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第九章 十年越しの、聖なる初夜
聖女との聖なる初夜
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わたくしの覚悟はとうに決まっておりました。
ううん。
もうずっと前から。
我が勇者様と共に魔王を討伐したあの時から、いえ、彼と出会ったその時から、決めていたのかもしれません。
聖女として、勇者様と結ばれる「聖なる行為」。
それはわたくしにとって、恐れるものではなく、ただひたすらに誇らしく、待ち望んだものでした。
神聖なる「聖婚の儀」。
わたくしのすべてを勇者様に捧げ、彼の子を宿すこと。
それこそが、わたくしの使命であり、最大の歓びだと信じておりましたから。
…ええ、昨日までは、そう信じておりましたのに。
あの方…陽奈美さんとおっしゃいましたか。
彼女の、あまりにも生々しい『閨オリエンテーション』を受けるまでは。
『ムードが大事』?
『キスは唇だけじゃない』?
『指や、舌で、お互いの“そこ”を…』?
きゃあああああっ!
思い出すだけで、顔から火が噴きそうですわ!
あの講義以来、わたくしの心臓は、期待とは違う、もっと、こう…不純で、熱っぽい高鳴りを止められないのです。
身体の奥が、なんだかソワソワして、熱い。
陽奈美さんたち現代組が言うには、わたくしたち異世界組の知識は「中学生レベル」だとか。
わたくし、王族としての教育は完璧だったはずなのに…!
でも、もう、待ちきれない。
あの、陽奈美さんが語った『すごい翔太♡』 を… わたくしも、知りたい。
湯浴みを終え、わたくしは鏡の前に立ちます。
身に纏うのは、薄いシルクのネグリジェ。
そう。
十年前、魔王を討伐し、わたくしたちの『初めて』が、無慈悲にも果たされなかった…あの夜と、同じ姿。
今夜こそ。
今夜こそ、我が勇者様と…。
鏡に映るわたくしの顔は、聖女のものではなく、ただの「女」の顔で、真っ赤に染まっておりました。
ーーーーー
コンコン
控えめなノックの音が、わたくしの心臓を直接叩いたかのように、身体を震わせました。
「…!」
来た。
来てくださった…!
わたくしは、陽奈美さんたちに教わった『ムード』など、もうすっかり頭から抜け落ちて、転がるようにドアへと駆け寄りました。
待ちきれずに、震える手でドアを開けると… そこには、少し緊張した面持ちの、わたくしの…わたくしだけの、勇者様が。
「セラ…」
「翔太さま…!」
もう、ダメでした。
感極まって、わたくしは彼の胸に飛び込んでいました。
強く、強く抱きつきます。
ああ、懐かしい匂い。
これですわ。
わたくしが十年間、焦がれ続けた、彼の匂い。
「ごめんな、セラ…」
翔太さまの太い腕が、わたくしの背中に回り、ぎゅっと、優しく、でも力強く抱きしめ返してくれます。
「本当に、ごめん…十年も、待たせて…」
「いいえ…いいえ…!」
わたくしは、彼の胸に顔を埋めたまま、首を横に振ります。
「来てくださった…それだけで、わたくしは…!」
彼が、そっと、わたくしの身体を離し、わたくしの頬に手を添えます。
真っ直ぐな、あの頃と変わらない、優しい黒い瞳。
「セラフィーナ」
彼が、わたくしの名前を呼びます。
「俺は、君に、酷いことをした。約束を、破った」
「そん…!」
「でも、俺は、君たちと過ごした十年間を、一度だって忘れたことはない。ずっと、君に…みんなに、会いたかった」
「翔太さま…」
「今夜は、君だけのものだ。いや、これからは、ずっと…君を、大切にする。誓うよ」
「…っ!」
もう、言葉は、いりませんでしたわ。
彼の顔が、ゆっくりと近づいてくる。
わたくしは、そっと、目を閉じました。 唇に、柔らかく、温かい感触が、触れる。
ちゅ…と、最初は優しく。
そして、少し角度を変えて、わたくしの唇を、確かめるように、深く…。
ああ…。
これは、ただの口づけでは、ありません。
わたくしたちが失った十年を取り戻す、魂の契約。
その温かさに、わたくしの脳裏に、彼と過ごした冒険の日々が、鮮やかに蘇ってまいりました。
ーーーーー
まだ、わたくしが彼を「召喚された勇者様」としか見ていなかった、冒険の初めの頃。
ゴブリンの不意打ちに、わたくしが足をもたつかせ、彼の上に転んでしまって… 偶然、唇と唇が、ふに、と触れ合ってしまった時のこと。
あの時の、二人して真っ赤になった、気まずい沈黙。
森の奥深くでの野営。
わたくしがこっそり湖で水浴びをしていたら、水を汲みに来た彼と鉢合わせになってしまって…
わたくしの、聖女としてあるまじき裸の姿を、全部、見られてしまった時のこと。
あの時、彼は慌てて背中を向け「な、何も見ていない!」と叫んでおりましたが、耳まで真っ赤になっていたのを、わたくしは知っておりますのよ。
あの瞬間から、わたくしは、彼を「勇者様」としてではなく、一人の「男」として、意識し始めていたのかもしれません。
そして、あの、魔将軍との死闘。
わたくしを守るために、翔太さまは傷だらけになりながら、鬼神の如く戦ってくださいました。
その夜、高熱を出した彼を、わたくしが寝ずの看病をしていた時のこと。
寒さを訴える彼を、わたくしは、仕方なく…本当に、仕方なく、同じ寝袋に入って、肌で温めて差し上げました。
彼はうわ言で「…あったかい…」と呟いて、わたくしの身体を、ぎゅっと抱きしめて… その大きな手が、わたくしの胸に、無意識に、触れて… わ、わたくしの、聖女の胸を、むにゅ…と、揉んで…っ!
「ひゃぅっ…!」
彼は、そのまま、朝までわたくしを抱きしめ続けて眠っていたのですけれど… わたくしは、一睡も、できませんでした…っ!
「ん…」
思い出して、身体が熱くなってしまったわたくしを、彼は、さらに深く、強く抱きしめてくださる。
ああ、彼の逞しい身体。
ネグリジェ越しに感じる、無数の薄い傷跡。
そのすべてが、彼が戦い抜いた証であり、わたくしが愛した、十年の軌跡。
そのすべてが、愛おしい。
愛おしくて、たまらないのですわ…♡
ううん。
もうずっと前から。
我が勇者様と共に魔王を討伐したあの時から、いえ、彼と出会ったその時から、決めていたのかもしれません。
聖女として、勇者様と結ばれる「聖なる行為」。
それはわたくしにとって、恐れるものではなく、ただひたすらに誇らしく、待ち望んだものでした。
神聖なる「聖婚の儀」。
わたくしのすべてを勇者様に捧げ、彼の子を宿すこと。
それこそが、わたくしの使命であり、最大の歓びだと信じておりましたから。
…ええ、昨日までは、そう信じておりましたのに。
あの方…陽奈美さんとおっしゃいましたか。
彼女の、あまりにも生々しい『閨オリエンテーション』を受けるまでは。
『ムードが大事』?
『キスは唇だけじゃない』?
『指や、舌で、お互いの“そこ”を…』?
きゃあああああっ!
思い出すだけで、顔から火が噴きそうですわ!
あの講義以来、わたくしの心臓は、期待とは違う、もっと、こう…不純で、熱っぽい高鳴りを止められないのです。
身体の奥が、なんだかソワソワして、熱い。
陽奈美さんたち現代組が言うには、わたくしたち異世界組の知識は「中学生レベル」だとか。
わたくし、王族としての教育は完璧だったはずなのに…!
でも、もう、待ちきれない。
あの、陽奈美さんが語った『すごい翔太♡』 を… わたくしも、知りたい。
湯浴みを終え、わたくしは鏡の前に立ちます。
身に纏うのは、薄いシルクのネグリジェ。
そう。
十年前、魔王を討伐し、わたくしたちの『初めて』が、無慈悲にも果たされなかった…あの夜と、同じ姿。
今夜こそ。
今夜こそ、我が勇者様と…。
鏡に映るわたくしの顔は、聖女のものではなく、ただの「女」の顔で、真っ赤に染まっておりました。
ーーーーー
コンコン
控えめなノックの音が、わたくしの心臓を直接叩いたかのように、身体を震わせました。
「…!」
来た。
来てくださった…!
わたくしは、陽奈美さんたちに教わった『ムード』など、もうすっかり頭から抜け落ちて、転がるようにドアへと駆け寄りました。
待ちきれずに、震える手でドアを開けると… そこには、少し緊張した面持ちの、わたくしの…わたくしだけの、勇者様が。
「セラ…」
「翔太さま…!」
もう、ダメでした。
感極まって、わたくしは彼の胸に飛び込んでいました。
強く、強く抱きつきます。
ああ、懐かしい匂い。
これですわ。
わたくしが十年間、焦がれ続けた、彼の匂い。
「ごめんな、セラ…」
翔太さまの太い腕が、わたくしの背中に回り、ぎゅっと、優しく、でも力強く抱きしめ返してくれます。
「本当に、ごめん…十年も、待たせて…」
「いいえ…いいえ…!」
わたくしは、彼の胸に顔を埋めたまま、首を横に振ります。
「来てくださった…それだけで、わたくしは…!」
彼が、そっと、わたくしの身体を離し、わたくしの頬に手を添えます。
真っ直ぐな、あの頃と変わらない、優しい黒い瞳。
「セラフィーナ」
彼が、わたくしの名前を呼びます。
「俺は、君に、酷いことをした。約束を、破った」
「そん…!」
「でも、俺は、君たちと過ごした十年間を、一度だって忘れたことはない。ずっと、君に…みんなに、会いたかった」
「翔太さま…」
「今夜は、君だけのものだ。いや、これからは、ずっと…君を、大切にする。誓うよ」
「…っ!」
もう、言葉は、いりませんでしたわ。
彼の顔が、ゆっくりと近づいてくる。
わたくしは、そっと、目を閉じました。 唇に、柔らかく、温かい感触が、触れる。
ちゅ…と、最初は優しく。
そして、少し角度を変えて、わたくしの唇を、確かめるように、深く…。
ああ…。
これは、ただの口づけでは、ありません。
わたくしたちが失った十年を取り戻す、魂の契約。
その温かさに、わたくしの脳裏に、彼と過ごした冒険の日々が、鮮やかに蘇ってまいりました。
ーーーーー
まだ、わたくしが彼を「召喚された勇者様」としか見ていなかった、冒険の初めの頃。
ゴブリンの不意打ちに、わたくしが足をもたつかせ、彼の上に転んでしまって… 偶然、唇と唇が、ふに、と触れ合ってしまった時のこと。
あの時の、二人して真っ赤になった、気まずい沈黙。
森の奥深くでの野営。
わたくしがこっそり湖で水浴びをしていたら、水を汲みに来た彼と鉢合わせになってしまって…
わたくしの、聖女としてあるまじき裸の姿を、全部、見られてしまった時のこと。
あの時、彼は慌てて背中を向け「な、何も見ていない!」と叫んでおりましたが、耳まで真っ赤になっていたのを、わたくしは知っておりますのよ。
あの瞬間から、わたくしは、彼を「勇者様」としてではなく、一人の「男」として、意識し始めていたのかもしれません。
そして、あの、魔将軍との死闘。
わたくしを守るために、翔太さまは傷だらけになりながら、鬼神の如く戦ってくださいました。
その夜、高熱を出した彼を、わたくしが寝ずの看病をしていた時のこと。
寒さを訴える彼を、わたくしは、仕方なく…本当に、仕方なく、同じ寝袋に入って、肌で温めて差し上げました。
彼はうわ言で「…あったかい…」と呟いて、わたくしの身体を、ぎゅっと抱きしめて… その大きな手が、わたくしの胸に、無意識に、触れて… わ、わたくしの、聖女の胸を、むにゅ…と、揉んで…っ!
「ひゃぅっ…!」
彼は、そのまま、朝までわたくしを抱きしめ続けて眠っていたのですけれど… わたくしは、一睡も、できませんでした…っ!
「ん…」
思い出して、身体が熱くなってしまったわたくしを、彼は、さらに深く、強く抱きしめてくださる。
ああ、彼の逞しい身体。
ネグリジェ越しに感じる、無数の薄い傷跡。
そのすべてが、彼が戦い抜いた証であり、わたくしが愛した、十年の軌跡。
そのすべてが、愛おしい。
愛おしくて、たまらないのですわ…♡
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