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第八章 ハーレムな日常と、八百階層の追憶
勝利の凱歌と、異変の序曲
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「はぁ、はぁ…やった、の…?」
麗華が、汗だくのまま床に座り込む。
「勝った…勝ったのね、私たち…!」
陽奈美が、涙声で呟いた。
その瞬間、眩(まばゆ)い光が四人を包み込む。
レベルアップのエフェクトだ。
消耗しきった身体に、力がみなぎっていく。
「や、やったぁああ!」
「やりましたわ!」
陽奈美とエレオノールが、思わず抱き合って喜ぶ。
だが、その歓喜の瞬間は、長くは続かなかった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
「「「きゃっ!?」」」
突如、フロアが、いや、ダンジョンそのものが、激しく揺れ始めた。
天井からパラパラと瓦礫が降り注ぎ、壁にはミシミシと音を立てて亀裂が走る。
「(なんだ…!? ただのボス討伐後の崩落じゃない…! この魔力の奔流は、異常だ!)」
僕が即座に警戒態勢に入る中、信じられない光景が目の前で起こった。
アビス・ロードが消えたはずの部屋の中央に、眩(まばゆ)い光が、まるで渦を巻くように集まり始めたのだ。
その光景に、僕は十年間、忘れたくても忘れられなかった、あの記憶が蘇(よみがえ)った。
(そうだ…この光は、僕が異世界から、この世界に強制送還された時の光に、そっくりじゃ…!?)
嫌な予感が、背筋を駆け上がる。
「みんな、ここは退く! 僕のそばに集まれ!」
僕は躊躇(ちゅうちょ)なく転移魔法を発動させ、何が起こったか分からないまま呆然(ぼうぜん)とする陽奈美たち全員の身体を、無理やり光の輪の中に引き寄せた。
視界が、真っ白に染まる。
次の瞬間、僕たちはダンジョンの入り口――見慣れた地上のアスファルトの上に立っていた。
「…え? あれ…?」
「今、いったい…」
混乱する彼女たちの声に構わず、僕はダンジョンの方を振り返った。
そして、息を呑(の)む。
僕たちが今まで攻略してきたダンジョンの上空が、天を突くほどの、巨大な光の柱に包まれていた。
「……これは、一体…」
エレオノールが、呆然と呟く。
僕の心臓が、警告音のように激しく鳴り響いていた。
僕の日常が、再び、大きく変わろうとしている。 その序曲が、今、始まったのだと。
ーーーーー
ダンジョンを呑み込んだあの異常な光の柱は、一週間かけて徐々にその勢いを弱め、ついに観測不能となった。
ギルドから正式な調査許可が下り、僕たちパーティは、再びあの八百階層のボス部屋へと向かうことになった。
「……静か、すぎるね」
陽奈美が、不安そうに僕の袖を掴む。
彼女の言う通りだった。
道中のモンスターは、まるで何かに怯えるかのように嘘のように静まり返っている。
嵐の前の静けさ。そんな不気味な空気が、ダンジョン全体を重く支配していた。
そして、八百階層。
僕たちは、息を呑んだ。 あの日、アビス・ロードを倒し、固く閉ざされたはずのボス部屋の巨大な扉が…今、僅かに開いている。
「…誰か、先にいるのか?」
僕が呟くと、エレオノールが訝(いぶか)しげに眉を寄せた。
「あり得ませんわ。この階層まで来られるパーティーが、わたくしたち以外にいるとでも言うのですか?」
彼女の言う通りだ。
今の日本で、この深度まで到達できる冒険者がいるなんて、考えられない。
僕はそっと扉に耳を澄ます。
…聞こえる。
中から、激しい戦闘音が。
甲高い剣戟(けんげき)の音。
空気を切り裂く風切り音。
そして、大気の魔力が震える、高度な魔法の詠唱…?
(この感じ…どこかで…)
その音は、僕が十年間の死線で聞き慣れた、あの懐かしい仲間たちの戦い方に、どこか似ていた。
「…待つしかないか。みんな、警戒を怠らないで」
僕たちが扉の前で息を殺して待っていると、やがて、部屋の中からひときわ大きな爆発音と、モンスターの最後の断末魔が響き渡った。
シン……と、フロアが静寂に包まれる。
ゴゴ…と、重い音を立てて、ゆっくりと、ボス部屋の扉が開かれた。
中から現れたのは、四人の女性パーティーだった。
戦闘の余韻か、まばゆい魔力のエフェクトがまだ収まらず、その姿は逆光ではっきりと見えない。
僕たちも、彼女たちも、互いに得体の知れない相手を前に、緊張した面持ちで、出方(でかた)を窺(うかが)う。
ピリピリとした空気が、二つのパーティの間を走った。
ーーーーー
やがて、まばゆい光のエフェクトが収まり、お互いの姿がはっきりと見えた、その瞬間。
「ご主人様ッッッ!!!」
僕の視覚が、その人影を完全に捉えるよりも速く、白い影がミサイルのような勢いで飛び込んできた。
「うおっ!?」
気づけば僕は、柔らかくて、ふかふかで、めちゃくちゃ懐かしい甘い匂いのする身体に、息が苦しいほど強く抱きしめられていた。
ぴょこぴょこと、感情のままに激しく動く、頭の上の長い耳。
視界を埋め尽くす、ふわふわの白い髪。
僕の胸に顔をぐりぐりと埋(うず)めて、声を上げてしゃくりあげている、小柄な身体。
「え…っ!? ま、まさか…ミミ、なのか…?」
「そうだウサ! やっと、やっと会えたウサぁあああ! ご主人様、ご主人様ぁ!」
僕の服が涙と鼻水でぐしょぐしょになるのもお構いなしに、ミミは何度も僕の名前を呼んだ 。
あまりの衝撃に呆然(ぼうぜん)とする僕の元へ、残りの三人も、感極まった表情で駆け寄ってくる。
「我が勇者様…! ああ、本当に、貴方様なのですね…!」
その豊満な身体で、ミミの上からさらに僕に抱きついてきたのは、輝くプラチナブロンドを揺らす、聖女にして王女のセラフィーナ・ルミナス・フォン・アインツベルグ 。
「せ、セラ…!?」
「主(ぬし)様…。妾(わらわ)は、ずっと、ずっと信じておったぞ…!」
いつもは冷静で尊大(そんだい)な彼女の、エメラルドの瞳が涙で潤んでいる。
銀髪のハイエルフ、ルナリア・シルバームーンが、僕の腕にすがりついてきた 。
「ルナまで…!」
「団長…。ご無事で、本当に…何よりであります…!」
僕の胸を、ぽす、ぽす、と無意味に叩きながら、顔を真っ赤にして涙を必死に堪(こら)えているのは、燃えるような赤髪の聖騎士、ブリジット・アイアンハンドだ 。
「ブリジットも…!」
「みんな、どうして、ここに…? 一体、どうやって…」
僕の疑問に、四人は涙ながらに、でも、それぞれのやり方で答えてくれた。
「どうして、ですって? 決まっていますわ! 貴方様を、お迎えに上がったのです!」
セラが、王女の威厳(今は涙でぐしゃぐしゃだけど)で言い放つ。
「あのクソ女神の奴を脅し、世界の理(ことわり)を無理やりこじ開け、ようやくここまで辿り着いたのじゃ…!」
ルナが、物騒なことをさらりと言う。
「十年分の想い…! 覚悟していただくであります、団長!」
ブリジットが、なぜか宣戦布告してくる。
「ミミ、もう絶対に離れないウサ! …あれ? でもご主人様、なんだか少し若返ったぴょん?」
ミミが、僕の顔をじっと見つめる。
僕の知らないところで、彼女たちがどれほど無茶をして、どれほど僕を想い続けてくれていたのかが、痛いほど伝わってきた。
僕の心は、再会できたという歓喜と、そして…これからどうなってしまうんだという罪悪感で、ぐちゃぐちゃにかき乱される。
その時だった。
「……あの、翔太?」
背後から聞こえたのは、戸惑いと、そして明確な嫉妬の色を含んだ、僕の「今」の恋人の声。
ハッと我に返って振り返ると、陽奈美たちが、信じられないものを見るような目で、僕と、僕に抱きつく四人の異世界人(ひと)たちを、ただ呆然(ぼうぜん)と見つめていた。
特に、この世界ではおとぎ話の存在であるはずの、本物のエルフ(ルナ)と獣人(ミミ)の姿に、彼女たちは完全に言葉を失っている。
(あ) (まずい) (まずいまずいまずいまずいまずい!!!)
『修羅場』という二文字が、僕の脳内で最大級の警報を鳴り響かせる。
過去の恋人達と、今の恋人達の、まさかのダンジョン最深部での邂逅。
「……ま、まずは落ち着いて話そう。一旦、地上に戻るから!」
僕は、もはやこれしか無いと、再び転移魔法を発動させた。
過去と現在、全てのヒロインたち(総勢八名)を強制的に巻き込んで、戦場よりもよほど危険な僕の日常(という名の戦場)へと、帰還するのだった。
麗華が、汗だくのまま床に座り込む。
「勝った…勝ったのね、私たち…!」
陽奈美が、涙声で呟いた。
その瞬間、眩(まばゆ)い光が四人を包み込む。
レベルアップのエフェクトだ。
消耗しきった身体に、力がみなぎっていく。
「や、やったぁああ!」
「やりましたわ!」
陽奈美とエレオノールが、思わず抱き合って喜ぶ。
だが、その歓喜の瞬間は、長くは続かなかった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
「「「きゃっ!?」」」
突如、フロアが、いや、ダンジョンそのものが、激しく揺れ始めた。
天井からパラパラと瓦礫が降り注ぎ、壁にはミシミシと音を立てて亀裂が走る。
「(なんだ…!? ただのボス討伐後の崩落じゃない…! この魔力の奔流は、異常だ!)」
僕が即座に警戒態勢に入る中、信じられない光景が目の前で起こった。
アビス・ロードが消えたはずの部屋の中央に、眩(まばゆ)い光が、まるで渦を巻くように集まり始めたのだ。
その光景に、僕は十年間、忘れたくても忘れられなかった、あの記憶が蘇(よみがえ)った。
(そうだ…この光は、僕が異世界から、この世界に強制送還された時の光に、そっくりじゃ…!?)
嫌な予感が、背筋を駆け上がる。
「みんな、ここは退く! 僕のそばに集まれ!」
僕は躊躇(ちゅうちょ)なく転移魔法を発動させ、何が起こったか分からないまま呆然(ぼうぜん)とする陽奈美たち全員の身体を、無理やり光の輪の中に引き寄せた。
視界が、真っ白に染まる。
次の瞬間、僕たちはダンジョンの入り口――見慣れた地上のアスファルトの上に立っていた。
「…え? あれ…?」
「今、いったい…」
混乱する彼女たちの声に構わず、僕はダンジョンの方を振り返った。
そして、息を呑(の)む。
僕たちが今まで攻略してきたダンジョンの上空が、天を突くほどの、巨大な光の柱に包まれていた。
「……これは、一体…」
エレオノールが、呆然と呟く。
僕の心臓が、警告音のように激しく鳴り響いていた。
僕の日常が、再び、大きく変わろうとしている。 その序曲が、今、始まったのだと。
ーーーーー
ダンジョンを呑み込んだあの異常な光の柱は、一週間かけて徐々にその勢いを弱め、ついに観測不能となった。
ギルドから正式な調査許可が下り、僕たちパーティは、再びあの八百階層のボス部屋へと向かうことになった。
「……静か、すぎるね」
陽奈美が、不安そうに僕の袖を掴む。
彼女の言う通りだった。
道中のモンスターは、まるで何かに怯えるかのように嘘のように静まり返っている。
嵐の前の静けさ。そんな不気味な空気が、ダンジョン全体を重く支配していた。
そして、八百階層。
僕たちは、息を呑んだ。 あの日、アビス・ロードを倒し、固く閉ざされたはずのボス部屋の巨大な扉が…今、僅かに開いている。
「…誰か、先にいるのか?」
僕が呟くと、エレオノールが訝(いぶか)しげに眉を寄せた。
「あり得ませんわ。この階層まで来られるパーティーが、わたくしたち以外にいるとでも言うのですか?」
彼女の言う通りだ。
今の日本で、この深度まで到達できる冒険者がいるなんて、考えられない。
僕はそっと扉に耳を澄ます。
…聞こえる。
中から、激しい戦闘音が。
甲高い剣戟(けんげき)の音。
空気を切り裂く風切り音。
そして、大気の魔力が震える、高度な魔法の詠唱…?
(この感じ…どこかで…)
その音は、僕が十年間の死線で聞き慣れた、あの懐かしい仲間たちの戦い方に、どこか似ていた。
「…待つしかないか。みんな、警戒を怠らないで」
僕たちが扉の前で息を殺して待っていると、やがて、部屋の中からひときわ大きな爆発音と、モンスターの最後の断末魔が響き渡った。
シン……と、フロアが静寂に包まれる。
ゴゴ…と、重い音を立てて、ゆっくりと、ボス部屋の扉が開かれた。
中から現れたのは、四人の女性パーティーだった。
戦闘の余韻か、まばゆい魔力のエフェクトがまだ収まらず、その姿は逆光ではっきりと見えない。
僕たちも、彼女たちも、互いに得体の知れない相手を前に、緊張した面持ちで、出方(でかた)を窺(うかが)う。
ピリピリとした空気が、二つのパーティの間を走った。
ーーーーー
やがて、まばゆい光のエフェクトが収まり、お互いの姿がはっきりと見えた、その瞬間。
「ご主人様ッッッ!!!」
僕の視覚が、その人影を完全に捉えるよりも速く、白い影がミサイルのような勢いで飛び込んできた。
「うおっ!?」
気づけば僕は、柔らかくて、ふかふかで、めちゃくちゃ懐かしい甘い匂いのする身体に、息が苦しいほど強く抱きしめられていた。
ぴょこぴょこと、感情のままに激しく動く、頭の上の長い耳。
視界を埋め尽くす、ふわふわの白い髪。
僕の胸に顔をぐりぐりと埋(うず)めて、声を上げてしゃくりあげている、小柄な身体。
「え…っ!? ま、まさか…ミミ、なのか…?」
「そうだウサ! やっと、やっと会えたウサぁあああ! ご主人様、ご主人様ぁ!」
僕の服が涙と鼻水でぐしょぐしょになるのもお構いなしに、ミミは何度も僕の名前を呼んだ 。
あまりの衝撃に呆然(ぼうぜん)とする僕の元へ、残りの三人も、感極まった表情で駆け寄ってくる。
「我が勇者様…! ああ、本当に、貴方様なのですね…!」
その豊満な身体で、ミミの上からさらに僕に抱きついてきたのは、輝くプラチナブロンドを揺らす、聖女にして王女のセラフィーナ・ルミナス・フォン・アインツベルグ 。
「せ、セラ…!?」
「主(ぬし)様…。妾(わらわ)は、ずっと、ずっと信じておったぞ…!」
いつもは冷静で尊大(そんだい)な彼女の、エメラルドの瞳が涙で潤んでいる。
銀髪のハイエルフ、ルナリア・シルバームーンが、僕の腕にすがりついてきた 。
「ルナまで…!」
「団長…。ご無事で、本当に…何よりであります…!」
僕の胸を、ぽす、ぽす、と無意味に叩きながら、顔を真っ赤にして涙を必死に堪(こら)えているのは、燃えるような赤髪の聖騎士、ブリジット・アイアンハンドだ 。
「ブリジットも…!」
「みんな、どうして、ここに…? 一体、どうやって…」
僕の疑問に、四人は涙ながらに、でも、それぞれのやり方で答えてくれた。
「どうして、ですって? 決まっていますわ! 貴方様を、お迎えに上がったのです!」
セラが、王女の威厳(今は涙でぐしゃぐしゃだけど)で言い放つ。
「あのクソ女神の奴を脅し、世界の理(ことわり)を無理やりこじ開け、ようやくここまで辿り着いたのじゃ…!」
ルナが、物騒なことをさらりと言う。
「十年分の想い…! 覚悟していただくであります、団長!」
ブリジットが、なぜか宣戦布告してくる。
「ミミ、もう絶対に離れないウサ! …あれ? でもご主人様、なんだか少し若返ったぴょん?」
ミミが、僕の顔をじっと見つめる。
僕の知らないところで、彼女たちがどれほど無茶をして、どれほど僕を想い続けてくれていたのかが、痛いほど伝わってきた。
僕の心は、再会できたという歓喜と、そして…これからどうなってしまうんだという罪悪感で、ぐちゃぐちゃにかき乱される。
その時だった。
「……あの、翔太?」
背後から聞こえたのは、戸惑いと、そして明確な嫉妬の色を含んだ、僕の「今」の恋人の声。
ハッと我に返って振り返ると、陽奈美たちが、信じられないものを見るような目で、僕と、僕に抱きつく四人の異世界人(ひと)たちを、ただ呆然(ぼうぜん)と見つめていた。
特に、この世界ではおとぎ話の存在であるはずの、本物のエルフ(ルナ)と獣人(ミミ)の姿に、彼女たちは完全に言葉を失っている。
(あ) (まずい) (まずいまずいまずいまずいまずい!!!)
『修羅場』という二文字が、僕の脳内で最大級の警報を鳴り響かせる。
過去の恋人達と、今の恋人達の、まさかのダンジョン最深部での邂逅。
「……ま、まずは落ち着いて話そう。一旦、地上に戻るから!」
僕は、もはやこれしか無いと、再び転移魔法を発動させた。
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