傘使いの過ごす日々

あたりめ

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約束

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関所へと向かう静也とアイナ、自然と二人の間は狭まっていた。
先刻の暴漢3人組事件の時のペンダントについて静也が聞いて色々話している内に距離が縮まってきたのだ。
どんな話をしていたのかというと…


「あ、そうだ、アイナさん、気になったんですけど、さっきのペンダントってなんだったんですか?」

静也の急な質問にアイナはすこし動揺したが答えてくれた。

「あー、これはですね。私の妹に貰ったものなんです。私が無事に帰って来るようにって。」
「へぇー…可愛らしい妹さんですね。妹さんいくつなんですか?」
「いま、14になるんです。いつも私の冒険の話を聞きに来るんです。もう大変ですよ。それに昨日の夜なんて布団に入って聞きに来ますし、それに…」

と、嬉しそうな表情でアイナは自慢げに妹のことを話す。
妹が可愛いとは直接言わないがアイナの表情がそう物語っていた。


話しているうちに目的地らしい場所に着いた。話していた内容はほとんどアイナの妹の話だった。
目的地に着いたのに気づくと顔を赤くしていた。
作業に取り掛かろうとすると

「このことは秘密にしてくださいね?」

と赤面で言うものだから静也はドキっとした。

「もちろんです。秘密ですね。」

動揺しながら答えた。


薬草の取り方は雑草とは違い繊細なものが多いので、優しく根元からまっすぐに取る。
人差し指と中指と親指の三本が主に使われる。
やり方はアイナ直伝、根本を傷めないでとれるからと、手取り足取り教えてもらった。
軍手を装着することで手を汚さないだけでなく、たまに棘毒草があるので怪我を防ぐことができると言うことでアイナの持っているスペアの軍手をもらった。
前世の軍手と大して規格は変わらないような気もするが生地が厚めに作られているのが相違点だろう。

腰に折り畳み傘を携えスキルの一つ<探索・傘>を行使する。
一説によると薬草は大地の魔力をちょっとずつ吸うことで癒しの効果が出て薬草となる、とアイナが教えてくれた。
薬草、毒草の知識が疎い静也は、この話を聞いても頷くぐらいしかできなかった。

薬草の採取に次いで、アイナからあるお願いがあった。
『ジャンバ草』と呼ばれる治癒草、バンバ病と呼ばれる病気の特効薬になるらしい。
バンバ病は身体の末端の痺れ、目の霞み、筋肉硬直などが起きる病らしく、アイナの開いている薬局で不足しているので補充したいので手伝って欲しいとのことだ、報酬はアイナ特製高位のポーション、効果は元金級冒険者ダンの折り紙付き。
無論、静也は手伝い中。
傘の能力があるおかげで何の苦労もなく依頼は成功に終わると思っている。
時々現れる魔物を狩るのだがアイナが殆ど最初に見つけている。
索敵能力が傘より上回るアイナの技能、もしくはスキルが気になるところだが、あえて聞かなかった。


手伝いは二時間もかからなく終わった。
採取した薬草の数は総数347枚、ジャンバ草は67枚と大量で終わった。
こんなに採取しても大丈夫だったのかと聞いたところ薬草は2、3日あれば生えてくるのだとか。

「ありがとうございました。本当に助かりました」
「いえいえ、こちらも誘ってくださりありがとうございました。」

教えてもらっている時にアイナの胸が当たっていてある意味でもありがとうと言いたかったのは内緒だとか。

「シズヤさん、あなたはこれからどうするんですか?」

と、唐突にアイナがそんなことを聞いてきたので驚いた。

「これからって、どういう意味で」
「貴方には才能があります。ここの村に留まっては勿体ないくらいに。もしかしたら街か国に行くのではと思いまして。」
「いえ、自分はこの村に居ますよ。他のところには今のところ行こうとは思ってはいないです。」

するとアイナは嬉しそうな表情をして

「そうですか、でしたらまだまだ手伝って貰えますね」

と笑顔でそう言った。

「勿論ですよ。誘ってくだされば手伝いに行きますよ」

そう言ってアイナとの薬草採取の約束ができた。
静也自身ああ言ったが、誘われれば断れない性格なところもあったりする。


その後、歩いて関所まで行くのだが、道中アイナに薬草のいろはを叩き込まれたりしたので日が暮れそうになって、急いで帰った。

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