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「昨日は伊央がせっかく止めてくれたのに…ごめんなさい
こんなにいろんなもの失って、痛い目見たのに痛い目見たのに、
いざ連絡が来たらもう周り見えなくなっちゃってた。」
「…そっか」
「…でもね、もう一回会って、やっと目が覚めた
もう二度と会わない。」
もちろん、馴れ初めとか、会話とか、そんな細かいところは話していない
私自身もあんまり思い出したくないしね
それでも、話せるところは全て話した
伊央は何も言わずに聞いてくれた
たぶん、驚いたことだろう
伊央が知ってる、高校時代の私とはだいぶ違う
自分らしく生きてたあの頃とは
「結希は、何が一番辛かった?」
「一番?」
「うん、…不倫だったこと?」
「んー、私もそうだと思ってたんだけど、
やっぱり大好きな仕事を失ったことかな」
やっと訓練を終えてフライトできるようになって
ほんとに、ここからだったのに
でも正直、あんなに尽くしたつもりで、仕事が一番だって思ってる自分には驚きけど
「そっか…」
伊央は、ずっと落ち着いているけど、何を思っているのだろう
「…どう?最低でしょ、私」
あれから教官と早川さんがどうなったのかは知らないけど、
いずれにしても私はひとつの大切な家族を壊した
その罪は重い
「まぁ、俺に一般論を求めるのは無駄だよね」
「…どういう意味?」
「俺は結希の味方しかしないからね
結希を裏切ったそいつはくそだと思うし、教官も結婚してるなら言っとけよって思う
何でそんなことで結希が仕事辞めないといけないの、訳わかんない」
そこまで言い切って、手元のグラスに入ったお酒を一気に飲み干す
「…ぷっ」
「何笑ってんの」
「だって、なにそれ笑
意見偏りすぎだし笑」
真面目な顔で淡々と言うもんだから、おかしくなってしまった
「だから、一般論は知らないって言ってんの」
「ははは、伊央ちょっと酔ってない?」
「うるさい酔ってないよ」
そういうと、いじけたようにそっぽを向いて、でももう一度こちらを見る
「でも覚えといてね、そんなことで結希のこと引いたりしないし、
俺はいつでも味方だから」
"味方"
ありきたりなようにも感じるこの言葉が
今の私の心にすごく響いた
それは私が弱ってるからなのか
伊央が言ったからなのか
「偏った意見が欲しかったらいつでも言って」
「ははっ、ありがとう笑」
一見、無表情で何考えてるのか分からないけど
いつもこうやって、笑顔にしてくれる
「とにかく伊央には感謝してもしきれないので、何かして欲しいことあったらいつでも言って!!」
伊央がくれた幸せを
少しずつでも、返していきたい
「…じゃあ今1個いい?」
「なに!!」
「明日休みって言ったじゃん
俺行きたいとこあるんだけど、一緒に来て」
「?…うん!全然いいよ、どこ行くの?」
「うーん、内緒」
いたずらっぽい笑顔でこちらを見る
伊央がいつも通りで、実は結構安心した
話したら幻滅されるかもって思ってたから
「伊央やっぱ酔ってるでしょ!」
伊央って酔ったらちょっと雰囲気柔らかくなるんだな
あの頃には知りえなかったことだ
「…ねむい」
「えーまだ11時なんですけど笑
いまどき小学生でも起きてるよ!」
「そうだね、結希が起きてるもんね」
「う、ん?それはどういうことかな」
「っはは、まぁ飲みなって」
「ねぇ伊央くんごまかさないで」
伊央はナチュラルにお酒を継ぎ足しながら笑う
悪口言われた気がしたけど、伊央が楽しそうならいいか
なんて、私も伊央にはだいぶ甘い
「会社で飲み会とかないの?」
「…たまにあるよ、ほとんど行かないし行ってもあんまり飲まないけど」
「うわぁ、そういうとこは伊央っぽいなぁ」
「…」
私の言葉に、伊央は少し笑って
そのあと突然、目の前が暗くなった
伊央に、キスをされた
たった数秒だったはず
だけど、すごく長く感じた
「…え」
伊央に視線が引き寄せられて、目が離せない
さっきまでほんの目の前にあったその整った顔
「結希は、やっぱそっちの方がいいよ」
「え?…」
「楽な服着て、すっぴんでビール飲んでる方が、結希らしくて可愛い」
「…伊央、」
「…スー」
「寝た!うそ!」
後ろのソファーに寄りかかって、気持ちよさそうに寝息をたてる
そこでやっと息をつけた私は、一気に心臓がバクバクしだす
待って、え?
私いまキスされた?
えええええええええええええ?!?!?!?!
全部話せてうちとけて、早速ですが
ルームメイトと波乱の予感です
こんなにいろんなもの失って、痛い目見たのに痛い目見たのに、
いざ連絡が来たらもう周り見えなくなっちゃってた。」
「…そっか」
「…でもね、もう一回会って、やっと目が覚めた
もう二度と会わない。」
もちろん、馴れ初めとか、会話とか、そんな細かいところは話していない
私自身もあんまり思い出したくないしね
それでも、話せるところは全て話した
伊央は何も言わずに聞いてくれた
たぶん、驚いたことだろう
伊央が知ってる、高校時代の私とはだいぶ違う
自分らしく生きてたあの頃とは
「結希は、何が一番辛かった?」
「一番?」
「うん、…不倫だったこと?」
「んー、私もそうだと思ってたんだけど、
やっぱり大好きな仕事を失ったことかな」
やっと訓練を終えてフライトできるようになって
ほんとに、ここからだったのに
でも正直、あんなに尽くしたつもりで、仕事が一番だって思ってる自分には驚きけど
「そっか…」
伊央は、ずっと落ち着いているけど、何を思っているのだろう
「…どう?最低でしょ、私」
あれから教官と早川さんがどうなったのかは知らないけど、
いずれにしても私はひとつの大切な家族を壊した
その罪は重い
「まぁ、俺に一般論を求めるのは無駄だよね」
「…どういう意味?」
「俺は結希の味方しかしないからね
結希を裏切ったそいつはくそだと思うし、教官も結婚してるなら言っとけよって思う
何でそんなことで結希が仕事辞めないといけないの、訳わかんない」
そこまで言い切って、手元のグラスに入ったお酒を一気に飲み干す
「…ぷっ」
「何笑ってんの」
「だって、なにそれ笑
意見偏りすぎだし笑」
真面目な顔で淡々と言うもんだから、おかしくなってしまった
「だから、一般論は知らないって言ってんの」
「ははは、伊央ちょっと酔ってない?」
「うるさい酔ってないよ」
そういうと、いじけたようにそっぽを向いて、でももう一度こちらを見る
「でも覚えといてね、そんなことで結希のこと引いたりしないし、
俺はいつでも味方だから」
"味方"
ありきたりなようにも感じるこの言葉が
今の私の心にすごく響いた
それは私が弱ってるからなのか
伊央が言ったからなのか
「偏った意見が欲しかったらいつでも言って」
「ははっ、ありがとう笑」
一見、無表情で何考えてるのか分からないけど
いつもこうやって、笑顔にしてくれる
「とにかく伊央には感謝してもしきれないので、何かして欲しいことあったらいつでも言って!!」
伊央がくれた幸せを
少しずつでも、返していきたい
「…じゃあ今1個いい?」
「なに!!」
「明日休みって言ったじゃん
俺行きたいとこあるんだけど、一緒に来て」
「?…うん!全然いいよ、どこ行くの?」
「うーん、内緒」
いたずらっぽい笑顔でこちらを見る
伊央がいつも通りで、実は結構安心した
話したら幻滅されるかもって思ってたから
「伊央やっぱ酔ってるでしょ!」
伊央って酔ったらちょっと雰囲気柔らかくなるんだな
あの頃には知りえなかったことだ
「…ねむい」
「えーまだ11時なんですけど笑
いまどき小学生でも起きてるよ!」
「そうだね、結希が起きてるもんね」
「う、ん?それはどういうことかな」
「っはは、まぁ飲みなって」
「ねぇ伊央くんごまかさないで」
伊央はナチュラルにお酒を継ぎ足しながら笑う
悪口言われた気がしたけど、伊央が楽しそうならいいか
なんて、私も伊央にはだいぶ甘い
「会社で飲み会とかないの?」
「…たまにあるよ、ほとんど行かないし行ってもあんまり飲まないけど」
「うわぁ、そういうとこは伊央っぽいなぁ」
「…」
私の言葉に、伊央は少し笑って
そのあと突然、目の前が暗くなった
伊央に、キスをされた
たった数秒だったはず
だけど、すごく長く感じた
「…え」
伊央に視線が引き寄せられて、目が離せない
さっきまでほんの目の前にあったその整った顔
「結希は、やっぱそっちの方がいいよ」
「え?…」
「楽な服着て、すっぴんでビール飲んでる方が、結希らしくて可愛い」
「…伊央、」
「…スー」
「寝た!うそ!」
後ろのソファーに寄りかかって、気持ちよさそうに寝息をたてる
そこでやっと息をつけた私は、一気に心臓がバクバクしだす
待って、え?
私いまキスされた?
えええええええええええええ?!?!?!?!
全部話せてうちとけて、早速ですが
ルームメイトと波乱の予感です
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