傘使いの過ごす日々

あたりめ

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アジト奪還作戦

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朝日が昇り、日の光が部屋に差し込む。
光が部屋いっぱいに充満したころ、静也はのそりと上体を起こし目を覚ます。
頭がだんだん覚醒し始める。
それと同時に昨日のならず者との約束のことを思い出し背中から冷や汗が流れる。
バッとベッドから飛び起き、身支度をささっと終わらせる。
部屋から飛び出し、エントランスに部屋の鍵を預け、宿から飛び出した。


一度組合に着く。そして裏に行けるルートがないか探すが結局地図を開き、裏にいくルートを通っていく。

裏に着き、『グールデン』と看板のある一軒の小さな小屋を見つける。
約束の通りなら、ここのはずだと、看板を何度も見る。
ドアノブに手をかけようとするが、躊躇してしまう。
これに手をかけ、開けて中に入ったなら自分は普通の世界で生きていけるのだろうか。
大丈夫、これが終わったら、それでおわりなんだって。
その自問自答を繰り返していると目の前のドアが軋みながら開く。

中からはガランが出てきた。

「お、早いなぁ。せや、あんたの名前聞いてなかったな。教えてくれへんか?」
「あ、俺は水鏡静也です、静也って呼んでください…といってもこれっきしですからね。この件が終わったら本当に何もなかったことにしてくださいね。」
「わかっとるって。とりあえず中に入りや。会議するけん。」

そういって中に誘導される。


「こっちやで、ついてきてみぃ」
「って…そこ壁ですけど…」

ガランは壁に向かって歩いていくと壁の中に消えていった。
静也もガランと同じように壁に向かって歩いていく。手を前に出し壁の中に手が入ることを確認するとそのまま壁の中に入っていった。

「…来たな…」

バランやほかの者がそこにいた。
小屋の中は狭く小さかったはずなのに、そこの空間は広く高い。軽く2階以上の高さはある。

「広いな…」

思わずそんな言葉が漏れた。

「せやろ?うちのひとりにこんな魔法使える奴がおんねん。そいつのおかげやで」

ガランが自分のことのように胸をはって言う。静也はそんな魔法もあるのかと感心していた。

「…会議するんだろ…」
「せやった、すまんすまん。じゃぁ適当に座ってくれや」

言われたとおり、適当な席に座った。

「まず、シズヤはんありがとうな。俺たちのわがまま聞いてもらって。」
「…はい。」

仕方なく受けたんだがな、という言葉は呑み込んで、黙っておいた。

「それで、まず、諜報はどうやったんや?」
「はい、俺たちのアジトは未だ奴らに乗っ取られたまま、しかし未だに俺たちのアジトの宝物庫には気づいていないようです。しかしそれも時間の問題かと…」
「そうか…人数は何人や?」
「全員は数えきれていませんが大体50は越えます。全員武装状態です。狙うなら奴らが酒を飲んでいる夜に狙うべきかと…」
「なるほどなぁ、わかったご苦労さん。ほんで、スカウト班はどうや?」
「村にいる不良、もしくはゴロツキには声を掛けましたが、スカウトできたのは10もいません。やはり相手が相手だからという理由があります。」

その報告を聞きその場の雰囲気は一気に冷め、あたかも冷凍室のような肌寒さを感じた。

「せや、シズヤはん、俺たちのアジトを乗っ取っとるやつらのリーダー『硬液のマグル』は自身の体を鉱石みたいに硬くさせるし、逆にスライムみたいに体を液体にさせるんや。バランとの相性は最悪で…もし硬化しててもバランなら内側から破壊するスキル<内破壊拳>があるんやけどな、くろうた瞬間に液化されたら攻撃が全部無意味になるしな、液体状態でもバランはバラバラにするくらいの攻撃はあるんやけどな、その瞬間に硬化されたらこれまた無意味になるんや…」

つまりバランはマグルに勝てない、ということだ。
静也の傘なら硬化状態で倒すことは可能だが、攻撃した瞬間に液化されたのなら倒すことはできない。
そのことは少し考えた静也でもわかる。

「そこで、シズヤはん、俺に考えがあるんや。」


作戦開始は夜、集合場所はグールデンでとのこと。
それまでは、各自自由。なんとも自由なグループなことか。
会議中終始、話を進めていたのはリーダーのバランではなくガランだったことから、頭脳を使うのはガラン、肉体を使うのはバランという役割なのだろう、もしくは二人で一つのリーダーなのだろうと思ったのだがそれは置いておく。
いまは買い取り所に来ている。

「お、久しぶりだね。買い取りだろう?」

ジョアンと会うのは久しぶりな気がする。

「はい、何体なら買い取れますか?」
「そうだね…60でいいかい?」
「わかりました。お願いします。」

傘ストレージの中にいる魔牛を出し、買い取り所で鑑定が終わるまで待つことにした。

数十分後、鑑定が終了したとジョアンの呼ぶ声が聞こえた。

「60体鑑定終わったよ、これが鑑定結果と買い取り料金ね。」
「はい、ありがとうございました。それではまた。」

鑑定結果、137,800ルターだった。一気にこんなに儲かる冒険者はいいなとも思ったが、同時に危険と隣り合わせだということをふと思い出す。
いま、傘ストレージにある魔牛をすべて売ればそのあと、また狩りに行くことになる。
そのときにもしかしたら、魔物に殺されるかもしれない。そう思うとだんだん怖くなってきた。
それと同時に家のことも考えていた。
不動産で家を買う50万ルターの一般的な家、やはりこの世界の金の価値は前世のものとはまた違うと実感させられる。
未だに家を借りるという選択が出てきていない。間抜けを通り越して阿呆である。


時刻はまだ昼にも届かない。組合に行って依頼でも受けようとおもった。

「お、シズヤじゃないか。奇遇だな。」

買い取り所から出てすぐにあったのはアレンだった。
ライトプレートメイルだった防具がライトアーマーになっていた。

「どうしたんだその防具、買ったのか?」
「ああ、まぁそうだな、迷宮に行っていた友人が売ってくれたんだ。」

迷宮ははじめとする神々の造ったモノでは階層ボスと呼ばれる魔物が居て、そいつを倒すと討伐特典があるらしい。その特典になにがはいっているのかは誰もしらないので、運だめしみたいなものだ。
防具や武器は強力な能力が秘められているので簡単には売られたり、譲られたりはしないのだが、アレンの友人から買えたのは、アレンの友人がたまたま別の防具を使っていたからだ。

「ところでシズヤ。お前も別のところに行くのか?」

突拍子もなくアレンがそんなことを聞いてきた。

「なんで?」
「いや、なんとなく聞いてみたんだ。まぁ、大分離れたところにある王国に拠点を構えるやつもこの村にいるしな。」
「へぇ…そうなんだ。でも、俺はこの村から多分出ないぞ。」
「そうか。じゃぁ、この村にいる間は俺の手伝いでもしてもらおうかな。」
「別にいいぞ。暇だったらな。」


アレンと別れ、組合に入り依頼を眺めていると目新しい依頼を見つけた。

「『力試しさせてくれ』?報酬は50ルター、普通の依頼より安いが…時間つぶしにはちょうどいいかな。」

作戦開始時刻は夜、今は昼にも届かない時刻、時間には余裕がありすぎるので時間つぶしには丁度いいとおもって張り紙をとり受付に行く。

「おはようございます、シズヤさん。どのようなご用件で?」
「おはようございます。この依頼を受けたくてきました。」

今の受付はエリナだ。依頼の張り紙を渡す。

「はい、たしかに受け取りました。依頼主のいる場所はこの地図を見ていってください。」

そういってエリナは地図を渡す。

「それでは、頑張ってください。」


組合から出て、人通りの邪魔にならないところに立ち、地図を開く。
目的地は村の最北あたりにあるところだ。
静也は目的地に向かって足を進めるのだった。
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