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ヴィオラが暗い気持ちのまま家に帰ると、エリックが出迎えてくれた。

 

 

「ヴィー!おかえり」
 

エリックはヴィオラを抱擁し、顔を覗き込む。

 
「……どうしてそんなに暗い顔しているんだ?」


「……」


「また殿下か?」


「……」

 
「はぁー……もう結婚まで2年だぞ。まだあのピンクの女を連れてるのか?……やっぱり俺が面倒みるからこの家にいて良いんだよ」


「それは、フローラに嫌がられるわ」


ヴィオラは小さく首を横に振る。


フローラとは、エリックの婚約者でヴィオラと一緒に王立学園に通っている令嬢。

 
「いや、フローラなら喜ぶだろう」

 
……まぁそうね。

 

お兄様とフローラが婚約を結んだのは5年前。お兄様は婚約を結ぶときに、私のことが好きだとフローラに言ったらしい。

当時のことをフローラに聞くと、「貴族の結婚とはそういうものでしょう。馬鹿正直に言うのはどうかと思ったけれど……まぁ、顔が好みなのよね」と言っていた。

 
フローラと私はとても気の合うためとても仲が良い。

お兄様とフローラもなんだかんだでうまくいっている。2週に1度デートだってしている。とてもうらやましい!!

 

 
「今日フローラと一緒に買い物に出かけたんだ。そこでヴィーにこれを買ってきたよ」

 

 エリックは花をモチーフにした髪飾りをヴィオラに渡した。

 
「まぁ!可愛い!!お兄様ありがとう!!」


暗かったヴィオラの顔も笑顔になった。

 

「気に入ってくれて嬉しいよ。明日つけて行ってくれるかい?」
 

「もちろん!」


ヴィオラは着替えてくると言い部屋へ戻った。

 

 

「はぁ……あとは頼んだよ、フローラ」

 

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