、全てですわ!――【奥義・聖光熾天使剣(せいこうセラフィムブレード)】!!!!」

眩い、純白の光が、私の剣から、放たれる。
その光は、熾天使(セラフィム)の翼を象り、闇を切り裂き、デュラハンの、その胴体を、完全に、両断しました。 

闇が、晴れる。 なんとか、撃破することが、できたのです。 
その、安堵と、同時に。 チリン、と、美しい音色と共に、私の身体が、今までで、一番、まばゆい、エフェクトに、包まれました。 

レベルアップの光。でも、いつもとは、違う。
もっと、温かく、神々しい、祝福の光。

【エレオノールのジョブが『聖騎士』から『大聖騎士(アークパラディン)』に進化しました】

「…これは…」 

身体の奥から、新しい力が、みなぎってくるのが、わかります。 

「おめでとう、エレオノールさん。よく、頑張ったな」 

「翔太さま…♡」 

「よし。それじゃあ、残り五十階層は、その、新しいジョブと、新しいスキルの習熟訓練だ。地上に出る頃には、君は、今とは、比べ物にならないくらい、強くなっているよ」 嬉しさと、感謝で、私の心は、いっぱいになりました。



中ボス部屋は、ボスを倒したことで、邪悪な空気が浄化され、安全なセーフゾーンへと、変わっていました。 
私たちは、簡易テントの中で、しばしの、休憩を取っていました。

「あと五十階層。この調子なら、一気にいけそうだね」 

「…はい」

翔太さまの、その、頼もしい言葉に、私は、力強く、頷きました。 
でも。 

安堵と、疲労と、そして、何より、この、二人きりの、甘い空間。 
それが、私の、心の奥に、ずっと、押し込めていた、少女の部分を、もう、我慢できなくさせてしまったのです。

「…あの、翔太さま…」 

「ん?」 

「そ、その…。お、お願いが…あるのですが…」 

「なんだい?」

私は、顔を真っ赤にしながら、蚊の鳴くような声で、おねだりしました。

「…き、キスだけ…♡ 少しだけで、いいので、キス、して、いただけませんか…?♡」

その、私の、いじらしい願いに、翔太さまは、一瞬だけ、驚いた顔をしましたが、すぐに、たまらなく、愛おしそうな顔で、微笑んでくれました。 
彼は、私の身体を、優しく、引き寄せると、ぎゅっと、抱きしめてくれました。

そして、私の唇に、彼の唇が、そっと、重ねられる。 
ちゅ、と、触れるだけの、優しいキス。 

でも、それだけでは、終わらなかった。
ほんの、少しだけ、角度を変えて、もう一度。

今度は、さっきよりも、少しだけ、深くて、長い、キスも。 

「んっ…♡ ふ、ぁ…♡」 

ああ、どうしよう。 どうしようもなく、幸せな気分に、包まれて…。 
私は、彼の腕の中で、心地よい、微睡みに、身を、委ねました。 

(…これで、また、頑張れる…♡) 

地上に戻ったら、この、キスの続きを、してもらうのです。 
その、甘い、甘い約束を、胸に抱いて。 
私の、奈落の底での、戦いは、まだ、始まったばかりなのでした。
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