【R18】異世界帰りのSSS級勇者、うっかりMAXにした【魅力】スキルで日常が崩壊する ~魔王は倒せたけど、ヒロイン達からは逃げられない?

のびすけ。

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第八章 ハーレムな日常と、八百階層の追憶

恋の宣戦布告 / 正妻戦争! 異世界式VS現代式おもてなしバトル

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(……あ、頭が痛い) 

昨夜の、あの氷点下のゲストルームでの話し合いは、結局、平行線を辿(たど)った。

陽奈美の「翔太の『何』なの?」という宣戦布告に対し、セラフィーナは「あら?」と小首を傾(かし)げ、この世で最も優雅に、そして残酷にこう言い放ったのだ。 
「『何』、ですって? 決まっているではございませんか。わたくしは、我が勇者様の『妻』となる女。十年前に、そう『約束』したのですから」

((((『『『『約束』』』』))))

その瞬間、現代組(モダン・ガールズ)の空気が、嫉妬と怒りで沸騰(ふっとう)したのを僕は見逃さなかった。 

(やめて! 陽奈美のハイライトが消えてる! エレオノールの手が剣の柄に! 凛花さんが計算をやめてこっち睨んでる! 麗華が戦闘狂(バトルマニア)の目でセラを見てる!)

これ以上は危険だと判断した僕は、「今日はもう解散!」と叫び、半ば強引にその場を収めた。 
そして、学校側(というかギルド)に僕のこれまでの功績(と土下座)を総動員して、異世界組(ワールド・トラベラーズ)の四人を、僕の部屋があるのとは別の、最上階のゲストハウスに一時的に滞在させる許可をなんとか取り付けたのだった。

(これで少しは、頭を冷やす時間ができるはず…) 

そう思っていた僕が、甘かった。 
彼女たちが、そんなことで大人しくしているはずが、なかったのだ。



翌朝。 
僕は、妙な圧迫感と、金属の冷たさで目を覚ました。

「……ん?」 

目を開けると、そこには、見慣れた自室の天井…ではなく。 
フルプレートの甲冑(かっちゅう)に身を包み、ベッドの脇で直立不動の姿勢をとる、赤髪の聖騎士、ブリジット・アイアンハンドの姿があった。

「おはようございます、団長! 昨夜の睡眠時間は良好! 異常ありませんでした!」 
「……ブリジット? な、なんで僕の部屋に…?」 
「ハッ! 団長の寝ずの番は、このブリジットの最重要任務であります! 昨夜、わたくしがこの部屋の警備についてから、不審な(現代組の)女の侵入は一切許しておりません!」 

ビシッ!と敬礼する彼女。 
(いや、君がいることが最大の問題なんだけど!?) 

どうやって鍵開けたんだ!? シーフマスターのミミか!? ていうか、寝ずの番って…僕、一晩中甲冑姿の君に見守られながら寝てたの…?

(SAN値がゴリゴリ削れる音、開幕…) 

頭痛をこらえながらベッドを出て、リビングへと向かう。 
すると、キッチンの方から、何かが爆発するような音と、嗅(か)いだことのない刺激臭が漂ってきた。

「(…まさか)」 

恐る恐るリビングを覗くと、そこには、現代日本の最新鋭キッチン(僕の部屋の備え付け)を、まるで古代の戦場のようにめちゃくちゃにしながら、満面の笑みを浮かべるセラフィーナの姿があった。 

彼女は、王女様の高そうなシルクのドレスの袖(そで)をまくり、顔に小麦粉(らしきもの)をつけながら、鍋の中の「何か」を懸命にかき混ぜている。

鍋の中身は、紫色に泡立ち、時折、謎の眼球(みたいなもの)が浮かんでは消えていた。

「おはようございます、我が勇者様♡」 

僕に気づいたセラが、至上の笑みを浮かべる。 

「ちょうど今、朝食ができたところですわ! 貴方様のお口に合うように、アインツベルグ王家に伝わる、滋養強壮(じようきょうそう)に効く『ギガント・ワームの目玉入りシチュー』を心を込めて作りましたの♡ さぁ、お召し上がりになって?」 

(グロテスクすぎるだろぉぉぉぉっ!!) 

栄養満点なのは【鑑定】するまでもないが、それ以上に『状態:猛毒(現代人には致死量)』という表示が見えているんですが!?

僕が、その『勇者様の朝食(最終兵器)』をどうやって断ろうかと必死に考えていた、その時。

ピンポーン! けたたましいチャイムと共に、玄関のドアが(オートロックのはずなのに)勢いよく開かれた。

「翔太、おっはよー! 朝ごはん、作りに来たよー!」 

白いエプロンを身に着け、完璧な「朝の恋人」スタイルで入ってきたのは、陽奈美だった。 
そして彼女は、僕と、ブリジットと、キッチンを破壊し尽くしたセラフィーナと、彼女が持つ紫色のシチュー(猛毒)を見て、ぴしり、と固まった。

「……な」 

わなわなと震える陽奈美。 

「な、な、な、なんでっ…! なんであんたたちが翔太の部屋にいるのよぉーっ!!」

「あら、ごきげんよう」 

セラフィーナは、ライバル(?)の登場にも動じない。 

「早いものですわね。ですが、勇者様の朝食は、わたくしが既に用意いたしました。貴女の出る幕は、もうありませんことよ?」 

ふふん、と紫色の鍋を掲げるセラ。

「そ、そんなドブみたいな色の物体、翔太に食べさせるわけないでしょ! 翔太の朝ごはんは、あたしが作るの!♡」 
「ドブですって!? 無礼ですわね! これは我が王家に伝わる神聖なレシピで…!」

ガコンガコン! バチバチッ! 二人が火花を散らした、その瞬間。 
リビングの家電が一斉(いっせい)に明滅(めいめつ)を始めた。

「フン…」 

いつの間にか入り込んでいたルナリアが、テレビや電子レンジに向かって、ふぅーっと息を吹きかけていた。 

「なんとも原始的な魔道具じゃな。魔力効率が悪すぎるわ。妾(わらわ)が、ちと『最適化(オプティマイズ)』してやろう」 

「ちょ、ルナ! やめ――」

ボフンッ!! 電子レンジが、無残にも黒焦げのトーストを(なぜか)吐き出し、ルンバ(お掃除ロボ)が猛スピードで回転しながら壁に激突し始めた。 

(ああああああ! 僕の家電がぁああ!)

「ご主人様ぁ♡」 

「!?」 

リビングがカオスに包まれる中、僕は、背後から柔らかい感触に抱きしめられた。 
振り返る間もなく、耳元で甘い声が囁(ささや)く。 

「朝から大変だウサ♡ みんなうるさいから、ミミとベッドに戻るぴょん? ミミが、ご主人様の『おちんちん』、元気にしてあげるウサ♡」 

(ミミィィィッ! 君はいつの間にベッドに!? しかも朝から直球すぎるだろ!)

 僕の腰に、小柄なのに不釣り合いなほど豊かな胸が、むにゅ~♡と押し付けられる。

まさに、地獄絵図(ハーレム)。 
現代常識 VS 異世界常識の、僕を巡る「お世話バトル」が、宣戦布告(せんせんふこく)も無しに勃発(ぼっぱつ)していた。

キッチンでは、陽奈美の「愛情たっぷり和朝食(ただし翔太のぶんだけ)」と、セラフィーナの「王家の回復食(ただし猛毒)」が火花を散らし。 

リビングでは、エレオノールが「翔太さま、落ち着いてくださいまし…!」と気品ある紅茶(ただしブリジットが毒見しないと飲ませないと騒いでる)を淹(い)れようとし、ルナリアが「下等な茶葉より、こっちの魔力回復薬(マナ・ポーション)の方が万倍マシじゃ」と、怪しく緑色に光る液体を勧めてくる。

そこへ、 「「お兄ちゃーん! 大変って聞いたけど、どうしたのー!?」」 と、噂を聞きつけたのか、義妹の理奈と瑠奈までがパジャマ姿で突撃してきた! 

二人は、僕に抱きつくミミを見るなり、 
理奈:「あーっ! ずるい! お兄ちゃんから離れろー!」 
瑠奈:「…うん。お兄ちゃんは、瑠奈たちのもの」 
と、僕の左右の腕にガッチリと抱きつき、「お兄ちゃん大好き♡」アピール合戦にまで発展する。

僕の、SAN値が、ゴリゴリと音を立てて削れていくのが分かった。 

(もう…もうダメだ…!)

このままでは、僕の日常(と部屋)が、物理的に崩壊する。 
僕は、カオスと化したリビングの中心で、この状況を打開する、唯一の道筋(みちすじ)を必死に探っていた。 

(そうだ、あの光だ…!)

僕は、昨日の八百階層で見た、あの光景を思い出す。 
セラたちが、あの光の中から現れた。 あの光の柱は、単なるダンジョンの異常現象じゃない。 
異世界と、この現代を繋ぐ、『ゲート』そのものなんだ。

そして、彼女たちが言うには、異世界は今も危機に瀕(ひん)している。 
僕が彼女たちを救うためにも、そして、このカオスな共同生活を(僕の精神の平穏のために)なんとかするためにも、あの『ゲート』を制御する必要がある。 

(ダンジョンの最深部…千階層。そこなら、きっと…!)

「み、みんなっ! ちょっと、聞いてくれ!」 

僕の、必死の叫び。 
わちゃわちゃとしていた八人の少女たちの動きが、ピタリと止まった。

僕は、この場の全員を見渡し、覚悟を決めて、一人称を変えた。 
もう、「僕」のままでは、この嵐は乗りこなせない。

「――分かった。俺は、両方の世界を救う」

俺の、勇者としての声。 
その場の空気が、一瞬で引き締まる。

「あのダンジョンの八百階層で起きた光の柱は、二つの世界を繋ぐ『ゲート』だ。 セラたちがここに来れたのも、それを使ったからだ」 

俺は、ルナリアの方をちらりと見る。
彼女は「…フン、察しがいいではないか」と、小さく頷いた。

「だが、あのゲートは不安定すぎる。このままじゃ、いつ異世界の魔物がこっちに溢れ出してくるか分からない。逆も然りだ」 

俺は、続ける。 

「あのゲートを完全に制御し、二つの世界を自由に行き来するためには…ダンジョン最深部、千階層を攻略する必要がある。俺は、そう結論付けた」

俺は、全員の顔を、もう一度、今度は一人一人、しっかりと見つめた。 
陽奈美も、セラも、ミミも、ブリジットも、ルナも、エレオノールも、理奈も、瑠奈も…(遅れてやってきた凛花さんと麗華も、いつの間にか壁際で事の成り行きを見守っていた)。

「だから――みんな、力を貸してくれ!」

俺の決意表明に、彼女たちは、顔を見合わせる。 
キッチンで睨(にら)み合っていた陽奈美とセラが、ふい、と視線をそらす。 

僕の腕に抱きついていたミミと理奈、瑠奈も、不承不承(ふしょうぶしょう)といった感じで、身体を離した。

「…仕方、ありませんわね」 
「…翔太が、そこまで言うなら」

一時休戦。 

「二つの世界を救う」そして「千階層を攻略する」という共通の目的が、このカオスな戦場に、奇跡的な停戦協定(ていせんきょうてい)をもたらした。

…だが、僕は知っている。 
彼女たちの瞳の奥で、まだ静かな炎が、赤々と燃え盛っていることを。

(((千階層を攻略する、その隣に立つのは、わたくし(あたし)(妾)(自分)(ミミ)(理奈)(瑠奈)だ)))

朝食を巡る戦いは終わった。 
だが、僕の『正妻』の座を巡る、本当の戦い(ハーレム・ウォー)は、今、始まったばかりだった。
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