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第十二話 「悪役令嬢からの罰」
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正直、私が直接叩き潰すのは簡単だ。
でも、うゆくんの心を癒し、
なおかつ——「自分は存在していい」と理解してもらうには、
ただの復讐では足りない。
彼の両親には、
うゆくんに二度と近づけないよう、
“世間ごと”綺麗に終わらせる必要がある。
だからこそ私は、ある場を用意することにした。
「お父様。
我が家で、お茶会を開いてもよろしいでしょうか?」
「……突然だね」
「この場で釘を刺します。
結真くんが、今後二度と傷つかないために」
父は小さく息を吐き——
「……鈴乃らしいな。好きにしなさい」
この家の““権力””は、使うべき時に使う。
私はそう、確信した。
そして数日後、私は計画通り、あの両親をお茶会へ招いた。
招待状を受け取った時点で、“勝ったつもり”なのだろう。
うゆくんの義母は、悲しげな表情の奥に潜む下心を、まるで隠せていなかった。
「西園寺様…本日はお招きいただいて……」
その言葉を遮るように、お父様が静かに口を開いた。
「招いたのは娘だ」
そう言い残し、お父様はその場を後にした。
あとは——“娘の仕事”である。
うゆくんの両親はハッと息を呑み、慌てて私へ向き直った。
「鈴乃様…この度はこのような場を設けてくださいまして、誠にありがとうございます……」
「ごきげんよう。
結真くんの“元・ご家族”の方々」
私はにこやかに微笑み——完璧な礼を返した。
もちろん、心は一欠片も込めていない。
すると義母は、何を思ったのか。
とんでもないことを言い出した。
「あの…結真に、ひと目だけでも会わせていただけないでしょうか……」
「申し訳ありませんが」
私は微笑みを崩さぬまま、淡々と告げる。
「彼はもう、西園寺家の息子です。
いくら両親といえど、そう簡単に我が西園寺家の者に会わせることはできませんの」
腹の底は煮えくり返っていた。
けれど私は、優雅に、完璧に。
“断る”という選択を突きつけた。
ちなみに——
うゆくんは、今日は屋敷の外へ出るよう手配してある。
この場に呼び出される心配はない。
「さあ、お茶の準備が整っております。
どうぞ、こちらへ」
義母は一瞬だけ、顔を引きつらせた。
けれど、目的は別にあるのだろう。
次の瞬間には、何事もなかったように笑みを取り繕った。
「あの…
息子に会わせていただけないのなら、
本日はなぜ私たちは呼ばれたのでしょうか」
……よくも、そんな口が利けるものだ。
「忠告のためです」
「はっ……忠告?」
「ええ。忠告です。
今後、あなた方が結真くんに近づくことは決して許しません。
もし…再び彼に接触することがあれば、
我が西園寺家は、あなた方と徹底的に戦わせていただきます。
……それが、どういう意味か。
分かりますわよね?」
「酷い…酷すぎます……!
私たちは我が子を失って、悲しみに明け暮れているというのに…
そこまでの仕打ちをする必要があるのですか…?
今後、我が子に会えないのでしたら——
相応の対価をいただかなければ、到底納得できません!」
いやはや、実に名演技だ。
彼女らは、おそらく私を箱入りの世間知らずだと思って丸め込もうとしているのであろう。
私の父よりは、ずっと楽な相手だと。
——いいでしょう。まずは踊って差し上げますわ。
「相応な対価とは?」
義母は、勝ち誇ったように口を開いた。
「本当はこんなこと言いたくはありませんが…金銭で解決するのが妥当かと」
……どの口が、それを言うのだろうか。
「つまりそれは…
あなた方の息子を、お金で売るということでしょうか?」
「本当は、私たちだってこんなことしたくないんです……」
懲りもせず、義母は泣く演技を始めた。
「“したくない”……ですか。
おかしいですわね」
私は微笑みを崩さず、言葉を続ける。
「彼の背中には、““未だに消えない痣や傷””が残っているというのに…」
「な、なんのことでしょう……」
その瞬間、義母の瞳がわずかに揺れた。
——明らかな動揺。
「ゆ、結真は昔から、はしゃいでよく転ぶ子だったんです。
そのときの傷がまだ残っているだなんて…大変だわ!
結真のことは、親である私たちの方がよく分かって——」
「少なくとも“西園寺家に来てから”の彼は、転ぶどころか…いつも息を殺しているように見えましたけれど」
「それは…まだ結真はここに慣れていないし…!
それに転んでたのは子供の頃の話ですから……」
「そう……そうですわよね」
私は微笑みを深める。
「彼の傷は、明らかに新しいものではありませんでした。
昔、転んでできた傷が今も残っているなんて……痛々しくて見ていられません」
一拍置いて、私は首を傾げた。
「——けれど。
どうして“転んだだけ”で、背中や腕の見えない部分を怪我するのでしょう?」
「……っ」
「本当に、彼が“よく転ぶ子”だったのかどうか。
念のため、当時のお屋敷の使用人の方々や、身近にいた方々に
一度、お話を伺いに参りますわね」
「……それは」
「我が西園寺家の息子が、傷だらけというのも外聞が悪いですもの。
それで、もし故意に誰かが彼に傷をつけたというのであれば——
それはもう、西園寺家に““喧嘩を売った””も同然ですわ。
…随分と、肝が据わっていらっしゃること」
「………」
さすがに、だんまりである。
「さあ、そうと決まれば、
早速、然るべき所に調査を依頼しましょう?
あれだけ彼を心配されていたのですもの。
もちろん、あなた方ご両親も協力してくださいますわよね?」
「そして、もし本当に““転んだときにできた傷””だと判明したのなら——
その時は、あなた方のご要望も、
私からお父様へ進言して差し上げますわ」
「……それでは、お話もまとまったことですし。
お気をつけてお帰りあそばせ」
うゆくんの両親は顔を真っ青にし、逃げるように席を立った。
私の視界から消えるまで、私は微笑みを崩さなかった。
——だが、
私の“罰”は、まだ終わっていなかった。
でも、うゆくんの心を癒し、
なおかつ——「自分は存在していい」と理解してもらうには、
ただの復讐では足りない。
彼の両親には、
うゆくんに二度と近づけないよう、
“世間ごと”綺麗に終わらせる必要がある。
だからこそ私は、ある場を用意することにした。
「お父様。
我が家で、お茶会を開いてもよろしいでしょうか?」
「……突然だね」
「この場で釘を刺します。
結真くんが、今後二度と傷つかないために」
父は小さく息を吐き——
「……鈴乃らしいな。好きにしなさい」
この家の““権力””は、使うべき時に使う。
私はそう、確信した。
そして数日後、私は計画通り、あの両親をお茶会へ招いた。
招待状を受け取った時点で、“勝ったつもり”なのだろう。
うゆくんの義母は、悲しげな表情の奥に潜む下心を、まるで隠せていなかった。
「西園寺様…本日はお招きいただいて……」
その言葉を遮るように、お父様が静かに口を開いた。
「招いたのは娘だ」
そう言い残し、お父様はその場を後にした。
あとは——“娘の仕事”である。
うゆくんの両親はハッと息を呑み、慌てて私へ向き直った。
「鈴乃様…この度はこのような場を設けてくださいまして、誠にありがとうございます……」
「ごきげんよう。
結真くんの“元・ご家族”の方々」
私はにこやかに微笑み——完璧な礼を返した。
もちろん、心は一欠片も込めていない。
すると義母は、何を思ったのか。
とんでもないことを言い出した。
「あの…結真に、ひと目だけでも会わせていただけないでしょうか……」
「申し訳ありませんが」
私は微笑みを崩さぬまま、淡々と告げる。
「彼はもう、西園寺家の息子です。
いくら両親といえど、そう簡単に我が西園寺家の者に会わせることはできませんの」
腹の底は煮えくり返っていた。
けれど私は、優雅に、完璧に。
“断る”という選択を突きつけた。
ちなみに——
うゆくんは、今日は屋敷の外へ出るよう手配してある。
この場に呼び出される心配はない。
「さあ、お茶の準備が整っております。
どうぞ、こちらへ」
義母は一瞬だけ、顔を引きつらせた。
けれど、目的は別にあるのだろう。
次の瞬間には、何事もなかったように笑みを取り繕った。
「あの…
息子に会わせていただけないのなら、
本日はなぜ私たちは呼ばれたのでしょうか」
……よくも、そんな口が利けるものだ。
「忠告のためです」
「はっ……忠告?」
「ええ。忠告です。
今後、あなた方が結真くんに近づくことは決して許しません。
もし…再び彼に接触することがあれば、
我が西園寺家は、あなた方と徹底的に戦わせていただきます。
……それが、どういう意味か。
分かりますわよね?」
「酷い…酷すぎます……!
私たちは我が子を失って、悲しみに明け暮れているというのに…
そこまでの仕打ちをする必要があるのですか…?
今後、我が子に会えないのでしたら——
相応の対価をいただかなければ、到底納得できません!」
いやはや、実に名演技だ。
彼女らは、おそらく私を箱入りの世間知らずだと思って丸め込もうとしているのであろう。
私の父よりは、ずっと楽な相手だと。
——いいでしょう。まずは踊って差し上げますわ。
「相応な対価とは?」
義母は、勝ち誇ったように口を開いた。
「本当はこんなこと言いたくはありませんが…金銭で解決するのが妥当かと」
……どの口が、それを言うのだろうか。
「つまりそれは…
あなた方の息子を、お金で売るということでしょうか?」
「本当は、私たちだってこんなことしたくないんです……」
懲りもせず、義母は泣く演技を始めた。
「“したくない”……ですか。
おかしいですわね」
私は微笑みを崩さず、言葉を続ける。
「彼の背中には、““未だに消えない痣や傷””が残っているというのに…」
「な、なんのことでしょう……」
その瞬間、義母の瞳がわずかに揺れた。
——明らかな動揺。
「ゆ、結真は昔から、はしゃいでよく転ぶ子だったんです。
そのときの傷がまだ残っているだなんて…大変だわ!
結真のことは、親である私たちの方がよく分かって——」
「少なくとも“西園寺家に来てから”の彼は、転ぶどころか…いつも息を殺しているように見えましたけれど」
「それは…まだ結真はここに慣れていないし…!
それに転んでたのは子供の頃の話ですから……」
「そう……そうですわよね」
私は微笑みを深める。
「彼の傷は、明らかに新しいものではありませんでした。
昔、転んでできた傷が今も残っているなんて……痛々しくて見ていられません」
一拍置いて、私は首を傾げた。
「——けれど。
どうして“転んだだけ”で、背中や腕の見えない部分を怪我するのでしょう?」
「……っ」
「本当に、彼が“よく転ぶ子”だったのかどうか。
念のため、当時のお屋敷の使用人の方々や、身近にいた方々に
一度、お話を伺いに参りますわね」
「……それは」
「我が西園寺家の息子が、傷だらけというのも外聞が悪いですもの。
それで、もし故意に誰かが彼に傷をつけたというのであれば——
それはもう、西園寺家に““喧嘩を売った””も同然ですわ。
…随分と、肝が据わっていらっしゃること」
「………」
さすがに、だんまりである。
「さあ、そうと決まれば、
早速、然るべき所に調査を依頼しましょう?
あれだけ彼を心配されていたのですもの。
もちろん、あなた方ご両親も協力してくださいますわよね?」
「そして、もし本当に““転んだときにできた傷””だと判明したのなら——
その時は、あなた方のご要望も、
私からお父様へ進言して差し上げますわ」
「……それでは、お話もまとまったことですし。
お気をつけてお帰りあそばせ」
うゆくんの両親は顔を真っ青にし、逃げるように席を立った。
私の視界から消えるまで、私は微笑みを崩さなかった。
——だが、
私の“罰”は、まだ終わっていなかった。
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