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第二十一話 「私のために争わないで?」
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目の前には白水。
隣には麗しのうゆくん。
そして、私。
なんだか、原作通りの三角関係みたいな構図だ。
……ここに私さえいなければ、完璧なのに。
ぐぬぬ。
おしゃれなガゼボの中に飾られたテーブルの上には、高級な香りの紅茶とRaB itsのお菓子が優雅に彩られている。
色々込みで、正直来てよかったと言わざるを得ない。
白水は原作でも、格好良く、優雅で、常にスマートに決めるクールで誠実(?)な男だった。
とにかく女性人気が凄まじい。
その白水が主催した今回のお茶会の会場は——宝来邸の華々しい庭園。
美しく珍しい薔薇が咲き誇っていて、
よくパーティ会場としても使われている由緒正しい場所だ。
……こんな場所で、わざわざ三人きり。
目的は、きっと一つだ。
“うゆくん”である。
婚約破棄はしないと言われた、あの時こそ訳わからず少し悩んでしまった。
けれど、今になって冷静に考えてみれば私との婚約が切れれば、うゆくんに近づく口実がなくなる。
つまり防波堤の次は仲人ということだ。
しかし、尊い推しの前では私の感情など誤差の範囲内である。
「あ、このお菓子…
僕が初めて鈴乃に会った日に一緒に食べたものですね」
「そうだったわね。
あの時のうゆくんも緊張していたのによく覚えていたわね」
私は推しとの思い出なら一字一句覚えている。
けれど、うゆくんが覚えていてくれたことが、何より嬉しかった。
そして、にっこり笑顔のうゆくん可愛い。
反対に白水は一瞬ピクッと反応したように思えた。
「随分と姉弟仲がいいのだな。
それに、鈴乃は有栖くんのことをうゆくんと呼ぶのだな」
「な、仲が良いだなんて……そんな……」
かすかに視線を逸らし、咳払いをひとつ。
「ええ、そう呼んでいますわ」
(あああああ有栖くん呼びですか!?)
原作では呼び捨てだったのに……この距離感……!
まだ序盤だからよね?
今日、進展あるわよね!?
「俺のことも……」
「宝来様、本日は僕のこともお茶会に呼んでくれてありがとうございます」
「……あぁ、問題ない。
ちょうど君とも話してみたいと思っていたんだ」
(!?)
白水が何か言いかけた、その瞬間——
それを遮るように、うゆくんは柔らかく微笑んで礼を述べた。
二人は、にこやかなまま視線を交わしていた。
お邪魔虫な自分に気がついた私は早々に席を外すことにした。
「申し訳ありませんが、少し席を外させていただきますわ」
そう言い残し、二人の間に流れる空気に私はそっと身を引いた。
。.ꕤ……………………………………………..ꕤ.。
さっきまでの笑顔が嘘のように消え、
二人は同時に無表情へと変わった。
静かな緊張が、その場に張りつく。
それを最初に破ったのは——白水のほうだった。
「お前、本当はああいう性格じゃないだろ」
「姉弟だろうとお前たちは赤の他人だ。
俺の婚約者を呼び捨てにするのは、やめてもらえるか」
「婚約者なのに随分と余裕がないんですね。
僕は鈴乃から、ちゃんと許可をもらっていますので」
(まあ、二人きりの時とは言ったけども…)
結真は足を組み替え、ゆっくりとティーカップを口元へ運ぶ。
その視線は、笑っているのにひどく冷たかった。
その仕草は、まるで挑発のようだった。
白水もまた、射抜くような視線で結真を見据える。
空気が、ひやりと凍りついた。
「今は、婚約者“なだけ”ですよね?
この先どうなるかなんて、誰にも分からない」
「どういう意味だ」
「そのままの意味です」
「婚約者という立場を盾に、あまりしつこくなさらない方がいいですよ。
僕の姉は優しいので、断れないだけですから」
「それに……
僕との時間が削られるのは、正直迷惑なんですよね」
「随分と器用なもんだな。
鈴乃の前で愛らしく振る舞っている“あれ”は……仮面か?」
その可愛らしい顔のまま、
目だけがまったく笑っていなかった。
結真は、ゆるく口角を上げる。
「……本当に、あなたは邪魔なんです。
あなたさえいなければ、すべて上手くいくのに」
「やはりそれがお前の“本性”か」
白水はゆっくりと立ち上がり、
結真の顎に指先をかけた。
そして、逃げ場を奪うように——ぐい、と持ち上げた。
その距離は、息が触れるほど近い。
どちらも、視線を逸らさない。
「……言ってくれるな」
両者とも一歩も引かない。
静寂の中、火花だけが散っているようだった。
——なお。
この緊迫した空気をよそに、
草木の陰から息を潜めて見守っている変態が一名。
……言うまでもなく、私である。
先ほど席を外した際、ちゃっかり遠回りをし、
二人の“親睦”が最もよく見える特等席へと移動済みだ。
——そして私は、この無言の意味を……
この場に満ちる薔薇の香りに紛れた“別の匂い”の正体をまだ知らなかった。
。.ꕤ 続くꕤ.。
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隣には麗しのうゆくん。
そして、私。
なんだか、原作通りの三角関係みたいな構図だ。
……ここに私さえいなければ、完璧なのに。
ぐぬぬ。
おしゃれなガゼボの中に飾られたテーブルの上には、高級な香りの紅茶とRaB itsのお菓子が優雅に彩られている。
色々込みで、正直来てよかったと言わざるを得ない。
白水は原作でも、格好良く、優雅で、常にスマートに決めるクールで誠実(?)な男だった。
とにかく女性人気が凄まじい。
その白水が主催した今回のお茶会の会場は——宝来邸の華々しい庭園。
美しく珍しい薔薇が咲き誇っていて、
よくパーティ会場としても使われている由緒正しい場所だ。
……こんな場所で、わざわざ三人きり。
目的は、きっと一つだ。
“うゆくん”である。
婚約破棄はしないと言われた、あの時こそ訳わからず少し悩んでしまった。
けれど、今になって冷静に考えてみれば私との婚約が切れれば、うゆくんに近づく口実がなくなる。
つまり防波堤の次は仲人ということだ。
しかし、尊い推しの前では私の感情など誤差の範囲内である。
「あ、このお菓子…
僕が初めて鈴乃に会った日に一緒に食べたものですね」
「そうだったわね。
あの時のうゆくんも緊張していたのによく覚えていたわね」
私は推しとの思い出なら一字一句覚えている。
けれど、うゆくんが覚えていてくれたことが、何より嬉しかった。
そして、にっこり笑顔のうゆくん可愛い。
反対に白水は一瞬ピクッと反応したように思えた。
「随分と姉弟仲がいいのだな。
それに、鈴乃は有栖くんのことをうゆくんと呼ぶのだな」
「な、仲が良いだなんて……そんな……」
かすかに視線を逸らし、咳払いをひとつ。
「ええ、そう呼んでいますわ」
(あああああ有栖くん呼びですか!?)
原作では呼び捨てだったのに……この距離感……!
まだ序盤だからよね?
今日、進展あるわよね!?
「俺のことも……」
「宝来様、本日は僕のこともお茶会に呼んでくれてありがとうございます」
「……あぁ、問題ない。
ちょうど君とも話してみたいと思っていたんだ」
(!?)
白水が何か言いかけた、その瞬間——
それを遮るように、うゆくんは柔らかく微笑んで礼を述べた。
二人は、にこやかなまま視線を交わしていた。
お邪魔虫な自分に気がついた私は早々に席を外すことにした。
「申し訳ありませんが、少し席を外させていただきますわ」
そう言い残し、二人の間に流れる空気に私はそっと身を引いた。
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二人は同時に無表情へと変わった。
静かな緊張が、その場に張りつく。
それを最初に破ったのは——白水のほうだった。
「お前、本当はああいう性格じゃないだろ」
「姉弟だろうとお前たちは赤の他人だ。
俺の婚約者を呼び捨てにするのは、やめてもらえるか」
「婚約者なのに随分と余裕がないんですね。
僕は鈴乃から、ちゃんと許可をもらっていますので」
(まあ、二人きりの時とは言ったけども…)
結真は足を組み替え、ゆっくりとティーカップを口元へ運ぶ。
その視線は、笑っているのにひどく冷たかった。
その仕草は、まるで挑発のようだった。
白水もまた、射抜くような視線で結真を見据える。
空気が、ひやりと凍りついた。
「今は、婚約者“なだけ”ですよね?
この先どうなるかなんて、誰にも分からない」
「どういう意味だ」
「そのままの意味です」
「婚約者という立場を盾に、あまりしつこくなさらない方がいいですよ。
僕の姉は優しいので、断れないだけですから」
「それに……
僕との時間が削られるのは、正直迷惑なんですよね」
「随分と器用なもんだな。
鈴乃の前で愛らしく振る舞っている“あれ”は……仮面か?」
その可愛らしい顔のまま、
目だけがまったく笑っていなかった。
結真は、ゆるく口角を上げる。
「……本当に、あなたは邪魔なんです。
あなたさえいなければ、すべて上手くいくのに」
「やはりそれがお前の“本性”か」
白水はゆっくりと立ち上がり、
結真の顎に指先をかけた。
そして、逃げ場を奪うように——ぐい、と持ち上げた。
その距離は、息が触れるほど近い。
どちらも、視線を逸らさない。
「……言ってくれるな」
両者とも一歩も引かない。
静寂の中、火花だけが散っているようだった。
——なお。
この緊迫した空気をよそに、
草木の陰から息を潜めて見守っている変態が一名。
……言うまでもなく、私である。
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二人の“親睦”が最もよく見える特等席へと移動済みだ。
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