二年の思い出、五ヶ月の今

るくるく

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五度目

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 九月。夏休みになんとか時間をつくって見に行った映画は楽しかった。お互いの趣味全開なアニメの実写映画。実写もたまには見てみるものだと思った。そのまま、デパートのなかを歩いて買い物をしながら話して、楽しかった。彼女と歩いた場所をこうしてまた歩いているのだ。
 中古で買った軽自動車の助手席に彼女を乗せ、家まで送り届ける。

 切り出したのは俺からだ。この五ヶ月で感じた想いを言葉にできていないまま口に出す。家につくまでに伝えきれずに、近くの道に車を止めて溢れるものを全部渡した。

『ごめんなさい、好きな人かできたの』

 彼女は泣いていた。俺よりも悲しそうだった。いや、俺は悲しかったのだろうか。目の前の蝋燭の火は消えたはずなのに、俺の中には眩い輝きが残っていた。
 そこで気がついた。彼女が泣いている理由に。

 俺が好きなのは

 俺が好きだと思ったのはあの頃の彼女だ。

 俺が信じていたかったのはあの頃の彼女だ。

 俺が見た笑顔はあの頃の彼女のものだ。

 俺に輝いて見えたのはあの頃の思い出だ。

 俺が映画を見て、一緒に歩きたかったのは。



 五ヶ月分の俺の想いは彼女にしっかりと伝わっていた。伝わっていたから彼女は涙した。彼女と過ごした高校生活は俺にとっては何者にも変えられない大切なものだった。例えそれは彼女自身にも。

 幸せだった。
 楽しくて。
 嬉しくて。
 悲しいことも。
 笑っていられたから。
 それが恥ずかしくて。
 照れ臭くて、くすぐったくて。
 それが俺にとっての全てになって。


 それが全てだった。


 そんな輝きを彼女という鏡が俺に反射して、俺は鏡そのものが光を放っていると勘違いした。彼女はそのことに気がつかせてくれた。

 街灯はない。それでもお互いの顔はよく見えてる。泣いている彼女に向き直って、今伝えなければいけない言葉を口にした。

『ありがとう。俺はきっとそんな君が好きだった』

                           終
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