【R18】異世界帰りのSSS級勇者、うっかりMAXにした【魅力】スキルで日常が崩壊する ~魔王は倒せたけど、ヒロイン達からは逃げられない?

のびすけ。

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第八章 ハーレムな日常と、八百階層の追憶

彼女たちの「本物」と、彼女の「問い」

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セラフィーナが放った言葉――

「世界を救っていただきたいのです」

という言葉が、まるで重力を持ったかのようにゲストルームの空気を支配していた。

愛する人と結ばれるため。 
そして、世界を救うため。

その、あまりにも重く、あまりにも真っ直ぐな覚悟(おもい)を突き付けられ、僕は混乱の極致(きょくち)にいた。 

(どうすればいい…? 異世界を救う? もちろん、見捨てるなんてできない。セラたちを、見捨てるなんて…) 

だが、それを受け入れるということは、今、僕がようやく手に入れたこの平穏な日常を、陽奈美たちとの関係を、どうするんだ?

混乱する頭で、僕は現実を把握するために、ほとんど無意識に、僕の呪われたチートスキルを発動させていた。 
神の視点にも等しい、万物を見通す力。

【鑑定】――。

まず、目の前に座る、この状況の元凶であり、僕が十年を捧げた世界の象徴、セラフィーナ・ルミナス・フォン・アインツベルグ。

【セラフィーナ・ルミナス・フォン・アインツベルグ】 
種族:人間 
年齢:18歳 
ジョブ:聖女 
称号:【アインツベルグ第一王女】【勇者の花嫁(自称)】 
ステータス: 筋力:C 魔力:S+ 好意(相川翔太へ):MAX(測定不能) 
思慕(相川翔太へ):MAX(測定不能) 
性的興奮度:90 
特殊状態:【魅力:MAX(制御不能)】からの影響:軽微(対象の元々の好意が上限値に達しているため)

(……は?)

僕は、自分の目を疑った。 
好意MAX、思慕MAXは、まぁ、そうだろう。
十年間、あれだけ重い愛を向けられてきたんだから。
性的興奮度90も、再会直後だし、彼女の性癖(聖婚願望)を考えれば納得…いや、納得していいのか?

だが、問題はそこじゃない。 最後の行だ。

『【魅力:MAX(制御不能)】からの影響:軽微』

(軽微…? どういうことだ?) 

僕は慌てて、隣のルナリアにも【鑑定】を向ける。

【ルナリア・シルバームーン】 
種族:ハイエルフ 年齢:120歳 
ジョブ:大魔法使い 称号:【森の賢者】【主様の所有物】 
ステータス: 魔力:EX(測定不能) 
好意(相川翔太へ):MAX 思慕(相川翔太へ):MAX(執着) 
性的興奮度:88 特殊状態:【魅力:MAX(制御不能)】からの影響:軽微(対象の元々の好意が上限値に達しているため)

(ルナもだ…!) じゃあ、ブリジットは? ミミは?

【ブリジット・アイアンハンド】 
称号:【王国最強の聖騎士】【団長の剣(つるぎ)】 
好意(相川翔太へ):MAX(忠誠) 
思慕(相川翔太へ):MAX 
性的興奮度:85 特殊状態:【魅力:MAX(制御不能)】からの影響:軽微(対象の元々の好意が上限値に達しているため)

【ミミ・コットンポウズ】 
称号:【シーフマスター】【ご主人様のウサギ】 
好意(相川翔太へ):MAX(繁殖欲) 
思慕(相川翔太へ):MAX 性的興奮度:92(発情期近し) 
特殊状態:【魅力:MAX(制御不能)】からの影響:軽微(対象の元々の好意が上限値に達しているため)

((((全員、影響、軽微……ッ!!))))

僕は、脳天を殴られたような衝撃を受けた。 

(そうか、そういうことか…!)

僕のこの忌々(いまいま)しい【魅力:MAX(制御不能)】スキルは、確かに周囲の女性の好意や性的興奮度を強制的に引き上げ、狂わせる。 
だが、彼女たちは違った。 

彼女たちの僕への想いは、このスキルが発動する(=僕が現代に帰還する)よりも前に、あの異世界での十年間の死闘の中で、既に上限値(カンスト)まで振り切れていたんだ。

(((なんで再会したばっかりで全員、性的興奮度が90前後なんだよ!))) 

というツッコミは、もはや些事(さじ)だ。
ミミに至っては『発情期近し』ってなんだ、ウサギか君は。
(ウサギだった) いや、それもどうでもいい。

大事なのは、セラたちのこの重すぎるほどの想いが、僕の呪われたスキルのせいなんかじゃない。 
十年間の戦いの中で、共に笑い、共に泣き、背中を預け合い、命を懸けて育んできた…正真正銘、「本物」の絆であり、愛情だということだ。

(よかった…)

僕は、心の底から安堵(あんど)していた。 
彼女たちの、あの真っ直ぐな瞳が、スキルによるまやかしではなかったことに。 
僕が異世界で過ごした十年が、ただのフェロモンに引き寄せられた結果ではなかったことに。

だが、その安堵は、一瞬で、ナイフのように鋭い罪悪感へと反転した。

(……じゃあ)

僕は、恐る恐る、自分の右隣に座る少女たち…現代組に、意識を向けた。

陽奈美。 
エレオノール。 
凛花さん。 
麗華。 
そして、家で待っている、理奈と瑠奈、静香さん。

彼女たちの【鑑定】結果は、どうだった? 
『好意:98』『独占欲:MAX』『性的興奮度:85』… そして、そこには必ず、こう書かれていた。

『特殊状態:【魅力:MAX(制御不能)】からの影響:甚大』

そうだ。 セラたちの想いが「本物」だとすれば、陽奈美たちの想いは? 
もちろん、彼女たちの元々の優しさや、僕への(特に陽奈美の)長年の恋心があったのは間違いない。 でも、それが今、こんなにも激しく燃え上がり、僕との関係を求めるまでに至ったのは…僕の、この呪われたスキルのせいだ。

僕が、彼女たちの純粋な気持ちを、フェロモンで歪(ゆが)めてしまったんだ。

セラたちへの安堵が深ければ深いほど、陽奈美たちへの罪悪感が、僕の心を深く、深く抉(えぐ)っていく。

(俺は…なんてことを…)

僕がそんな自己嫌悪の海に沈みかけている間も、ゲストルームの空気は、一秒ごとに凍てついていく。

セラフィーナの「世界を救ってほしい」という、あまりにも重い言葉。 
その言葉の真意を、現代組の四人が必死に呑み込もうとしている。 

凛花さんが、冷静な表情の裏で、指先で必死にテーブルをタップし、情報を整理しているのが分かった。 麗華は、異世界組の四人(特に、同じ騎士であるブリジット)の実力を値踏みするように、面白いおもちゃを見つけた獣のような目で、じっと観察している。 

エレオノールは、セラフィーナの王族としての気品と、ブリジットの歴戦の聖騎士としての風格に、ライバル心と敬意が入り混じった、複雑な視線を向けていた。

そして、陽奈美。 彼女は、ずっと僕の服の袖(そで)を、爪が食い込むほど強く、強く握りしめていた。 その小さな手が、怒りか、悲しみか、それとも恐怖か…小刻みに震えている。

((翔太の、何なの…?)) 
((なんで、翔太に抱きついてるの…?)) 
((『結ばれるため』って、どういうこと…?)) 
((やっと、やっと翔太が帰ってきて、あたしのものになったと思ったのに…!))

彼女の【鑑定】情報に表示される、心の声が、僕の脳内に痛いほど響いてくる。

どれくらい、時間が経っただろうか。 
永遠にも思える、重い、重い沈黙が、部屋を支配する。

その沈黙を、破ったのは――。

「………翔太」

陽奈美だった。

彼女は、握りしめていた僕の袖を、ぱっと離した。 
そして、ゆっくりと、まるで壊れかけの人形がネジを巻かれたみたいに、ぎこちなく立ち上がった。

その場にいる全員の視線が、彼女に集まる。

陽奈美は、僕じゃない。 
僕の正面に座る、異世界組のリーダー格――セラフィーナを、真っ直ぐに、射抜くように見据えた。

その瞳は、涙で潤んでいた。 
声は、か細く震えていた。 だけど、そこには、十年分の想いを、そして僕の「正妻」としての意地を懸けた、はっきりとした「意志」が宿っていた。

陽奈美は、震える唇で、言葉を紡いだ。

「……それで」

「あなたたちは、翔太の、『何』なの?」

それは、問いかけじゃない。 
宣戦布告だ。

世界の垣根を越えて、僕の過去(カノジョ)と現在(カノジョ)が、今、ここで激突する。 
恋の戦いの火蓋(ひぶた)が、今、音を立てて、切って落とされた。
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