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2巻
2-3
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それからしばらくして、安曇達が用意してくれた御馳走が食卓に並べられた。
お赤飯や尾頭付きの鯛。俺の好物の唐揚げや、茶碗蒸し。デザートとしてぜんざいとケーキがある。お祝いの人数は多い方がいいからと、作ってくれた安曇や冬志も加わってのパーティーになった。
「霊力解放が成功したわけじゃないのに、こんなお祝いしてもらっていいのかな」
ワイワイと賑わう皆を見ながら、思わずポツリと呟く。
「妖怪は宴会が好きなのさ。気にするくらいなら、楽しみな」
朝霧はそう言って日本酒の入った盃を舐め、そんな朝霧を撫でて結月さんが微笑む。
「霊力解放が上手くいったら、今度は私がお祝いを企画するよ」
「その時は、また駆けつけます。お祝いと言ったら、赤飯ですから」
安曇はそう言って、結月さんに朝霧、自分の順に盃にお酒を注ぐ。
皆が楽しいならいいかと思い直した俺は、自分の皿に載るお赤飯を食べることにした。ささげ豆ではなく、小豆のお赤飯は初めてだ。一口食べた途端、その美味しさに驚いて目を見開く。
糯米がもちもちしていて、小豆がふっくらしてる。ごま塩が糯米の甘さをより一層引き立てていた。
「今までにお赤飯を食べたことはあるけど、こんなに美味しいのは初めてだ」
「本当か、蒼真! オイラ達も赤飯が欲しい!」
ぺちぺちと机を叩く河太と河次郎に、お赤飯を取り分けてあげる。ついでに火焔の手にも、一口分のお赤飯を載せてあげた。
「本当だ。小豆、美味いっ!」
「お米ももちもちです!」
お赤飯を頬張ったまま河太と河次郎が言い、口をもっちもっちと動かしながら火焔が頷く。そんな感想を耳にした冬志が、嬉しそうに笑った。
「美味いだろう。赤飯は手間がかかるけど、それを惜しまないで作ると出来上がりが違うんだよ」
「親父さんに教わったのか? 里で料理人をやってるんだろう?」
赤飯を食べながら慧が聞くと、冬志は渋い顔をする。
「赤飯は親父に教わった。でも、他の料理は今の職場で修業した味だ」
「冬志さんは和食の料理人として、人間界で働いてらっしゃるのよね」
紗雪はそう言いながら、俺の皿に唐揚げなどのおかずを取り分けてくれる。
へぇ、彼も料理人なのか。どうりでどの料理もプロ級の出来栄えなはずだ。でも、調理人の服を着てる姿は想像出来ないな。余程、今のバンドマンみたいな格好の方が似合っている。
「てっきり音楽関係の職業なのかと思っていました」
「休みの日はバンドやってるぜ。和食料理の店じゃなきゃ、休みのたびに髪をカラースプレーで染めることないんだけど……」
彼は髪を摘んで、大きくため息を吐く。
「冬志さんの勤めているお店は、親方さんが厳しいって言ってましたものね」
紗雪が苦笑すると、冬志は頭を上げ真剣な顔でグッと拳を握る。
「いつか自分で店を出せるようになったら、店主が茶髪でも平気な、自由な和食の店を作るぜ」
「自由……と言うと、創作和食とかですか?」
尋ねた俺に、冬志は大きく首を横に振った。
「いいや。ライブハウスと伝統的な和食料理を融合させた店を作るんだ」
爆音と和食……。凄い取り合わせだが、今までにない試みかもしれない。
慧は感心した様子で、冬志に言う。
「へぇ。意外に将来のことを考えてんだな。興味があるから、店が出来たら行くよ」
「じゃ、じゃあ、俺も気になるので……」
俺が小さく手を挙げると、冬志は満面の笑みでコクコクと頷いた。
「あぁ、開店したら是非来てくれよ!」
そんな息子を、安曇は盃に酒を注ぎながらチラリと見る。
「バンドに給料の殆どを使っているからなぁ。いつになったら店が持てるのか……」
嘆く父親の言葉を、冬志は聞こえないふりをした。
*
テストが終わっても、夏休みまではまだ日があった。通常授業の他に、二学期に行われる文化祭の取り決めなどもある。俺は授業が終わって昼休みになると、紗雪と慧を連れだって昇降口へ向かった。
学校の敷地内にある裏山には平安時代から残る小さな稲荷神社が立っていて、そこには神社の眷属である狐の神使が常駐している。神使の名前は、一狐と二狐。見た目は白くて丸いフォルムの、小さい狐達である。
人のあまり来ない神社の境内は静かで、雨が降らない限りは大抵ここでお昼を食べる。その際、狐達にはおかずなどを分けてあげていた。
今日も油揚げの甘煮をお土産に、裏山へ向かうため鼻歌交じりに靴を履く。
「あれ、蒼真達は今日も稲荷で昼飯か?」
下駄箱の脇を通りかかった智樹が、こちらにやって来た。
「智樹君も一緒にご飯食べる?」
紗雪の誘いに智樹は一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに表情を曇らせる。
「紗雪ちゃんからの魅力的なお誘いは凄く嬉しいんだけど、学校の怪談を集めるの頼まれててさ」
いつの間にか紗雪のことを名前で呼ぶようになっていた智樹は、がっくりと肩を落とす。慧が訝しげに聞いた。
「学校の怪談? そんなもの集めてどうするんだ?」
「そりゃあ貴島君、怪談話をするために決まってるよ。怪談と言えば夏の風物詩。学校で合宿する生徒達が、夜に怪談で盛り上がるんだ。自分の学校の怪談だと、涼しさ倍増だから」
そう言って智樹は胸元から手帳を出し、ひらひらと振る。それは智樹が仕入れた情報やネタが詰まった手帳だった。
慧のことは名字呼びのままなあたりが、何とも智樹らしい。
「俺だったら、寝泊りする場所の怪談なんて冗談じゃないけどなぁ。報酬は何なの?」
俺が尋ねると、智樹は紗雪に聞こえないように俺に囁く。
「運動部の女の子達と、夏休みにお祭りを見に行く約束を取り付けている」
そういや、中学の時も女子達と似たような約束してお祭りに行ってたな。あの時みたいに、見栄張って奢って散財しなきゃいいが……。
「そっか。じゃあ、頑張ってな」
そう言って稲荷神社に向かおうとすると、智樹が慌てて俺を引き止めた。
「ちょっと待て。今思い出したけど、稲荷神社と言えば最近すすり泣きが聞こえるって噂があるんだよな。本当かどうか、ついでに確かめてきてくれないか?」
「すすり泣き? 確かめるって言っても、今は思いっきり昼だけど……」
昼に幽霊が現れるのか? お弁当を食べに稲荷神社に行っている時も、嫌な気配を感じたことはないぞ。神の領域というだけあって、あの場所は澄んでいる。
智樹は手帳を確認してから、大きく首を横に振った。
「いや、昼に聞こえるらしい。稲荷神社の清掃担当の子達が聞いているから。だけど、見に行ってみるとそこには誰もいないんだってさ」
稲荷神社で怪奇現象か……。もしかして、一狐や二狐のことだろうか? 神使である彼らの姿や声を見聞き出来る人間は少ない。声だけを奇跡的に拾い、見に行ったら誰もいなかった、ということもあるかもしれない。
まぁ、いつも元気なあの神使達が、すすり泣くとは思えないけどな。
のんびり屋の二狐は、一狐に怒られても全くこたえないから泣いているところを見たことないし、神使としてのプライドが高い一狐も同じく泣く姿は想像出来ない。
「わかった。とにかく、気を付けてみる」
「蒼真、よろしくな!」
手を振る智樹と別れ、俺達は稲荷神社に向かう。急勾配の丘の上にある稲荷神社に、わざわざ来る生徒はいない。今日も俺達以外、生徒の姿は見当たらなかった。
境内のベンチの上で、一狐と二狐が丸まって昼寝をしている。俺達に気が付くと、一狐は大きく欠伸をして体を起こした。
「お前達が来たということは、もう昼か」
「ねぇ蒼真、今日は何持って来たの? 僕達も貰える?」
二狐はベンチを降りて、尻尾を揺らしながら俺の周りをぐるぐると走る。俺は間違って蹴ったりしないように、気を付けながら歩く。
「二狐、危ないって。今日は油揚げの甘煮を持って来たから」
「油揚げっ!? やったぁぁっ!」
嬉しそうに跳ねた二狐はベンチの横に付き、お座りをする。期待してふわふわの尻尾を振る白い子狐に、小さく噴き出した。とても神の使いとは思えない。
一狐と二狐に油揚げの甘煮を紙皿に載せて出し、俺達もお弁当を食べ始める。紗雪は重箱の二段重ね、慧は彼のお母さんの趣味なのか可愛いキャラ弁当だった。
俺は火焔に、小さく切った油揚げを楊枝に刺して渡しながら、そのお弁当を眺める。
「今日も二人のお弁当は凄いな」
家に専属コックがいる紗雪のお弁当は豪華で、慧のキャラ弁当はよく出来ていた。
詳しくない俺でもわかる、女の子に人気のクマのキャラクターだ。慧はクマの顔を模したおにぎりを掴み、二口で食べてしまう。
「空良と母さんがはまってるキャラなんだが、人のいる所じゃ食いにくくて仕方ない。量も足りないし」
不機嫌そうに顔をしかめる慧の気持ちは、同じ男子高校生としてよくわかる。可愛すぎるお弁当は、思春期の男子にとって少し恥ずかしいよな。中学二年になる慧の妹の空良ちゃんなら、きっと喜ぶのだろうけど。
「可愛いじゃない。作ってもらえるだけありがたいことよ。足りない分は私のお弁当を分けてあげるわ。もちろん、蒼真君も好きなおかずを食べてね」
紗雪はにっこり微笑んで、俺に重箱を差し出してくれる。俺も油揚げの甘煮を入れたタッパーを差し出した。
「ありがとう。もし良かったら、俺のも食べて」
二人は油揚げの甘煮を口に入れ、俺に向かって微笑んだ。
「美味い。これで稲荷寿司を作ってもいいだろうな」
「深みのある甘さね。色も普通のより濃い気がするのだけど、どうして?」
「醤油を入れているのもそうだけど、決め手は黒糖を使っているからかな。ばあちゃんがよく作ってくれたやつなんだ。気に入ってくれて良かった」
「うむ、なかなかの美味だ」
「もっとちょうだい、蒼真ぁ」
一狐と二狐はもう油揚げを食べ終え、俺の足を叩いておかわりを要求する。火焔も口を甘煮の汁でべとべとにしながら、楊枝を掲げていた。こちらもおかわりが欲しいらしい。俺はそれぞれに追加分を出してやり、がっつく子狐達の光景に頬を緩める。
そんな昼食を終え、俺は満足そうにお腹を叩く神使達に、先ほどの噂について聞いてみた。
「は? 何で俺達がすすり泣くんだよ」
一狐はそう言って、口元についた甘煮の汁をペロリと舐める。
「やっぱりそうだよね。じゃあ、何だろう?」
首を傾げる俺に、紗雪や慧も考える仕草をする。
「何かしらの怪奇現象が起こるから、怪談話になるのよね?」
「小さくとも神使のいる稲荷だから、幽霊かなんかの負のエネルギーを寄せ付けるはずないが……」
すると、二狐が前足を挙げて俺に肉球を見せた。
「はーい。僕、知ってるよ。社の裏手で、泣いてる子がいるんだ」
「何? 俺は知らないぞ。何で教えてくれなかったんだよ」
一狐が不満げに眉を顰める。
「だってその子から悪い感じしなかったし、一狐に言ったら理由も聞かないで追い出しちゃうでしょ? よけいに泣かせたら可哀想だもん」
二狐はふさふさの胸を大きく反らせて言い、一狐はグッと言葉を詰まらせる。
「泣いてる理由は聞いたの?」
俺の問いに、二狐は大きく首を横に振った。
「聞いても教えてくれなかったんだよね。でも、もしかしたら今日も来てるかもしれない。いつもいる場所が決まってるから。ついて来て!」
軽やかな足取りの二狐の案内で、俺達は社の裏手に向かう。
微かではあるが、ヒュンヒュンと泣く声が聞こえてきた。俺達は顔を見合わせ、音を立てないように声のする場所を覗く。
そこには、小さな狸が体を丸めて鳴いていた。
うわ、狸だ。懐かしい。ばあちゃんと住んでいた山にも狸が棲んでたなぁ。山から下りて来たのだろうか。
すると、俺達の気配に気が付いた狸が、慌てて逃げようとした。だが、落ち葉を踏んで滑り、その拍子に木の根に顔をぶつける。相当痛かったのか、狸は鼻を押さえ蹲った。野生の狸にしては、運動神経はあまりよろしくないようだ。
「大丈夫。捕まえたりしないから」
言葉は通じないだろうが、なるべく優しい声で話しかける。すると、俺の後ろで狸を窺っていた紗雪達が、ふと何かに気付く。
「あら? 貴女、もしかして茂木さん?」
「うちのクラスの茂木泉か」
紗雪と慧の言葉に、おいでおいでと手招きしていた俺は二人を振り返る。
「え? 茂木さん?」
クラスメイトの茂木泉さんは、礼儀正しい口調の大人しい女の子だ。
この学校は妖狐である結月さんが理事長をしているから、人に変化した妖怪や半妖の生徒も在籍していると聞いてはいた。だが、まさか茂木さんが妖怪だったとは……。
すると、狸が俺を見上げて口を開いた。
「そう言えば、小日向君は結月様の所で、居候なさっているんですものね。今更隠しても仕方ありませんよね……」
呆然としたままの俺の前で、狸は頭に葉をちょこんと載せる。ポフッと煙が狸を包み込み、次に現れたのは茂木さんだった。
「茂木さん、狸だったの? 全然わからなかった」
「狸の妖怪は変化がとても上手だからな。同じ妖怪でも化かされることがあるくらいだ」
「へぇ、凄いね」
慧の説明に頷き、感心して茂木さんを見つめる。だが、茂木さんがみるみる目に涙を浮かべた。
「私の変化なんか凄くないです。今に狸だとばれてしまうに決まっています!」
そう言って、顔を覆いさめざめと泣き始めた。一狐と二狐が「あーあ」と言ってこちらを見るので、俺は自分を指さす。
「え、俺!? 凄いって褒めただけだよ?」
だが、俺が褒めた途端に泣き出したのは確かだ。もしかしたら嫌な思いをさせてしまったのかもしれない。
「ご、ごめん。何か気に障ることを言ったなら謝るよ」
こんな時、泣いている女の子を慰めるスキルを持ち合わせていない自分が恨めしい。
結月さんなら優しく慰めることが出来るだろうし、智樹だって軽口や冗談で笑わせてあげられそうだ。
「違うんです。小日向君は何も悪くは……私がいけないんです」
そう言いながらも、茂木さんはさらにポロポロと涙を零す。紗雪はハンカチでその涙を拭い、茂木さんの背を優しく摩った。
「とりあえず、ベンチに座って話をしましょう」
紗雪の提案で先ほどまで食事していたベンチに場所を移し、茂木さんが落ち着くのを待って事情を聞くことにした。
「ゆっくりでいいから、どうしてあそこにいたのか話してくれる?」
紗雪が優しい微笑みを浮かべ尋ねると、茂木さんはコクリと頷いて話し始めた。
「ここはあまり人が来ないですし、一人で泣きたい時に来るんです。狸の姿でいたのは、妖怪を見ることの出来る人は稀なので……」
そう。大半の人間は、あやかしを見ることが出来ない。
にもかかわらず俺は、茂木さんのことを野生の狸だと思って声をかけてしまった。前も一狐達を発見した時、白い犬だと勘違いして撫で、慧にあやかしが見える人間だとばれてしまったのに。……俺、学習能力がないな。
「何で泣いてたの~?」
二狐が茂木さんの膝に前足をかけ、顔を覗き込む。
「あの……私、上手く人間に化けられているでしょうか?」
そう自信なさげに尋ねてくる茂木さんに、俺達は不可解に思いながらも頷いた。
「大丈夫。どう見ても、人間の女の子だよ」
茂木さんは少し安堵した様子を見せ、それから語り出した。
「私、人間界にずっと憧れていたんです。故郷の狸の里では、お洒落といっても自然にある植物を飾る程度でしたから。人間界に来たらいっぱいお洒落するんだって、そう思っていました。でも、いざ街に出かけたら、何だか周りからジロジロと見られて……。自分の変化が上手く出来てないからかもしれないって思ったら、人間界にいるのが怖くなってしまったんです」
「どんな格好で出かけたの?」
紗雪に尋ねられた茂木さんは、ポフッと制服姿から私服へと変化した。
服は全体的に昭和初期を思わせる雰囲気で、上は豹柄に下はゼブラ柄という肉食獣対草食獣の喧嘩が起きていた。サンダルは今流行りのものではなく、お使いに履いて行くようなタイプだ。
その姿に驚く俺達に、茂木さんは一生懸命こだわりを説明する。
「服のトレンドは昔のものがまた戻ってくるって聞いたので、ちょっとレトロなものにしました。あと、柄と柄を合わせると、お洒落上級者だと聞いたので……。足はサンダルで程よく力の抜けた感じを出しました」
俺は流行やファッションに詳しくないが、茂木さんの格好は全体的にずれている気がした。何と言っていいものか迷っていると、茂木さんはしょんぼりと俯く。
「やっぱり私の変化はおかしいんですね……」
「……いや、変化というより服装の問題だろう」
珍しく困った顔の慧の言葉に、茂木さんはキョトンと首を傾げた。
「服装ですか?」
「うん。どこをどうしたらいいって言われると困るんだけど……。紗雪、アドバイスしてあげられない?」
俺がお願いすると、紗雪はにっこりと微笑んだ。
「なら私よりも、ファッションに詳しい子の方が適任だわ」
お赤飯や尾頭付きの鯛。俺の好物の唐揚げや、茶碗蒸し。デザートとしてぜんざいとケーキがある。お祝いの人数は多い方がいいからと、作ってくれた安曇や冬志も加わってのパーティーになった。
「霊力解放が成功したわけじゃないのに、こんなお祝いしてもらっていいのかな」
ワイワイと賑わう皆を見ながら、思わずポツリと呟く。
「妖怪は宴会が好きなのさ。気にするくらいなら、楽しみな」
朝霧はそう言って日本酒の入った盃を舐め、そんな朝霧を撫でて結月さんが微笑む。
「霊力解放が上手くいったら、今度は私がお祝いを企画するよ」
「その時は、また駆けつけます。お祝いと言ったら、赤飯ですから」
安曇はそう言って、結月さんに朝霧、自分の順に盃にお酒を注ぐ。
皆が楽しいならいいかと思い直した俺は、自分の皿に載るお赤飯を食べることにした。ささげ豆ではなく、小豆のお赤飯は初めてだ。一口食べた途端、その美味しさに驚いて目を見開く。
糯米がもちもちしていて、小豆がふっくらしてる。ごま塩が糯米の甘さをより一層引き立てていた。
「今までにお赤飯を食べたことはあるけど、こんなに美味しいのは初めてだ」
「本当か、蒼真! オイラ達も赤飯が欲しい!」
ぺちぺちと机を叩く河太と河次郎に、お赤飯を取り分けてあげる。ついでに火焔の手にも、一口分のお赤飯を載せてあげた。
「本当だ。小豆、美味いっ!」
「お米ももちもちです!」
お赤飯を頬張ったまま河太と河次郎が言い、口をもっちもっちと動かしながら火焔が頷く。そんな感想を耳にした冬志が、嬉しそうに笑った。
「美味いだろう。赤飯は手間がかかるけど、それを惜しまないで作ると出来上がりが違うんだよ」
「親父さんに教わったのか? 里で料理人をやってるんだろう?」
赤飯を食べながら慧が聞くと、冬志は渋い顔をする。
「赤飯は親父に教わった。でも、他の料理は今の職場で修業した味だ」
「冬志さんは和食の料理人として、人間界で働いてらっしゃるのよね」
紗雪はそう言いながら、俺の皿に唐揚げなどのおかずを取り分けてくれる。
へぇ、彼も料理人なのか。どうりでどの料理もプロ級の出来栄えなはずだ。でも、調理人の服を着てる姿は想像出来ないな。余程、今のバンドマンみたいな格好の方が似合っている。
「てっきり音楽関係の職業なのかと思っていました」
「休みの日はバンドやってるぜ。和食料理の店じゃなきゃ、休みのたびに髪をカラースプレーで染めることないんだけど……」
彼は髪を摘んで、大きくため息を吐く。
「冬志さんの勤めているお店は、親方さんが厳しいって言ってましたものね」
紗雪が苦笑すると、冬志は頭を上げ真剣な顔でグッと拳を握る。
「いつか自分で店を出せるようになったら、店主が茶髪でも平気な、自由な和食の店を作るぜ」
「自由……と言うと、創作和食とかですか?」
尋ねた俺に、冬志は大きく首を横に振った。
「いいや。ライブハウスと伝統的な和食料理を融合させた店を作るんだ」
爆音と和食……。凄い取り合わせだが、今までにない試みかもしれない。
慧は感心した様子で、冬志に言う。
「へぇ。意外に将来のことを考えてんだな。興味があるから、店が出来たら行くよ」
「じゃ、じゃあ、俺も気になるので……」
俺が小さく手を挙げると、冬志は満面の笑みでコクコクと頷いた。
「あぁ、開店したら是非来てくれよ!」
そんな息子を、安曇は盃に酒を注ぎながらチラリと見る。
「バンドに給料の殆どを使っているからなぁ。いつになったら店が持てるのか……」
嘆く父親の言葉を、冬志は聞こえないふりをした。
*
テストが終わっても、夏休みまではまだ日があった。通常授業の他に、二学期に行われる文化祭の取り決めなどもある。俺は授業が終わって昼休みになると、紗雪と慧を連れだって昇降口へ向かった。
学校の敷地内にある裏山には平安時代から残る小さな稲荷神社が立っていて、そこには神社の眷属である狐の神使が常駐している。神使の名前は、一狐と二狐。見た目は白くて丸いフォルムの、小さい狐達である。
人のあまり来ない神社の境内は静かで、雨が降らない限りは大抵ここでお昼を食べる。その際、狐達にはおかずなどを分けてあげていた。
今日も油揚げの甘煮をお土産に、裏山へ向かうため鼻歌交じりに靴を履く。
「あれ、蒼真達は今日も稲荷で昼飯か?」
下駄箱の脇を通りかかった智樹が、こちらにやって来た。
「智樹君も一緒にご飯食べる?」
紗雪の誘いに智樹は一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに表情を曇らせる。
「紗雪ちゃんからの魅力的なお誘いは凄く嬉しいんだけど、学校の怪談を集めるの頼まれててさ」
いつの間にか紗雪のことを名前で呼ぶようになっていた智樹は、がっくりと肩を落とす。慧が訝しげに聞いた。
「学校の怪談? そんなもの集めてどうするんだ?」
「そりゃあ貴島君、怪談話をするために決まってるよ。怪談と言えば夏の風物詩。学校で合宿する生徒達が、夜に怪談で盛り上がるんだ。自分の学校の怪談だと、涼しさ倍増だから」
そう言って智樹は胸元から手帳を出し、ひらひらと振る。それは智樹が仕入れた情報やネタが詰まった手帳だった。
慧のことは名字呼びのままなあたりが、何とも智樹らしい。
「俺だったら、寝泊りする場所の怪談なんて冗談じゃないけどなぁ。報酬は何なの?」
俺が尋ねると、智樹は紗雪に聞こえないように俺に囁く。
「運動部の女の子達と、夏休みにお祭りを見に行く約束を取り付けている」
そういや、中学の時も女子達と似たような約束してお祭りに行ってたな。あの時みたいに、見栄張って奢って散財しなきゃいいが……。
「そっか。じゃあ、頑張ってな」
そう言って稲荷神社に向かおうとすると、智樹が慌てて俺を引き止めた。
「ちょっと待て。今思い出したけど、稲荷神社と言えば最近すすり泣きが聞こえるって噂があるんだよな。本当かどうか、ついでに確かめてきてくれないか?」
「すすり泣き? 確かめるって言っても、今は思いっきり昼だけど……」
昼に幽霊が現れるのか? お弁当を食べに稲荷神社に行っている時も、嫌な気配を感じたことはないぞ。神の領域というだけあって、あの場所は澄んでいる。
智樹は手帳を確認してから、大きく首を横に振った。
「いや、昼に聞こえるらしい。稲荷神社の清掃担当の子達が聞いているから。だけど、見に行ってみるとそこには誰もいないんだってさ」
稲荷神社で怪奇現象か……。もしかして、一狐や二狐のことだろうか? 神使である彼らの姿や声を見聞き出来る人間は少ない。声だけを奇跡的に拾い、見に行ったら誰もいなかった、ということもあるかもしれない。
まぁ、いつも元気なあの神使達が、すすり泣くとは思えないけどな。
のんびり屋の二狐は、一狐に怒られても全くこたえないから泣いているところを見たことないし、神使としてのプライドが高い一狐も同じく泣く姿は想像出来ない。
「わかった。とにかく、気を付けてみる」
「蒼真、よろしくな!」
手を振る智樹と別れ、俺達は稲荷神社に向かう。急勾配の丘の上にある稲荷神社に、わざわざ来る生徒はいない。今日も俺達以外、生徒の姿は見当たらなかった。
境内のベンチの上で、一狐と二狐が丸まって昼寝をしている。俺達に気が付くと、一狐は大きく欠伸をして体を起こした。
「お前達が来たということは、もう昼か」
「ねぇ蒼真、今日は何持って来たの? 僕達も貰える?」
二狐はベンチを降りて、尻尾を揺らしながら俺の周りをぐるぐると走る。俺は間違って蹴ったりしないように、気を付けながら歩く。
「二狐、危ないって。今日は油揚げの甘煮を持って来たから」
「油揚げっ!? やったぁぁっ!」
嬉しそうに跳ねた二狐はベンチの横に付き、お座りをする。期待してふわふわの尻尾を振る白い子狐に、小さく噴き出した。とても神の使いとは思えない。
一狐と二狐に油揚げの甘煮を紙皿に載せて出し、俺達もお弁当を食べ始める。紗雪は重箱の二段重ね、慧は彼のお母さんの趣味なのか可愛いキャラ弁当だった。
俺は火焔に、小さく切った油揚げを楊枝に刺して渡しながら、そのお弁当を眺める。
「今日も二人のお弁当は凄いな」
家に専属コックがいる紗雪のお弁当は豪華で、慧のキャラ弁当はよく出来ていた。
詳しくない俺でもわかる、女の子に人気のクマのキャラクターだ。慧はクマの顔を模したおにぎりを掴み、二口で食べてしまう。
「空良と母さんがはまってるキャラなんだが、人のいる所じゃ食いにくくて仕方ない。量も足りないし」
不機嫌そうに顔をしかめる慧の気持ちは、同じ男子高校生としてよくわかる。可愛すぎるお弁当は、思春期の男子にとって少し恥ずかしいよな。中学二年になる慧の妹の空良ちゃんなら、きっと喜ぶのだろうけど。
「可愛いじゃない。作ってもらえるだけありがたいことよ。足りない分は私のお弁当を分けてあげるわ。もちろん、蒼真君も好きなおかずを食べてね」
紗雪はにっこり微笑んで、俺に重箱を差し出してくれる。俺も油揚げの甘煮を入れたタッパーを差し出した。
「ありがとう。もし良かったら、俺のも食べて」
二人は油揚げの甘煮を口に入れ、俺に向かって微笑んだ。
「美味い。これで稲荷寿司を作ってもいいだろうな」
「深みのある甘さね。色も普通のより濃い気がするのだけど、どうして?」
「醤油を入れているのもそうだけど、決め手は黒糖を使っているからかな。ばあちゃんがよく作ってくれたやつなんだ。気に入ってくれて良かった」
「うむ、なかなかの美味だ」
「もっとちょうだい、蒼真ぁ」
一狐と二狐はもう油揚げを食べ終え、俺の足を叩いておかわりを要求する。火焔も口を甘煮の汁でべとべとにしながら、楊枝を掲げていた。こちらもおかわりが欲しいらしい。俺はそれぞれに追加分を出してやり、がっつく子狐達の光景に頬を緩める。
そんな昼食を終え、俺は満足そうにお腹を叩く神使達に、先ほどの噂について聞いてみた。
「は? 何で俺達がすすり泣くんだよ」
一狐はそう言って、口元についた甘煮の汁をペロリと舐める。
「やっぱりそうだよね。じゃあ、何だろう?」
首を傾げる俺に、紗雪や慧も考える仕草をする。
「何かしらの怪奇現象が起こるから、怪談話になるのよね?」
「小さくとも神使のいる稲荷だから、幽霊かなんかの負のエネルギーを寄せ付けるはずないが……」
すると、二狐が前足を挙げて俺に肉球を見せた。
「はーい。僕、知ってるよ。社の裏手で、泣いてる子がいるんだ」
「何? 俺は知らないぞ。何で教えてくれなかったんだよ」
一狐が不満げに眉を顰める。
「だってその子から悪い感じしなかったし、一狐に言ったら理由も聞かないで追い出しちゃうでしょ? よけいに泣かせたら可哀想だもん」
二狐はふさふさの胸を大きく反らせて言い、一狐はグッと言葉を詰まらせる。
「泣いてる理由は聞いたの?」
俺の問いに、二狐は大きく首を横に振った。
「聞いても教えてくれなかったんだよね。でも、もしかしたら今日も来てるかもしれない。いつもいる場所が決まってるから。ついて来て!」
軽やかな足取りの二狐の案内で、俺達は社の裏手に向かう。
微かではあるが、ヒュンヒュンと泣く声が聞こえてきた。俺達は顔を見合わせ、音を立てないように声のする場所を覗く。
そこには、小さな狸が体を丸めて鳴いていた。
うわ、狸だ。懐かしい。ばあちゃんと住んでいた山にも狸が棲んでたなぁ。山から下りて来たのだろうか。
すると、俺達の気配に気が付いた狸が、慌てて逃げようとした。だが、落ち葉を踏んで滑り、その拍子に木の根に顔をぶつける。相当痛かったのか、狸は鼻を押さえ蹲った。野生の狸にしては、運動神経はあまりよろしくないようだ。
「大丈夫。捕まえたりしないから」
言葉は通じないだろうが、なるべく優しい声で話しかける。すると、俺の後ろで狸を窺っていた紗雪達が、ふと何かに気付く。
「あら? 貴女、もしかして茂木さん?」
「うちのクラスの茂木泉か」
紗雪と慧の言葉に、おいでおいでと手招きしていた俺は二人を振り返る。
「え? 茂木さん?」
クラスメイトの茂木泉さんは、礼儀正しい口調の大人しい女の子だ。
この学校は妖狐である結月さんが理事長をしているから、人に変化した妖怪や半妖の生徒も在籍していると聞いてはいた。だが、まさか茂木さんが妖怪だったとは……。
すると、狸が俺を見上げて口を開いた。
「そう言えば、小日向君は結月様の所で、居候なさっているんですものね。今更隠しても仕方ありませんよね……」
呆然としたままの俺の前で、狸は頭に葉をちょこんと載せる。ポフッと煙が狸を包み込み、次に現れたのは茂木さんだった。
「茂木さん、狸だったの? 全然わからなかった」
「狸の妖怪は変化がとても上手だからな。同じ妖怪でも化かされることがあるくらいだ」
「へぇ、凄いね」
慧の説明に頷き、感心して茂木さんを見つめる。だが、茂木さんがみるみる目に涙を浮かべた。
「私の変化なんか凄くないです。今に狸だとばれてしまうに決まっています!」
そう言って、顔を覆いさめざめと泣き始めた。一狐と二狐が「あーあ」と言ってこちらを見るので、俺は自分を指さす。
「え、俺!? 凄いって褒めただけだよ?」
だが、俺が褒めた途端に泣き出したのは確かだ。もしかしたら嫌な思いをさせてしまったのかもしれない。
「ご、ごめん。何か気に障ることを言ったなら謝るよ」
こんな時、泣いている女の子を慰めるスキルを持ち合わせていない自分が恨めしい。
結月さんなら優しく慰めることが出来るだろうし、智樹だって軽口や冗談で笑わせてあげられそうだ。
「違うんです。小日向君は何も悪くは……私がいけないんです」
そう言いながらも、茂木さんはさらにポロポロと涙を零す。紗雪はハンカチでその涙を拭い、茂木さんの背を優しく摩った。
「とりあえず、ベンチに座って話をしましょう」
紗雪の提案で先ほどまで食事していたベンチに場所を移し、茂木さんが落ち着くのを待って事情を聞くことにした。
「ゆっくりでいいから、どうしてあそこにいたのか話してくれる?」
紗雪が優しい微笑みを浮かべ尋ねると、茂木さんはコクリと頷いて話し始めた。
「ここはあまり人が来ないですし、一人で泣きたい時に来るんです。狸の姿でいたのは、妖怪を見ることの出来る人は稀なので……」
そう。大半の人間は、あやかしを見ることが出来ない。
にもかかわらず俺は、茂木さんのことを野生の狸だと思って声をかけてしまった。前も一狐達を発見した時、白い犬だと勘違いして撫で、慧にあやかしが見える人間だとばれてしまったのに。……俺、学習能力がないな。
「何で泣いてたの~?」
二狐が茂木さんの膝に前足をかけ、顔を覗き込む。
「あの……私、上手く人間に化けられているでしょうか?」
そう自信なさげに尋ねてくる茂木さんに、俺達は不可解に思いながらも頷いた。
「大丈夫。どう見ても、人間の女の子だよ」
茂木さんは少し安堵した様子を見せ、それから語り出した。
「私、人間界にずっと憧れていたんです。故郷の狸の里では、お洒落といっても自然にある植物を飾る程度でしたから。人間界に来たらいっぱいお洒落するんだって、そう思っていました。でも、いざ街に出かけたら、何だか周りからジロジロと見られて……。自分の変化が上手く出来てないからかもしれないって思ったら、人間界にいるのが怖くなってしまったんです」
「どんな格好で出かけたの?」
紗雪に尋ねられた茂木さんは、ポフッと制服姿から私服へと変化した。
服は全体的に昭和初期を思わせる雰囲気で、上は豹柄に下はゼブラ柄という肉食獣対草食獣の喧嘩が起きていた。サンダルは今流行りのものではなく、お使いに履いて行くようなタイプだ。
その姿に驚く俺達に、茂木さんは一生懸命こだわりを説明する。
「服のトレンドは昔のものがまた戻ってくるって聞いたので、ちょっとレトロなものにしました。あと、柄と柄を合わせると、お洒落上級者だと聞いたので……。足はサンダルで程よく力の抜けた感じを出しました」
俺は流行やファッションに詳しくないが、茂木さんの格好は全体的にずれている気がした。何と言っていいものか迷っていると、茂木さんはしょんぼりと俯く。
「やっぱり私の変化はおかしいんですね……」
「……いや、変化というより服装の問題だろう」
珍しく困った顔の慧の言葉に、茂木さんはキョトンと首を傾げた。
「服装ですか?」
「うん。どこをどうしたらいいって言われると困るんだけど……。紗雪、アドバイスしてあげられない?」
俺がお願いすると、紗雪はにっこりと微笑んだ。
「なら私よりも、ファッションに詳しい子の方が適任だわ」
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