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スマートフォンの画面には『送信しました』の文字が、ちかちかと点滅する封筒のマークと共に表示されている。メールの送信相手は、杉内真帆とある。
航太は、妹に会いたい旨をつげるメールを送った。いつもは電話で連絡をとるものの、今回は一方的なメールで連絡した。余計なことを聞かれたくない時、メールという連絡手段は大変便利だ。伝えたいことがシンプルであるほど、書かれた文字以外のものが一切伝わらない。その点では、電話より、手紙より、他のどんな伝達手段より勝っていると思う。
だが、妹に尋ねられたくないこととは、まさに用件そのものであり、妹に会う約束はしたものの、話そうと決意した内容を、妹を目の前にしてまともに話せるかどうか、という自信は五分五分だった。
あんなことがなければ、真帆だって、人並みの幸せぐらいは手にできたはずだった。
母親が死んだ後、航太たちは父方の伯父夫婦に引き取られた。伯父は夫婦で小さな定食屋を営んでいた。彼らの子供は男三人で、長男と次男はすでに成人しており、一番下の三男は上の二人とは少し年が離れて、十七歳という年齢で航太と同じ高校生だった。年の近い従兄弟たちとの同居、しかも居候という身分で同じ家に住まうことは航太にはひどく居心地の悪いものだった。しかし、伯父夫婦は自分たちには子供が三人いるのだから、五人に増えたところでたいした大差はない。うちは食べ物屋だから、食べるものには困らないから、と言って快く航太たちを受け入れてくれた。伯母にいたっては、三男を産んだのは、女の子がどうしても諦めきれなかったからであり、真帆が来てくれたらどんなに嬉しいか、と話してくれた。
実際、二人は航太たちを自分たちの子供より、少し甘いくらいの感じで接してくれた。特に、伯母は真帆を自分の息子以上にかわいがりもした。真帆も伯母によく懐き、働き者の伯母の後について、家事や店の厨房をすすんで手伝った。
航太はそんな真帆の様子を見て、人が変わったようだと思っていた。目の中の暗い光が薄れて、人懐こい笑顔を見せることもあった。
真帆自身、本当に別人になろうとしていたのかもしれない。真帆は生まれ変わりたかったのだろう。それでも、航太の目には、真帆が自身の心の中で不幸な過去とは決別して、薄暗い闇から光を探してはい回っているように、その姿が映ることもあった。
母の死について、航太には確かめたいことがあったが、それを口にすることができずにいた。妹が毎晩布団の中で声を抑えて、涙を流す日々が去ったことには違いなかった。不安と不満と苛立ちから解放されたのは、航太も同じだと思っていた。
真帆は普通の女子中学生と同じように平凡な幸せを手にしているように見えたし、兄がそばにいようがいまいが、彼女の世界は完結しているように思えた。
そんな妹の様子に安心していたから、航太は居心地の悪い親戚の家よりも、快く寝泊まりさせてくれる友人の家に入り浸るようになった。
伯父の家を不穏な空気が取り巻くようになったことにも気がつきもしなかった。
真帆は敏感な子だった。家の周りを知らない男が何人もうろうろしている、と報告してきた時、もっと親身になって話を聞いてやるべきだった。あの時にはすでに、これからどんな話が待っているのか、真帆には検討がついていたに違いなかった。しかし、今となっては何を思っても後の祭りだ。俺にできるのは、真帆の心の傷がいつか癒えるのを願って、見守っていくことだけだ。
航太は、妹に会いたい旨をつげるメールを送った。いつもは電話で連絡をとるものの、今回は一方的なメールで連絡した。余計なことを聞かれたくない時、メールという連絡手段は大変便利だ。伝えたいことがシンプルであるほど、書かれた文字以外のものが一切伝わらない。その点では、電話より、手紙より、他のどんな伝達手段より勝っていると思う。
だが、妹に尋ねられたくないこととは、まさに用件そのものであり、妹に会う約束はしたものの、話そうと決意した内容を、妹を目の前にしてまともに話せるかどうか、という自信は五分五分だった。
あんなことがなければ、真帆だって、人並みの幸せぐらいは手にできたはずだった。
母親が死んだ後、航太たちは父方の伯父夫婦に引き取られた。伯父は夫婦で小さな定食屋を営んでいた。彼らの子供は男三人で、長男と次男はすでに成人しており、一番下の三男は上の二人とは少し年が離れて、十七歳という年齢で航太と同じ高校生だった。年の近い従兄弟たちとの同居、しかも居候という身分で同じ家に住まうことは航太にはひどく居心地の悪いものだった。しかし、伯父夫婦は自分たちには子供が三人いるのだから、五人に増えたところでたいした大差はない。うちは食べ物屋だから、食べるものには困らないから、と言って快く航太たちを受け入れてくれた。伯母にいたっては、三男を産んだのは、女の子がどうしても諦めきれなかったからであり、真帆が来てくれたらどんなに嬉しいか、と話してくれた。
実際、二人は航太たちを自分たちの子供より、少し甘いくらいの感じで接してくれた。特に、伯母は真帆を自分の息子以上にかわいがりもした。真帆も伯母によく懐き、働き者の伯母の後について、家事や店の厨房をすすんで手伝った。
航太はそんな真帆の様子を見て、人が変わったようだと思っていた。目の中の暗い光が薄れて、人懐こい笑顔を見せることもあった。
真帆自身、本当に別人になろうとしていたのかもしれない。真帆は生まれ変わりたかったのだろう。それでも、航太の目には、真帆が自身の心の中で不幸な過去とは決別して、薄暗い闇から光を探してはい回っているように、その姿が映ることもあった。
母の死について、航太には確かめたいことがあったが、それを口にすることができずにいた。妹が毎晩布団の中で声を抑えて、涙を流す日々が去ったことには違いなかった。不安と不満と苛立ちから解放されたのは、航太も同じだと思っていた。
真帆は普通の女子中学生と同じように平凡な幸せを手にしているように見えたし、兄がそばにいようがいまいが、彼女の世界は完結しているように思えた。
そんな妹の様子に安心していたから、航太は居心地の悪い親戚の家よりも、快く寝泊まりさせてくれる友人の家に入り浸るようになった。
伯父の家を不穏な空気が取り巻くようになったことにも気がつきもしなかった。
真帆は敏感な子だった。家の周りを知らない男が何人もうろうろしている、と報告してきた時、もっと親身になって話を聞いてやるべきだった。あの時にはすでに、これからどんな話が待っているのか、真帆には検討がついていたに違いなかった。しかし、今となっては何を思っても後の祭りだ。俺にできるのは、真帆の心の傷がいつか癒えるのを願って、見守っていくことだけだ。
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